2021 Fiscal Year Annual Research Report
Terminator B cells for IBD therapy
Project/Area Number |
19H03645
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
溝口 充志 久留米大学, 医学部, 教授 (50258472)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Preg細胞 / NKLB細胞 / ターミネーターB細胞 / 炎症終息 / 炎症性腸疾患(IBD) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、炎症性腸疾患(IBD)における炎症の終息(ターミネーション)という新たな概念に着目し、潰瘍性大腸炎(UC)ではIL-10を産生する制御性形質芽細胞(Preg)が、クローン病(CD)ではIL-12産生ナチュラルキラー様B細胞(NKLB)が炎症の終息に寄与しているという仮説の検討を目的として実験が遂行されている。IL-10およびp40を産生すると蛍光を発するリポーターマウス、さらに遺伝子操作によりPregが欠失、増加、減少するマウス群を用いてPregの分化機序、さらにはT細胞受容体(TCR)α欠失マウスのUC様陽炎に対する抑制効果をこれまで認めている。また、NKLBが急性腸炎からの慢性腸炎への移行を抑制して炎症の終息に寄与する可能性も見出してしている。令和3年度は、これらの結果を統計学的に裏付けると共に、NKLB細胞とPreg細胞の相互作用解明のため、単細胞RNAシークエンス法を活用し興味深い結果を得た。単細胞レベルの検討で、Pregはマージナルゾーンで分化する成熟型で、NKLBはリンパ濾胞形成を必要としない未成熟型であること、さらにPregの大部分はIL-12p35を共発現している事が同定された。よって、PregがIL-10に加えてp35とEbi3の2量体であるIL-35を共発現している可能性が考えられるが、興味深い事にp35を発現するPreg中の約10%にしかEbi3発現は認められなかった。また、p35がIL-12の構成に必要なp40の発現も僅かしか認められなかった。これらの結果は、Pregはp35のホモダイマーを発現する可能性、またはactivation-induced cell death(AICD)によりRNAと蛋白レベルが相関せず、NKLBがPregの前駆細胞である可能性も示唆する。よって、令和4年度は、これらの新たな可能性を検討する事を目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IL-10産生時に緑色蛍光を発しUC様腸炎を自然発症するTCRα欠失マウスに、B細胞特異的にBlimp-1を欠失させると(IL-10GFP/TCR/B-Blimpマウス)、Preg細胞が欠失し腸炎の悪化が認められる事を初年度(令和元年)の研究期間中に確認し、このマウスをレシピエントとして用いた細胞移入実験が令和3年度に計画されていた。令和2年の新型コロナウイルスのパンデミックにより一時的にマウスコロニーを削減せざるをえなくなり、その後はコロニーの回復に努めていた。しかし、IL-10GFP/TCR/B-Blimp マウスの繁殖は非常に不良で、原因として悪性リンパ腫を自然発症していることが令和3年度に判明した。B細胞特異的なBlimp-1の欠失を目的として、CD19creシステムを用いているため、CD19cre+/+や+/-などBlimp-1が完全欠失しないマウス群も作成して交配に用いたが、繁殖は不良で計画通りに細胞移入実験を行う事ができなかった。よって、令和3年度は、細胞移入実験からNKLB細胞とPreg細胞の相互作用の解明に主眼を変更し、IL-12p40産生時に黄色蛍光を発するTCRα欠失マウスを用いて腸炎発症時の脾臓と腸管膜リンパ節から抽出した細胞の単細胞RNAシークエンス解析を行った。その結果、概要に記したように、Preg細胞とNKLB細胞がサイトカイン産生後にAICDに陥る可能性、更にはNKLB細胞がUCに類似した炎症の環境下でPreg細胞へ更なる分化を遂げる可能性を見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで本研究で蓄積された結果、さらに令和3年度の単細胞RNAシークエンス解析の結果は、NKLB細胞とPreg細胞が同一の起源でありながら、炎症環境に応じてNKLB細胞からPreg細胞へと更に分化する潜在能を有し、これにより炎症環境に適した炎症のターミネーション機能を獲得し、その分化決定にはIBD感受性遺伝子の一つである転写因子STAT3が寄与する可能性を示唆する。この可能性が証明できれば、炎症のターミネーション機序の解明、さらにはIBD完治を目指す新たな治療戦略の開発に光明をもたらす可能性が期待されるため、令和4年度は、単細胞RNAシークエンス解析結果をもとに、NKLB細胞からPreg細胞への分化のターニングポイントの分子機構をコンピューター解析し、これまで蓄積された、STAT3欠失、B細胞の活性化に必要なAID、IL-4、STAT6の欠失、およびPreg細胞分化に必要なBlimp-1の欠失状態、さらには、UC様およびCD様の異なった炎症環境状態下でのBreg・Preg・NKLB細胞の割合、そして、これらB細胞サブセットが欠失した状態での腸炎の重症度等に関する結果を踏まえて包括的・総合的に解析する予定である。
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Research Products
(2 results)