2019 Fiscal Year Annual Research Report
Medical innovation using gene therapy of transcriptional factor STAT3 in septic multiple organ dysfunction
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19H03757
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松田 直之 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50332466)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 敗血症 / 遺伝子治療 / STAT-3 / JAK2 / 多臓器不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症は,感染症に起因する臓器不全が進行する病態である。肺,心臓,血管,肝臓,腎臓,脾臓,消化管,脳,筋肉などすべての臓器は敗血症病態において障害を受ける。敗血症病態では,インターロイキン6(IL-6)などのサイトカイン濃度が上昇することが知られている。しかし,敗血症病態において活性化されるIL-6受容体作用については,詳細な時系列での解析が期待される。 IL-6受容体により活性化される転写因子STAT-3(signal transducer and activator of transcription-3)は,免疫と炎症に関わる転写因子である。本研究は,敗血症モデル動物として盲腸結紮穿孔マウスおよびヒト培養細胞を用いて,敗血症の類似する状態を作成し,STAT-3活性の役割を解析するものである。敗血症病態における主要臓器のSTAT-3活性をゲルシフト法で解析し,敗血症に伴う臓器不全との関連を評価することを目的として施行されている。 STAT-3デコイオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)のin vivoでの敗血症マウスへの導入が,敗血症性臓器傷害の軽減に有益であることを確認した。 動物モデルにおける敗血症は,マウスの盲腸結紮および穿刺によって誘発し, STAT-3は上流のキナーゼJAK2活性と共に肺や腎臓などの主要臓器組織で急速に活性化されることを確認した。STAT-3デコイODNの尾静脈からの導入により,肺,肝臓,腎臓の組織病理学的変化が改善することが確認できた。また, STAT-3デコイODNは,盲腸結紮穿孔で誘導される炎症性サイトカインや誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)などの炎症分子の産生を抑制した。 次年度の研究として,本研究結果を発展させ,敗血症病態におけるSTAT3の役割と,敗血症治療におけるSTAT-3デコイODNの潜在的な有用性を検討したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究のより充実した進展のために,研究助手等の雇用を考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,以下の2つの研究を中心として,研究を進める予定である。 計画1.摘出臓器および白血球系細胞におけるSTAT-3 活性の比較 血液の遠心分離や化学分離法で抽出した主要臓器において,盲腸結紮穿孔(CLP)マウスの時系列で STAT-3 活性の高まる時期を評価する。STAT-3 の活性度の評価には,各摘出臓器より細胞質分画と核分画を分離して抽出する蛋白分離キットを用い,イムノブロット法による核分画(内部指標蛋白:ヒストン3など)と細胞質分画(内部指標蛋白:アクチン,GAPDHなど)のSTAT-3含量の比較,イムノブロット法による核分画における STAT-3 およびリン酸化 STAT-3 の定量(抗リン酸化 STAT-3 抗体の使用),核分画のゲルシフト法によるSTAT-3量の検出を行なう。CLPマウスの摘出肺における SIE 領域にビオチン標識したものを肺組織より抽出した核蛋白と撹拌反応させ,その一定蛋白量をポリアクリルアミドゲル電気泳動させゲルシフトアッセイを施行する。また,抗 STAT-3 抗体を混ぜて反応させることで上方にスーパーシフト解析を併設する。 計画2.遺伝子治療による IL-6 受容体シグナルの抑制効果の研究 STAT-3の標的部位となる遺伝子領域の活性抑制として,GASデコイ核酸,SIEデコイ核酸,GAS/SIEダブルノックダウンデコイ核酸などをCLP マウスへの尾静脈より投与し,STAT-3活性より適切な時期を検討する追加評価とする。また,それらのデコイ核酸を培養細胞系に導入し,リポポリサッカライドやIL-6で誘導された細胞炎症状態における最適なIL-6 受容体シグナル抑制の遺伝子治療法を評価する。これらの遺伝子導入効率 については,各分子の RT-PCR 解析と上述したSTAT-3 のゲルシフト解析で評価する。
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