2021 Fiscal Year Annual Research Report
動物モデルを用いたエンテロウイルスD68による弛緩性麻痺発現機序の解明
Project/Area Number |
19H03626
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
永田 典代 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (30270648)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 順裕 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (00392316)
清水 博之 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (90270644)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | エンテロウイルスD68 / 動物モデル / 急性弛緩性麻痺 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も引きつづき、エンテロウイルスD68 の神経病原性を明らかにするため、感染マウスの病理学的解析と動物モデルの確立を試みた。新生仔マウスの脳内接種法によって分離されたエンテロウイルスD68を37℃培養条件にてヒト由来の培養細胞(H1HeLa 細胞)で十回継代し感染価の高いウイルスストックを作製した。継代後も新生仔マウスに対する感染性と病原性は維持されていたので、これを5週齢のddY マウスの腰髄内に接種したところ、接種3日から7日目までに弛緩性麻痺を発症した。腰髄部位の脊髄内にウイルスを接種した個体はいずれも後肢から始まる弛緩性麻痺を発症した。免疫組織化学法により脊髄前角の大型の神経細胞にウイルス抗原が検出され、麻痺発症時には、髄膜炎、急性灰白髄炎が観察され、病変部位には好中球やミクログリアの集簇を伴う変性した神経細胞が観察された。また、残存した変性細胞はウイルス抗原が陽性であった。なお、新生仔マウスにこの分離株を脳内接種すると前肢から始まる弛緩性麻痺を発症し、同様の病理像を示したことから、ウイルス接種部位付近の神経細胞から感染・炎症が波及したものと考えられた。よって、ポリオウイルスやエンテロウイルスA71感染モデルと同様、エンテロウイルスD68はマウスの大型の錐体細胞(神経細胞)に強い親和性を示し、感染後の炎症反応により機能傷害(弛緩性麻痺や運動失調)が引き起こされたと考えられた。また、EV-D68の呼吸器感染モデルの構築のため感受性試験を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EV-D68感染マウスの病理学的解析と治療・予防法に関する評価系はほぼ構築できた。一方で、神経病原性を評価するためのサル感染実験についてはCOVID-19対応のため実施が遅延した。
|
Strategy for Future Research Activity |
予定どおり、実験動物を用いた神経病原性の検証と感染モデルの確立をすすめる。国内で分離されたEV-D68のうち、新生仔マウスの脊髄の神経細胞に親和性を示し、弛緩性麻痺を引き起こす株を用いて、サルの感染実験を進める。
|
Research Products
(2 results)