2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of molecular pathogenesis and development of novel therapeutic strategy of energy-sensing failure of AMPK in chronic kidney disease
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19H03672
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
蘇原 映誠 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (90510355)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エネルギー感受性 / AMPK / WNK / 慢性腎臓病 / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、我々は慢性腎臓病(CKD)においてエネルギー恒常性維持機構の中心であるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK) が尿毒素やアシドーシスによってエネルギー不全(AMPの上昇)を正しく感知できなくなること、これが臓器を超えて心臓や骨格筋でも惹起され、結果として全身臓器のエネルギー不全状態を惹起することを明らかにした。また、蛋白制限によってAMPKが活性化されることも見出し、このエネルギー恒常性破綻を標的にすれば、従来の蛋白制限食が不要、かつ、「腎臓」と「臓器連関」を同時に改善する画期的なCKDの包括的新規治療戦略を生み出せる。本研究では、CKDにおける腎臓を含めた全身臓器のAMPKを中心としたエネルギー恒常性維持機構の破綻の詳細を明らかにし、その共通した分子機序や治療標的を明らかにすることを目的としている。 我々はまず腎臓に着目し、AMP感受性を制御するAMPKのリン酸化部位を変異体を用いて明らかにし、その上流のキナーゼの同定、さらには、そのキナーゼのノックアウトマウスの解析をすすめている。実際のこのノックアウトマウスの慢性腎臓病モデルにおいては、腎機能や腎臓の線維化などが悪化することを確認している。 また、我々は慢性腎臓病における新しい炎症シグナルと塩分感受性高血圧の関係を明らかにした。With-no-lysine kinase(WNK)、SPAKキナーゼはリン酸化カスケードを形成し、腎臓遠位尿細管のNa-Cl共輸送体(NCC)の活性化を介して塩分出納を制御している。我々は炎症性サイトカインの一つであるTNFαがWNK1を活性化し、その結果亢進したSPAK-NCCシグナルが慢性腎臓病の塩分感受性高血圧発症に寄与していることを報告した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はまず腎臓に着目し、AMP感受性を制御するAMPKのリン酸化部位を変異体を用いて明らかにし、その上流のキナーゼの同定、さらには、そのキナーゼのノックアウトマウスの解析をすすめている。実際のこのマウスはAMP感受性が低下していた。さらにノックアウトマウスの慢性腎臓病モデルにおいては、腎機能や腎臓の線維化などが悪化することを確認し、AMPKのAMP感受性の生理的な制御機構の分子機序を明らかにしている。 また、我々は慢性腎臓病における新しい炎症シグナルと塩分感受性高血圧の関係を明らかにした。With-no-lysine kinase(WNK)、SPAKキナーゼはリン酸化カスケードを形成し、腎臓遠位尿細管のNa-Cl共輸送体(NCC)の活性化を介して塩分出納を正に制御している。今回、我々は3種類のマウスCKDモデル(アリストロキア酸腎症モデル、アデニン腎症モデル、5/6腎摘モデル)を作成しWNKシグナルを評価した。その結果アリストロキア酸腎症モデル、アデニン腎症モデルの腎臓においてWNK1-SPAK-NCCシグナルが亢進し、塩分感受性高血圧発症に寄与していることを発見した。さらにTNFαがWNK1の蛋白発現を制御する可能性が示唆された。事実、腎臓遠位尿細管上皮培養細胞にTNFαを負荷したところWNK1蛋白発現が増加した。さらに、TNFα阻害薬エタネルセプトがアリストロキア酸腎症モデルでWNK1-SPAK-NCCシグナルの亢進を抑制し、塩分感受性を是正することが明らかになった。以上より、TNFαはWNK1-SPAK-NCCシグナルを亢進させ、CKDの塩分感受性高血圧に関与し、WNKシグナルが腎臓内の炎症/免疫シグナルと塩分感受性をつないでいることを初めて報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
近位尿細管細胞や培養心筋細胞、培養骨格筋細胞などで各々、AMPに反応できなくなる尿毒素代謝物やアシドーシスなどのUremic conditionを我々は同定しており、この条件でAMPKを活性化したり、ATPを上昇させエネルギー状態を改善させたりする薬剤こそがCKDの包括的治療薬として理想的である。AMPK活性化を蛍光で検出するプロープ(Tsou P, et al. Cell Metab. 2011:改良版を受領済)、ATP上昇の蛍光検出プローブ(Tantama M, et al. Nat Commun. 2013)を用いて、Uremic conditionでもAMPKを活性化し、エネルギー状態を回復できる薬剤スクリーニングを行う。 また、特定のアミノ酸群の負荷によってAMPK活性が抑制されることを確認しており、現在、どのアミノ酸が主としてAMPK活性低下を助長するかを検討している。AMPK活性を抑制する機能的アミノ酸が同定できれば、当該アミノ酸の各臓器での取り込みを担うアミノ酸輸送体阻害によりCKDにおけるAMPK活性低下を改善する可能性を検討する。この研究は機序解明が不十分であった「なぜ蛋白質摂取がCKD悪化に寄与するか」のメカニズム解明にもつながる。さらに踏み込めば、動物性蛋白質と植物性蛋白質でのCKD進行速度の差異についても、アミノ酸の観点から解明できると同時に、創薬完成前にも特定のアミノ酸の摂取を抑制することで、蛋白摂取制限をせずともCKD進行抑制が期待できる食事療法を確立できる。 また、我々が明らかにしたAMP感受性メカニズムを失ったノックインマウスを作成し、エネルギー感受性不全モデルとしてCKDの病態を明らかにしていく。
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[Presentation] TNF αは腎臓での WNK1 分解を抑 制して塩分感受性を亢進させる2019
Author(s)
古荘泰佑, 蘇原映誠, 萬代新太郎, 菊池寛昭, 高橋直宏, 藤丸拓也, 橋本博子, 新井洋平, 安藤史顕, 銭谷慕子, 森崇寧, 須佐紘一郎, 磯部清志, 野村尚弘, 岡戸丈和, 頼建光, 内田信一
Organizer
第 62 回日本腎臓学会学術総会
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[Presentation] 腎生検にて NPHP-MCKD complex と診断された 成人症例の遺伝的背景2019
Author(s)
藤丸拓也, 蘇原映誠, 森崇寧, 萬代新太郎, 千賀宗子, 菊地寛昭, 安藤史顕, 森雄太郎, 野村 尚弘, 岡戸丈和, 頼 建光, 長田道夫, 内田信一
Organizer
第 62 回日本腎臓学会学術総会
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[Presentation] Tubular basement membrane duplication and cell interposition are distinctive histological findings in the adult patients genetically diagnosed with NPHP-RCs2019
Author(s)
Takuya Fujimaru, Takayasu Mori, Michio Nagata, Shintaro Mandai, Motoko Chiga, Hiroaki Kikuchi, Fumiaki Ando, Yutaro Mori, Koichiro Susa, Kiyoshi Isobe, Soichiro Iimori, Naohiro Nomura, Shotaro Naito, Tomokazu Okado, Tatemitsu Rai, Shinichi Uchida, Eisei Sohara
Organizer
ASN Kidney Week
Int'l Joint Research
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[Presentation] Renal TNF α activates WNK phosphorylation cascade and contributes to salt-sensitive hypertension in CKD2019
Author(s)
Furusho T, Mandai S, Kikuchi H, Takahashi N, Fujimaru T, Hashimoto H, Arai Y, Ando F, Mori T, Susa K, Isobe K, Nomura N, Okado T, Rai T, Yamamoto K, Uchida S, Sohara E
Organizer
ASN Kidney Week
Int'l Joint Research
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