2019 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms of MLL-rearranged leukemia
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19H03694
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
横山 明彦 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (10506710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 猛 東京大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (70306835)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 白血病 / 転写 / クロマチン / MLL / AEP / タンパク質相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体転座によってMLL遺伝子とパートナー遺伝子が融合し、MLLキメラ遺伝子が形成されることが予後不良の白血病を引き起こす。MLLの融合パートナーは多岐にわたり、これまでに100種類以上が報告されている。しかし、何故MLLキメラはかくも多様なパートナーと融合しながら、白血病という同じ結果を生み出すのか、明らかになっていない。本研究で我々は「多様なMLLキメラは全てAEPとSL1という転写マシナリーを介して転写を活性化することで白血病を引き起こす」という独自に立てた仮説を検証し、MLLキメラによる白血病発症メカニズムを統一的に理解することを目指す。 MLLキメラには様々な種類があり、それぞれのキメラ遺伝子が造血細胞を不死化し白血病を引き起こす上で、少しだけ異なる様式でAEP/SL1転写経路を活性化していると考えられる。多様なMLLキメラの作用機序を調べるために、我々はマウスの骨髄から採取した未分化な造血細胞をMLLキメラによって不死化させる実験系を構築し、それぞれのMLLキメラが不死化するために必要とする最小機能ドメインを同定する事を試みた。その結果、多様なMLLキメラはTRX2ドメインと呼ばれる進化上保存された構造を必要とするタイプと必要としないタイプに大別されることが明らかになった。MLLキメラの融合パートナー部分にはそれぞれ異なる共作用因子が結合する。その性質の違いがTRX2ドメイン要求性を規定していると考えられる。その分子メカニズムを明らかにするため、TRX2ドメインがクロマチン上で形成しているタンパク質複合体を分離精製し、質量分析にてその構成因子を同定する事を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの骨髄から未分化な造血細胞を採取し、これにMLLキメラを発現するレトロウイルスを感染させ、半固形培地中で培養する。通常このように培養した造血細胞は、最初は増殖能を持っておりコロニー形成能を示すが、数回継代すると分化してしまい、コロニーを作らなくなる。ところがMLLキメラを発現させてやることで延々と増殖するようになり、半年以上継代できるようになる。この事を我々は、MLLキメラが初代培養造血細胞を「不死化する」と表現する。この不死化能は白血病細胞が自己複製能を持っていることを表しており、MLLキメラによる白血病化の重要な性質を反映している。本研究計画で我々はこの手法を用いて、2019-2021年度にMLL-Af4、MLL-ELL、MLL-AF6、 MLL-PTD、及びMLL-AFXが「造血細胞を不死化する上で必要とする機能ドメイン」を明らかにすることを目指した。2019年度を終えてMLL-ELLとMLL-AF6について上記の目標を達成した。 我々は初年度までにMLLキメラがTRX2ドメインを必要とするタイプ(MLL-AF10キメラ, 2量体形成タイプなど)とTRX2ドメインを必要としないタイプ(MLL-AEPキメラ)に大別される事を見出してきた。我々はTRX2ドメインに結合する未知のタンパク質がMLLキメラによる白血病化に密接に関わっていると考え、2019-2020年度にわたり、MLL部分に含まれるTRX2ドメインに結合するタンパク質の同定を目指してきた。2019年度を終えて有望な相互作用因子を同定しており、現在その機能解析を進めている。 従って、初年度を終えて研究は順調に進捗し、設定した目標を達成したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にMLL-ELLとMLL-AF6について、最小機能ドメインを同定することができたため。今後はMLL-AF4, MLL-AFX, MLL-PTDの解析に取り組んで行く。また、これらの多様なMLLキメラが同じ転写メカニズムを介して造血細胞を不死化している事を示すために、Cripsr/Cas9を用いた遺伝子ノックアウトの実験系を構築し、それぞれのMLLキメラで不死化した細胞がどのような遺伝子に依存して生存しているかを解析する。また、TRX2ドメイン結合タンパク質についても、上述のCripsr/Cas9実験系を用いて機能解析を進める。そのための実験系の構築はできているので問題なく進めることができるはずだ。 次年度からは多様なMLLキメラがAEPをリクルートすることを示すChIP-seq解析にも取り組む。ChIP-seq解析とは、特定のタンパク質と結合するDNAを分離精製し、そのDNA配列を次世代シーケンサー技術で網羅的に解読する事で、特定のタンパク質がゲノム上のどの場所にどの程度結合しているのかを明らかにする解析法だ。我々はこれまでに様々なMLLキメラで不死化した細胞株を構築し、ChIP実験の条件検討を行なってきた。いくつかのタンパク質についてはChIP実験で機能する抗体を得ており、本実験を始める準備が出来つつある。今後、可能な限り多くの関連タンパク質についてChIP-seq解析を行い、不死化した細胞のゲノム上でどのようなタンパク質が相互作用しているのかを可視化していく。その結果、本研究計画の目標であるMLLキメラによる白血病化の分子メカニズムの統一的理解に近づく事を目指す。
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[Journal Article] Vitamin D receptor controls cell stemness in acute myeloid leukemia and in normal bone marrow2020
Author(s)
Paubelle E, Zylbersztejn F, Maciel TT, Carvalho C, Mupo A, Cheok M, Lieben L, Sujobert P, Decroocq J, Yokoyama A, Asnafi V, Macintyre E, Tamburini J, Bardet V, Castaigne S, Preudhomme C, Dombret H, Carmeliet G, Bouscary D, Ginzburg YZ, de The H, Benhamou M, Monteiro RC, Vassiliou GS, Hermine O, Moura IC
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 30(3)
Pages: 739-754
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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