2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel combination immunotherapy against lung cancer and mesothelioma: establishment of immunological basis for clinic
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19H03668
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
西岡 安彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (70274199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
軒原 浩 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (00505919)
佐藤 正大 徳島大学, 病院, 講師 (80530899)
三橋 惇志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任助教 (00833732)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肺がん / がん免疫療法 / 線維細胞 / 骨髄由来抑制細胞 / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺がん・中皮腫に対する免疫学的基盤に立脚した新規複合がん免疫療法の確立に向けて、3種類の免疫調節細胞、すなわち線維細胞(fibrocyte)、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)および樹状細胞(DC)に着目した研究を進めた。 (1)本年度は、卵白アルブミン(ovalbumin: OVA)特異的なTCRトランスジェニックマウスであるOT-Iマウスを用いて、OVA蛋白を添加した線維細胞がMHCクラスI依存性にCD8陽性T細胞を活性化する機能、すなわちクロスプレゼンテーション能を有することを確認した。またマウス皮下腫瘍組織から誘導した線維細胞の抗原提示能と抗PD-L1抗体による増強についても確認した。一方で、線維細胞は所属リンパ節への遊走能を示さなかった。同時に肺がん患者末梢血から誘導した線維細胞を用いた場合においても同様の機能を認めた。以上から線維細胞は担がん状態にあっても腫瘍局所でCD8陽性T細胞に対する抗原提示能を発揮することが示唆された。現在、腫瘍組織内における線維細胞の同定と機能解析を目指してシングセル解析を進めている。 (2)MDSCに着目した複合がん免疫療法研究:各種抗がん剤による肺がん細胞の免疫原性細胞死の誘導効果について、カルレチキュリン(CRT)発現を指標にスクリーニングを行った。その結果、5-FUに高いCRT誘導能が確認された。マウスモデルを用いた検討においては5-FUによる腫瘍内MDSC減少効果が確認された。これらの作用をペメトレキセド(pemetrexed: PEM)と比較検討した結果、5-FUにPEMより高い作用が認められた。 (3)DCに着目した複合がん免疫療法:マウスモデルを用いた検討からDCの腫瘍内投与は、抗PD-1/PD-L1抗体の抗腫瘍効果を増強した。 現在、CD80およびCD86のノックアウトマウスを用いて、DC腫瘍内投与における共刺激分子の役割を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、肺がん・中皮腫に対する免疫学的基盤に立脚した新規複合がん免疫療法の確立に向けて、3種類の免疫調節細胞、すなわち線維細胞(fibrocyte)、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)および樹状細胞(DC)に着目し、3方向から同時に研究を進める研究計画となっている。いずれかの研究計画が十分に進行しない場合においても、他の研究の推進により最終的に免疫学的基盤に立脚した新規複合がん免疫療法の確立に向けて確実な研究成果が期待できるからである。令和2年度は、線維細胞に着目した複合がん免疫療法研究において予定以上の進展があった。その理由として、in vitroの解析において、OVA特異的なTCRトランスジェニックマウスであるOT-Iマウスを用いて、OVA蛋白を添加した線維細胞がMHCクラスI依存性にCD8陽性T細胞を活性化する機能、すなわちクロスプレゼンテーション能を有することを確認するとともに、これまでの成果をJ Immunol 2021;206(6):1204-1214に発表できた点及び研究が進展した場合に予定したシングルセル解析に着手できた点の2点が上げられる。DCに着目した複合がん免疫療法研究における新規データが少なかったものの、総合的に研究は「おおむね順調に進展」していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の予定で3方向から研究を進める予定である。 (1)線維細胞に着目した複合がん免疫療法研究:シングルセル解析及びpseudo-time解析により、腫瘍内線維細胞クラスターの解析を進める。また、腫瘍内から直接線維細胞を分離し、これまでに報告のない生細胞としての線維細胞のフェノタイプを検討するとともに、マクロファージとの比較の下、機能解析を行う。In vitroにおいて確認した線維細胞上のCD86分子の重要性を、CD86遺伝子ノックアウトマウスから誘導した線維細胞を用いてin vivoで確認する。 (2)MDSCに着目した複合がん免疫療法研究:これまでの検討結果から、最も高い免疫活性化作用が期待できる抗がん剤は5-FUであった。そのため今後は5-FUの免疫賦活作用に焦点をあて、その腫瘍内MDSC減少作用のメカニズムを解明する。既に5-FU処理した腫瘍細胞からの様々な液性因子のマイクロアレイ解析を行っており、MDSCに関連した分子を同定している。これら分子の個々の作用について機能解析を進める。 (3)DCに着目した複合がん免疫療法:マウスモデルを用いた検討からDCの腫瘍内投与と抗PD-1/PD-L1抗体併用による複合がん免疫療法においてCTL活性の増強を確認する。今後はCD80およびCD86のノックアウトマウスを用いてDC腫瘍内投与における共刺激分子の役割を検討する。また、DCの腫瘍内投与と抗PD-1/PD-L1抗体併用による細胞傷害性T細胞誘導活性を検討する。
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Research Products
(17 results)