2019 Fiscal Year Annual Research Report
Targeting cancer stem cells and spatial niches in kidney cancer: Unravelling intratumoral heterogeneity
Project/Area Number |
19H03792
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 伸之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60445244)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大家 基嗣 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00213885)
水野 隆一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60383824)
小坂 威雄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30445407)
三上 修治 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20338180)
松本 一宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80366153)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 腎細胞癌 / 分子標的治療 / 免疫療法 / RNAシークエンス / ライトシート顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞を頂点とする細胞階層性が紡ぎ出す「がん組織多様性」をいかに克服するか、これが近年の癌研究における喫緊な課題である。腎がん分子標的治療・免疫療法後に生き永らえる癌細胞はどのクローン(癌幹細胞)に由来し、どのような特徴を有し、どこ(どのような癌微小環境)に生息するのであろうか?この疑問の回答は、未だ明らかで無い。本研究で我々は、腎癌幹細胞トランスクリプトームを明らかにし、革新的なライトシート顕微鏡・膨張顕微鏡法により生体内で立体的に可視化し、治療耐性を促す癌幹細胞が生息するニッチ構造を3次元で明らかにする。では腎がんにおける癌幹細胞とは一体何なのか?どうすれば得られるか?特に固形癌の癌幹細胞研究では、この単純な疑問が研究遂行の最大の障壁となる。我々は、先端の循環腫瘍細胞(CTC)濃縮システムを駆使し、逐次療法が行われている腎がん分子標的治療患者からリアルタイムでCTC由来の癌幹細胞を同定し、解析に移したいと考える。1細胞毎にトランスクリプトーム解析には、急速に技術が発展しているシングルセルRNAシークエンスの利用を予定しており、2019年度は最適な細胞単一化プロトコールの作成・改良に従事した。CTCを用いる研究は、2019年度は計18名の転移性腎がん患者から血液採取を行い、独自のプロトコールで腎がんCTC濃縮を試みた。ライトシート顕微鏡を用いる研究は、2019年度は新規3Dイメージングパイプライン:DIIFCO(diagnosing in situ and immuno-fluorescence-labelled cleared onco-samples)法の考案・整備に従事し、腫瘍の立体構造が保持されたまま、腫瘍塊を利用した世界初の高解像度なシングルセルカウントやタンパク/RNA発現の同時解析を達成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当教室は、先端の流体力学に基づくCTC濃縮回収装置「Clear Cell FX」を保有する。最新の同装置は、専用のマイクロ流路チップを利用し、ラベルフリーでハイスループットなCTC濃縮回収が可能である。2019年度は、前向き観察研究として承認された「腎細胞癌患者を対象とした血中バイオマーカーの検討」に従事し、計18名の転移性腎がん患者から血液採取を行い、独自のプロトコールで腎がんCTC濃縮を試みた。我々のプラットフォームでは、わずか患者血液7.5 mL から抗体染色を使わずに腎がんCTCが判定可能である。この内6名は免疫チェックポイント阻害薬治療中の患者であった。次にシングルセルRNAシークエンスの実装に備えて、1細胞単離プロトコールの作成と改良に従事した。円滑なシングルセルRNAシークエンスにはCell viability を維持した単一細胞化プロトコールに求められる。この革新的なシングルセルRNAシークエンスは、多種多様な細胞群に潜む特定の1細胞を可視化する、理想的な研究アプローチである。我々は、逐次的な分子標的治療が行われる腎がん患者から「多様なCTCに潜む癌幹細胞」の全容解明を図りたい。我々の独自性であるライトシート顕微鏡は、2019年度は新規3Dイメージングパイプライン:DIIFCO法の考案・整備に従事した。組織透明化法に独自の免疫染色・in situハイブリダイゼーション法を組み合わせることで、組織深部まで高解像度なシングルセルカウント・タンパク/RNAの同時発現解析が可能となった。この世界初の試みは、シングルセルRNAシークエンス結果を立体的な腫瘍空間で再現し、「立体的な癌幹細胞ニッチ」の解明に欠かすことが出来ない画像解析ツールと考える。DIIFCO法は、社会への波及効果が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、癌幹細胞やその癌幹細胞が生息する「立体的な癌幹細胞ニッチ」の解明に必要な研究基盤の整備に従事した。本研究で使用を予定するCTCは、患者からの血液採取~CTC回収までの一連のプロトコールが、同一施設内で迅速に処理され、遂行は円滑であった。さらにシングルセルRNAシークエンスの実装に備えて、1細胞単離プロトコールの作成・改良にも従事し、腫瘍塊からでもCell viability を維持した状態での単一細胞化が可能であった。ライトシート顕微鏡を用いた3次元画像解析においては、新規3Dイメージングパイプライン:DIIFCO法を開発し、独自の免疫染色・in situハイブリダイゼーション法を通じて、腫瘍の立体構造が保持されたまま、3次元の高解像度なシングルセルカウントやタンパク/RNA発現の同時解析が世界初に可能となった。DIIFCO法は病理診断後の保存組織も利用可能であり、特にバイオバンクにおける標準的な組織保存法であるホルマリン固定パラフィン包埋サンプルも利用可能である。DIIFCO法のさらなる飛躍は、臨床現場においても期待される。2020年度は、1) 転移性腎がんは免疫治療の先駆けであり、臨床的に抗PD-1療法も保険適応である。本研究は、「最新のCTC濃縮システムを駆使し、逐次療法が行われている転移性腎がん患者の血液中からCTC由来の癌幹細胞を特定し、その多様な特徴を世界に先駆け1細胞レベルで明らかする」を目標としている。次年度、CTCを用いたシングルセルRNAシークエンスの実装を図りたい、2)独自性である3次元イメージングは、最終的にシングルセルRNAシークエンスとの融合を可能にするプロトコール開発を進めたい。
|