2019 Fiscal Year Annual Research Report
Terminator B cells for IBD therapy
Project/Area Number |
19H03645
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
溝口 充志 久留米大学, 医学部, 教授 (50258472)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | Preg細胞 / ナチュラルキラーB細胞 / 炎症性腸疾患 / 炎症終息 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、炎症性腸疾患 (IBD)において未解明であった炎症の終息、すなわち「ターミネーション」の機序を解明することを目的とする。潰瘍性大腸炎(UC)においては抗原特異的にIL-10を産生する制御性形質芽細胞(Preg)が、クローン病(CD)ではナチュラルキラー様B細胞(NKLB)がT細胞不活化のためのサイトカインサージを誘導して炎症の終息に寄与しているという仮説を証明するために実験が計画されている。 UCに対する仮説を検証するため、初年度は計画通りSignal transducer and activator of transcription (STAT)3がPreg細胞分化に対して抑制的に作用している可能性を検討した。仮説では、STAT3を欠失させたマウスではPreg細胞の増加が予想されたが、予想とは異なりSTAT3を欠失したB細胞のPreg細胞への分化は、正常マウスに比較して変化は認められなかった。よって、Preg細胞分化機序にSTAT3は関与していないと考えられた。一方、免疫グロブリンのクラススイッチを消失させるとPreg細胞の減少が認められ、抗原特異的な活性化がPreg細胞の分化促進に寄与している可能性が示唆された。CDに対する仮説を検証するため、IL-12を産生するナチュラルキラー様B(NKLB)細胞が病的Th1細胞に対して異所性の免疫抑制サイトカインIL-10産生を誘導する可能性を、回復期腸炎マウスを用いて検討した。当初の仮説通り、機能的NKLB細胞の欠失下ではTh1細胞にIL-10産生が認められなかった。 初年度に得られた結果は、UCにおいてPreg細胞の分化は抗原特異的な活性化により促進されるが、過去の報告とは異なりSTAT3は関与していない事を示唆する。また、CDにおいてNKB細胞は病的T細胞に異所性の免疫抑制サイトカイン産生を誘導する可能性を示唆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B細胞特異的にSTAT3が欠失しIL-10産生時に緑色蛍光(GFP)を発色する腸炎(T細胞受容体α欠失)マウスモデルを用いて、腸炎下におけるGFP陽性Preg細胞の総数と割合を脾臓とリンパ節において検討した。しかし、STAT3が欠失していないGFP/T細胞受容体α欠失マウスと優位差は認められなかった。また、生後6ヶ月で腸炎の解析を行ったが、腸炎の重症度も両マウス間に有意差は認めなかった。腸炎の影響を除外するため、IL-10/GFPマウスとB細胞特異的にSTAT3が欠失したIL-10/GFPマウスの比較も行ったが、腸炎マウス同様に有意差は認めなかった。抗原暴露によりB細胞は活性化され胚中心でのクラススイッチが誘導されるため、クラススイッチに必要なactivation-induced deaminase (AID)を欠失したGFP/T細胞受容体α欠失マウスを用いてPreg細胞の解析を行った。コントロール群に比べて、AID欠失マウスではPreg細胞の統計学的に優位な減少を腸管膜リンパ節で認めた。この結果は抗原特異的な活性化がPreg細胞分化を促進している可能性を示唆した。CDモデルにおいては、IL-12p35を欠失したマウスにDSS投与により急性腸炎を誘導し、その後投与中止により回復期を誘導して大腸より抽出した細胞を解析した。コントロール群ではin vitro刺激後CD4陽性T細胞にIFN-γとIL-10の共発現が認められたが、IL-12欠失マウス由来のCD4陽性T細胞ではIL-10産生は検出できなかった。これらの結果は、IL-12が回復期T細胞に異所性のIL-10産生を誘導している可能性を示唆した。 初年度の実験はほぼ計画通りに進行した。しかし、COVID-19の流行に伴う対応で動物センターよりマウス削減の要請があり、飼育中のマウスの約25%の削減を3月に行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回のCOVID-19の流行に伴いマウスコロニーを約25%削減したため、非常事態宣言解除後から早急にマウスコロニーの回復に努めている。よって、当初予定された令和2年度の実験計画のうち、コロニーが回復したマウス群より順次実験を開始していく予定である。 UCに関する目的を達成するために、令和2年度は「Pregが腸炎の終息(ターミネーション)に関与している可能性」について細胞移入実験を用いて検証する。ドナー細胞としてWTマウス由来の「Preg細胞に分化できる」B細胞、B細胞特異的にBlimp-1を欠失させたマウス由来の「Preg細胞に分化できない」B細胞、そしてactivation-induced deaminase (AID)を欠失させたマウス由来の「Preg細胞の機能が低下している」B細胞を移入する。レシピエントは、潰瘍性大腸炎モデルのTCRα欠失マウスにPreg細胞を欠失させたTCRαダブルノックアウトマウスを用いる。 CDに関する目的を達成するために、初年度に「IL-12を産生するNKB細胞は、IFNを産生するTh1細胞に異所性のIL-10産生を誘導する」可能性を示唆する結果を得ている。令和2年度は、NKB細胞の腸炎終息に対する効果の検討を行うため、T細胞特異的にIL-10が欠失したマウスとB細胞欠失マウスを交配させて新たなレシピエントマウスの作成を行う。このマウスにIL-12が保持または欠失したB細胞を移入し腸炎を検討する。マウスの遺伝子スクリーニング、マウスコロニーの管理、および細胞抽出は申請者の指導の下に実験補助員が担当し、細胞の解析および腸炎の評価は申請者が担当する。
|
Research Products
(2 results)