2020 Fiscal Year Annual Research Report
染色体分配因子によるエピゲノム制御機構の解明と新規白血病治療標的の同定
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19H03690
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
星居 孝之 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (20464042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 篤志 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10313024)
荒木 喜美 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (90211705)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒストンメチル化酵素 / 白血病 / 転写制御 / 細胞分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病の新たな治療標的として同定したH3K4メチル化酵素SETD1Aに着目し、新規SETD1A結合蛋白質の機能解析を実施した。前年度の実験結果からin vitroでの増殖抑制効果を認めたことから、白血病モデルマウスを用いたノックダウン解析を行い、生体内の急性骨髄性白血病細胞の増殖にも必須の分子であることを確認した。ヒト白血病細胞株にてノックダウンを行った後に遺伝子発現プロファイルを解析し、新規結合蛋白によって制御される遺伝子とSETD1A標的遺伝子との重複を確認した。さらに新規結合蛋白質の変異体発現ベクターを作製し、機能回復実験や免疫沈降実験を行った。両者の実験結果から、SETD1Aとの結合に必須なドメインが白血病細胞の増殖にも必須であることが証明され、新たな創薬標的となることが明らかとなった。新規蛋白に対するChIP-seq解析を行い、白血病細胞株における内在性蛋白の結合領域同定にも成功した。SETD1Aや各種ヒストン修飾のChIP-seq解析結果と組み合わせたところ、転写開始点におけるSETD1Aとの共局在に加えて、より広範囲なクロマチン領域に結合していることが明らかとなった。以上の結果から、新規結合蛋白が上流制御分子として機能する可能性が示唆された。またSETD1Aが必須とされるES細胞において、新規の蛋白間相互作用がどのような役割を持つかを解析した。新たな変異マウス個体の樹立を行い、今後生体内での機能解析が可能となる技術基盤を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子の発現解析や変異体を用いた機能解析については順調に進行していると言える。また内在性蛋白のChIP-seq解析からも良好なシグナルが得られるように実験技術の改善が進展し、今後予定している他の結合蛋白の解析にも有用なツールが確立出来た。一方で変異体発現細胞ではChIP-seq解析からシグナルが得られておらず、タグの付加などの対応が必要な状況である。これまでにも別の実験ではHAタグやV5タグで良好な結果が得られていることから、本研究で注目する新規SETD1A結合蛋白質についてもベクターを構築中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究から急性骨髄性白血病細胞におけるヒストンメチル化酵素蛋白の重要性を示すと同時に、蛋白の新規ドメイン上で制御される蛋白ー蛋白間相互作用の役割を明らかにすることが出来た。ヒストンメチル化酵素の役割と新規結合蛋白の既存の役割に共通する分子メカニズムとしてRNAを介した転写制御が示唆された。RNA-蛋白間の相互作用は転写後の修飾や相分離など、新しい生命現象でも注目されている。またRNA結合分子は急性骨髄性白血病細胞でも新たな創薬標的として注目が集まっている。今後は本研究で発見した複合体とRNAとの関係についても注目して、研究を進めていく予定である。また、本研究を通して白血病細胞以外にもES細胞を用いた解析などが進展した。新たな変異マウスの樹立にも目処が立っており、ヒストンメチル化酵素について今後のさらなる研究の進展が期待される。
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