2020 Fiscal Year Annual Research Report
Targeting cancer stem cells and spatial niches in kidney cancer: Unravelling intratumoral heterogeneity
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19H03792
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 伸之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60445244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大家 基嗣 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00213885)
三上 修治 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20338180)
小坂 威雄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30445407)
水野 隆一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (60383824)
松本 一宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80366153)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腎細胞癌 / 分子標的治療 / 免疫療法 / RNAシークエンス / ライトシート顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞を頂点とする細胞階層性が紡ぎ出す「がん組織多様性」をいかに克服するか、これが近年の癌研究における喫緊な課題である。腎がん分子標的治療・免疫療法後に生き永らえる癌細胞はどのクローン(癌幹細胞)に由来し、どのような特徴を有し、どこ(どのような癌微小環境)に生息するのであろうか?この疑問の回答は、未だ明らかで無い。本研究は、腎癌幹細胞トランスクリプトームを明らかにし、革新的なライトシート顕微鏡・膨張顕微鏡法により生体内で立体的に可視化し、治療耐性を促す癌幹細胞が生息するニッチ構造を3次元で明らかにすることを目的とする。我々は、先端の循環腫瘍細胞(CTC)濃縮システム・シングルセルRNAシークエンス・ライトシート顕微鏡・膨張顕微鏡法の融合を図りたいと考える。2020年度は、特にシングルセルRNAシークエンス成功の鍵となる細胞単一化プロトコール確立に多くの時間を費やした。通常CTC濃縮システムから得られる細胞濃縮液は既に細胞単離されている点でシングルセルRNAシークエンスへの利用は円滑であるが、実際のヒト腫瘍組織内からの細胞単一化プロトコールは、in situ(腫瘍組織内)での癌幹細胞同定に欠かせない。本研究で我々が確立するマウス腫瘍由来の「細胞単離→FACS→シングルセルRNAシークエンス」プロトコールは、①ヒト腫瘍でも応用できること、②細胞単一化後の腫瘍組織を新鮮凍結することで、高額なシングルセル解析も適応を絞った効率的な運用が可能となった。さらに2020年度は、代表者が考案・開発した新規3Dイメージングパイプライン:DIIFCO(diagnosing in situ and immuno-fluorescence-labelled cleared onco-samples)法を実際の臨床組織で実装に移すことで、本研究の基盤整備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当教室は、先端の流体力学に基づくCTC濃縮回収装置「Clear Cell FX」を保有する。最新の同装置は、専用のマイクロ流路チップを利用し、ラベルフリーでハイスループットなCTC濃縮回収が可能である。シングルセルRNAシークエンスは腫瘍塊からでも細胞単一化が可能なプロトコールを確立し、マウス~ヒト腫瘍に及ぶ1細胞トランスクリプトーム解析が可能となった。円滑なシングルセルRNAシークエンスにはcell viability を維持した単一細胞化が求められるが、実際のシングルセルRNAシークエンス実装で確認できた。多種多様な細胞群に潜む特定の1細胞解析にはシングルセルRNAシークエンスが必須である。代表者独自のDIIFCO法は、臨床組織での実装に移し、織透明化法に独自の免疫染色・in situハイブリダイゼーション法を組み合わせることで、癌幹細胞ニッチ構造が見て解ることが可能となった。膨張顕微鏡法も、特に組織膨張下でのin situ hybridization実装のプロトコール確立・整備に従事した。膨張顕微鏡法はDIIFCO法を組み合わせることで、ナノレゾリューションでタンパク/ RNA局在がわかる。DIIFCO法で採用されるin situ hybridizationは、hybridization chain reaction法を採用している。この最新のhybridization chain reaction法は、プローブが20-50b長であり、プローブ作成が安価で容易である。2020年度は、ハイスループットなナノレゾリューションのRNA発現・局在解析を進めることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、癌幹細胞やその癌幹細胞が生息する「立体的な癌幹細胞ニッチ」の解明に必要な研究基盤の整備をさらに進めた。本研究で使用を予定するCTCは、患者からの血液採取~CTC回収までの一連のプロトコールが、同一施設内で迅速に処理され、遂行は円滑である。シングルセルRNAシークエンスは、元々細胞が単離されているCTCに加えて、独自の細胞単一化プロトコールで、マウス~ヒト腫瘍に及ぶ1細胞トランスクリプトーム解析が可能となった。実際のシークエンス実装は、前向き研究で当該施設倫理委員会で承認されており、今後は臨床組織での解析を進める。ライトシート顕微鏡を用いた3次元画像解析においては、新規3Dイメージングパイプライン:DIIFCO法は、実際の臨床組織で実装に移すことで、本研究の基盤整備を進めており、次年度も継続を予定する。DIIFCO法は、独自の免疫染色・in situハイブリダイゼーション法を通じて、腫瘍の立体構造が保持されたまま、3次元の高解像度なシングルセルカウントやタンパク/RNA発現の同時解析が可能である。膨張顕微鏡法と組み合わせることで、ナノレゾリューションでRNA局在を解析するプラットフォームが可能となった。我々は、in situ hybridization法は特にlncRNA解析で優位性があると考える。今後も新規癌イメージングとして、臨床応用を視野に膨張顕微鏡法の基盤整備を進めるが、本研究で得られる全てのイメージング技術は、最終的にシングルセルRNAシークエンスと融合するためのプロトコール開発に繋げ、癌幹細胞ニッチの同定に活用したいと考える。
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Research Products
(4 results)