2020 Fiscal Year Annual Research Report
胚中心B細胞とリンパ球再循環に注目した濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫病態の解明
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19H03684
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
千葉 滋 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60212049)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫 / 濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫 / TET2 / RHOA / シングルセル・シークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)を代表とする濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫(TFHL)は3つの悪性リンパ腫の総称で,高齢者に多発し予後不良である。TFHLの大多数でTET2遺伝子の機能喪失型変異が同定される。そしてその多くでは腫瘍組織で同定されるTET2変異と同一変異をもつクローン性造血細胞が検出されるため,TFHLの多くはTET2変異をもつ造血幹細胞に由来すると推察される(Leukemia, 2020;34:2592-2606)。またTHFLの50%-70%例では,特定のRHOA変異(G17V)がTET2変異と共存する。これまでに,造血幹細胞でTet2がノックアウトされ,かつT細胞でRHOA(G17V)を発現するマウスがAITLのモデル動物となり(Cancer Res, 2020;80:1875-84),リンパ腫組織で造成する濾胞中心B細胞様細胞(GCB-L)がリンパ腫発症に必須である(本研究課題昨年度報告)ことを示してきた。本年度は,1)本リンパ腫構成細胞のシングルセル・シークエンス解析により,GCB-LにおいてCD40発現が亢進しており,これと腫瘍性濾胞性ヘルパーT細胞に発現しているCD40-Lとの相互作用がTFHL発症に必須である可能性を見出した。一方,2)12名のAITL患者および5名の健常人末梢血のシングル・セル解析により,22のT/NK細胞,3つのB細胞,10の骨髄系細胞のクラスターを同定し,AITL患者においてB細胞およびナイーブT細胞クラスターが著減していることを見出した。さらに,患者12名中6名の末梢血では,RHOA (G17V)変異をもつ腫瘍細胞が同定された。これらの変異が同定された細胞のうち59個では片アレルのみで,657個では両アレルで同定された。これは,AITLの多段階発がんにおける新しいゲノム変化プロセスの発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,AITLを代表とするTFHL発症メカニズムの解明を目的として遂行されている。具体的には,(1)腫瘍組織中の胚中心B細胞様細胞(GCB-L細胞)の発症への関与の解明,および(2)患者末梢血中の腫瘍性・非腫瘍性リンパ球の特徴から見た病態理解を目的としている。このうち(1)については,1)クローン性造血幹細胞におけるTET2機能不全が胚中心B細胞様のB細胞(GCB-L細胞)の産生を促進し,2)GCB-L細胞がCD40を高発現して腫瘍性濾胞性ヘルパーT細胞と相互作用しながらTFHL発症に必須の役割を果たす可能性を見出した。一方(2)については,AITL患者および健常人末梢血のシングル・セル解析により,35のリンパ球および骨髄系細胞のクラスターを同定した。患者末梢血で同定されたRHOA (G17V)変異をもつ腫瘍細胞細胞は,変異が片アレルのみで同定されたものと両アレルで同定されたものが含まれていた。これは,AITLの多段階発がんにおける新しいゲノム変化プロセスの発見である。 本研究課題の前提となったTFHLモデルマウス作製についての研究成果は,Cancer Res誌(2020;80:1875-84)に発表した。また本課題と深く関連するreview論文” Advances in understanding of angioimmunoblastic T-cell lymphoma”をLeukemia誌(2020;34:2592-2606)に発表した。 本課題開始後に,モデルマウスの用いた解析ではGCB-L細胞がTFHL発症に関わる詳細な機序について,シングルセル・シークエンス解析を用いて明らかにした。一方,患者末梢血細胞のシングルセル・シークエンス解析により,AITLの多段階発がんにおける新たなゲノム変化プロセスを発見した。 以上から,概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
TFHLモデルマウスを用いた解析で,CD40L-CD40結合を阻害する抗体により腫瘍の治療効果を確かめることにより,2020年度までの研究を基盤として新たに設定した,”GCB-L細胞がCD40を高発現して,腫瘍性濾胞性ヘルパーT細胞と相互作用しながらTFHL発症に必須の役割を果たす”という仮説を検証する。一方,AITL患者由来腫瘍組織由来細胞についてもシングルセル・シークエンス解析を行い,RHOA(G17V)変異を片アレルのみに有する細胞と両アレルに有する細胞を同定する。これらの細胞の発現プロフィルを比較し,AITLにおいてRHOA(G17V)変異が対側アレルにも獲得することによって,AITL発症においてどのような発がんプロセスが進行しているかを明らかにする。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] VAV1 mutations contribute to development of T-cell neoplasms in mice.2020
Author(s)
Fukumoto K, Sakata-Yanagimoto M, Fujisawa M, Sakamoto T, Miyoshi H, Suehara Y, Nguyen TB, Suma S, Yanagimoto S, Shiraishi Y, Chiba K, Bouska A, Kataoka K, Ogawa S, Iqbal J, Ohshima K, Chiba S.
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Journal Title
Blood
Volume: 136
Pages: 2018-2032
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] RHOA mutation in follicular T-cell lymphoma: Clinicopathological analysis of 16 cases.2020
Author(s)
Miyoshi H, Sakata-Yanagimoto M, Shimono J, Yoshida N, Hattori K, Arakawa F, Yanagida E, Takeuchi M, Yamada K, Suzuki T, Moritsubo M, Furuta T, Chiba S, Ohshima K.
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Journal Title
Pathol Int
Volume: 70
Pages: 653-660
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The prognostic impact of FLT3-ITD, NPM1 and CEBPa in cytogenetically intermediate-risk AML after first relapse.2020
Author(s)
Kurosawa S, Yamaguchi H, Yamaguchi T, Fukunaga K, Yui S, Kanamori H, Usuki K, Uoshima N, Yanada M, Takeuchi J, Mizuno I, Kanda J, Okamura H, Yano S, Tashiro H, Shindo T, Chiba S, Tomiyama J, Inokuchi K, Fukuda T.
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Journal Title
Int J Hematol
Volume: 112
Pages: 200-209
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Distinctethnic, clinical, and genetic characteristics of der(1;7) in myelodysplastic syndromes.2020
Author(s)
RurikaOkuda, Yasuhito annya, Yotaro Ochi, Kazuhisa Chonabayashi, Maria Creignou, Hideki Makishima, June Takeda, Ayana Kon, Satoru Miyano, Hiroshi Handa, Shigeru Chiba, Kazuma Ohyashiki, Torsten Haferlach, Eva Lindberg, Seishi Ogawa
Organizer
第79回 日本癌学会学術総会
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