2020 Fiscal Year Annual Research Report
動物モデルを用いたエンテロウイルスD68による弛緩性麻痺発現機序の解明
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19H03626
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
永田 典代 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (30270648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 順裕 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (00392316)
清水 博之 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 室長 (90270644)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エンテロウイルスD68 / 動物モデル / 急性弛緩性麻痺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではEV-D68の神経病原性の解明を最終目標として、最近国内で分離されたEV-D68株を用いてEV-D68感染動物モデル(小動物および非ヒト霊長類)を確立し、EV-D68急性重症呼吸器感染症と神経病原性に関与するウイルス側因子と宿主側因子を明らかにする。まず、臨床分離株を用いてヒト由来細胞であるH1HeLa細胞馴化株を得た。そして、この細胞馴化株を脳内接種後に瀕死となったマウス脳脊髄を採取し、乳剤を作製、上清をH1HeLa細胞に接種したところ、ウイルスを分離することが出来た(マウス馴化株)。このウイルスの塩基配列について次世代シークエンス法による解析を行ったところ、細胞馴化株と比較してウイルス殻タンパクに3カ所のアミノ酸置換を伴う変異がみられた。 これら二つの株を用いて新生仔マウスと若齢マウスに対する神経毒力を確認した。その結果、いずれも若齢マウスに対し脊髄内接種後に弛緩性麻痺を引き起こすことが明らかとなった。また、マウス馴化株は新生仔マウスに対し比較的強毒であったが若齢マウス脊髄内接種では比較的弱毒であることが判明した。経鼻接種後はいずれの群においても明らかな臨床症状を示さなかった。さらに、この二つの株のサル由来細胞LLCMK2細胞における増殖性を確認したところ、H1HeLa細胞馴化株の方が増殖性が高いことがわかった。今後、この株と実験室株を用いてサルを用いた神経毒力試験を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EV-D68に対する治療・予防法に関するマウスを用いた評価系モデルはほぼ構築できた。一方で、神経病原性を評価するためのサル感染実験については計画準備が整ったところでCOVID-19対応を開始したため実施が不可能な状況が続いている。
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Strategy for Future Research Activity |
予定どおり、実験動物を用いた神経病原性の検証と感染モデルの確立をすすめる。国内で分離されたEV-D68のうち、新生仔マウスの脊髄の神経細胞に親和性を示し、弛緩性麻痺を引き起こす株を用いて、サルの感染実験を実施する予定である。 一方で、EV-D68の呼吸器感染モデルの作製も視野に入れている。
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