2020 Fiscal Year Annual Research Report
分泌蛋白を含む癌微小環境と補体因子による膵胆道癌進展機構の解明と測定系の開発
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19H03725
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高野 重紹 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (20436380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 望 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70436385)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
鈴木 大亮 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90422229)
賀川 真吾 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90507302)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵胆道癌 / 補体因子 / バイオマーカー / 癌進展機序 |
Outline of Annual Research Achievements |
i) 新規膵癌biomarker、C4BPAの特異的ELISA測定系樹立による膵癌血清診断能の向上。我々は以前、膵癌血清中のprotein profilingの網羅的解析より、膵癌血清蛋白としてC4BPAを同定した。既存のELISAによるC4BPA値ではdiagnostic windowが狭いため、Hybrid AAL lectin ELISAを構築することで、膵癌血清マーカーとしての向上を目指した。 ii) C4BPAとCD40発現やがん免疫担当細胞発現との局在と臨床病理学的関連の検討。Complement systemの因子C4BPAは、Dendritic cellやB cellの細胞膜上のCD40に結合する。さらにCD40はtumor suppressiveに働くT cellの活性化を促し抗腫瘍効果を示す。このC4BPAとCD40との関連に着目し、発癌早期から腫瘍細胞に対するhost immune responseとして、癌周囲にC4BPAが集積し、CD40 activationに傾くという現象を想起した。膵癌組織の蛍光免染で、C4BPAはCD40とco-localizationし、C4BPA発現はCD8陽性T細胞数と正の相関を認めた。FACSではC4BPA刺激によるT細胞分化を、さらにin vivo実験により、膵癌周囲環境における腫瘍障害性T細胞集積に及ぼす影響について調べる。 iii) 3次元細胞共培養上清のSILAC-click chemistryを用いた網羅的分泌蛋白解析による膵癌細胞株を用いた候補分泌蛋白をStable Isotopic Labeling by Amino Acids in Cell Culture (SILAC)を行い同定した。本年度は同定されたComplement factor B(CFB)についてのin vitroでの機能解析を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
i) 新規膵癌biomarkerとしてのC4BPA測定系の樹立。肝胆膵領域の代表的な腫瘍マーカーであるCA19-9やAFP-L3はフコシル化蛋白をターゲットにした測定系である。現在までに、Hybrid LCA lectin ELISA測定系の構築を行い、溶血、乳糜による干渉実験でも安定した測定値を認めた。さらに、術前・術後膵癌患者血清におけるfucosylated C4BPA値は有意に術後低下し、健常人、膵炎、膵癌患者の比較では膵癌患者で有意に高値を示した。 ii) C4BPAとCD40発現やがん免疫担当細胞発現との局在および臨床病理学的関連の検討。C4BPAとCD40は癌周囲に共発現を認め、膵癌間質C4BPA発現が高発現の群では有意に予後良好であった。さらに、C4BPA高発現かつCD40高発現群では4群間で有意に予後の良い患者群であることがわかった。これらのことから、膵癌でのC4BPA-CD40 axisは膵癌免疫環境で癌進展抑制的に働く可能性が示唆された。 iii) SILAC-click chemistryを用いた膵癌細胞での網羅的分泌蛋白解析。SILAC-click chemistryを用いた網羅的解析により同定されたCFBについて、膵癌組織間質内のCFB発現の多寡で分けると、高発現群は予後不良であり、血行性転移再発が有意に多いことが示された。さらに、膵癌細胞内のCFB発現をsiRNAにより抑制すると、著しい細胞増殖能の低下を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
i) 今後、樹立されたHybrid LCA lectin ELISA測定系での膵癌血清中のfucosylated C4BPA値と臨床病理学的因子との相関を解析し、膵癌の新規血清biomarkerとなり得るかの検証を行う。 ii) 末梢血単核球PBMCを用いて、T細胞分化後にC4BPAを加えることで、C4BPAが及ぼす免疫担当細胞へのphenotypeの変化について検討する。さらに、CD40陽性膵癌細胞にC4BPAを添加したときの膵癌細胞の変化を捉え、C4BPA-CD40 axisのsignal transductionのpathway解析を行う。さらに、mouse C4BPA peptideを用いたpreclinical studyを行いin vivoでのT cell accumulationの評価と、抗腫瘍効果を行う。 iii) CFBが膵癌細胞内において細胞増殖に関わるapoptosisやsenescenceに影響するかを検討し、膵癌治療への応用に向けての基礎的研究を行う。
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Research Products
(10 results)