2019 Fiscal Year Annual Research Report
A mechanism of sublingual immunotherapy with Japanese cedar extract for the treatment of patients with Japanese cedar and cypress pollinosis
Project/Area Number |
19H03802
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
清水 猛史 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00206202)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神前 英明 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (10402710)
山本 小百合 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (10828114)
新井 宏幸 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (60816627)
湯田 厚司 滋賀医科大学, 医学部, 客員教授 (80293778)
戸嶋 一郎 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80567347)
中多 祐介 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80794958)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 舌下免疫療法 / スギ花粉症 / ヒノキ花粉症 / 制御性T細胞 / 制御性B細胞 / 抗原特異的免疫グロブリン / メモリーT細胞 / 網羅的RNA解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
スギ花粉舌下免疫療法は、スギ花粉症患者でも約10%の無効例が存在する。スギ花粉の主要抗原であるCry j 1とCry j 2はヒノキ花粉のCha o 1、Cha o 2と高い相同性を有し、スギ花粉症患者の 70-80%は、続いて飛散するヒノキ花粉にも感作している。IgE抗体にも交差反応性があり、スギ花粉舌下免疫療法はヒノキ花粉症にも効果が期待されたが、実際にはその有効性は約40%に過ぎない。その一因として、2016 年に新たに同定されたヒノキ抗原 Cha o 3が関わっている可能性が考えられる。 本研究では、スギ花粉舌下免疫療法前後に採取した患者血清と末梢血単核球を利用して、臨床症状と比較しながら、スギ花粉症やヒノキ花粉症の有効例・無効例における以下の分子機序を明らかにして、舌下免疫療法の作用機序を解明する。 具体的には、(1)血清中の抗原特異的免疫グロブリン(IgE, IgG1, IgG2a , IgG4)の変化。(2)特異的抗原刺激(スギ・ヒノキ粗抗原、Cry j 1, Cry j 2, Cha o 1, Cha o 2, Cha o 3)に対する末梢血単核球からのサイトカイン(IL-5, IFN-gamma IL-10, IL-17 )産生。(3)末梢血単核球におけるTh2細胞、濾胞性T細胞(Tfh細胞)、樹状細胞、制御性T細胞サブセット(Tr1, Th3, Foxp3+Treg, Th2-like Treg)、制御性B細胞の変化とその機能解析。 (4)血清中の、Th2反応に対する抑制系サイトカイン(IL-10, IL-27, IL-35)の変化と末梢血単核球を利用したその機能解析。(5)舌下免疫療法有効例・無効例の末梢血単核球から、それぞれメモリーT 細胞とB 細胞を分離し、RNAシーケンスあるいはマイクロアレイによる網羅的RNA解析。などを行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スギ花粉舌下免疫療法後の末梢血単核球をスギ(Cry j 1)、ヒノキ(Cha o 1, Cha o 3)抗原で刺激すると、いずれの抗原刺激においてもIL-5とIL-17産生が非特異的に抑制された。一方で抑制系サイトカインのIL-10はCry j 1刺激特異的に産生された。また、Cry j 1特異的IgEとIgG4産生が誘導されたが、Cha o 1あるいはCha o 3特異的IgE, IgG4産生は見られなかった。さらにCry j 1特異的IgG4値とCry j 1刺激により産生されるIL-10濃度は、スギ花粉飛散期の臨床症状の改善と相関した。以上より、スギ花粉舌下免疫療法では非特異的な末梢血単核球からのIL-5とIL-17産生が抑制されていること、一方でIL-10産生や抗原特異的IgG4産生は使用された抗原特異的に生じることが明らかになった。Cha o 1の共通抗原性はCha o 3と同様にスギ花粉舌下免疫療法の効果発現に関与しないことも明らかになった。したがって、ヒノキ花粉症に対してはヒノキ花粉による舌下免疫療法の開発が必要であると考えられた。 次に、舌下免疫療法有効例・無効例の末梢血単核球から、メモリーT 細胞を分離し、RNAシーケンスによる網羅的RNA解析を行ったところ、舌下免疫療法有効例でアポトーシス抑制遺伝子であるDPF2の発現が低下していた。つまり、舌下免疫療法によりメモリーT細胞のアポトーシスが誘導されたと考えられる。また、舌下免疫療法後には病原特異的Th2細胞とTfh2細胞が減少し、制御性B細胞が増加していた。さらに、制御性B細胞におけるFASリガンドの発現が増加していた。以上より、制御性B細胞がFAS-FASリガンドを介してb病原特異的Th2細胞とTfh2細胞のアポトーシスを誘導した可能性が考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
スギ花粉舌下免疫療法によって、病原特異的Th2細胞のアポトーシスが誘導されることが明らかになったことから、スギ花粉舌下免疫療法による病原特異的Th2細胞と制御性B細胞の動態について検討し、「舌下免疫療法によって誘導された制御性B細胞が病原特異的Th2細胞のアポトーシスを導く」との仮説のもとに、舌下免疫療法の作用機序を解明する。 具体的には、(1)スギ花粉舌下免疫療法前後の末梢血単核球から、病原特異的Th2細胞を分離し、mRNAを回収して、アポトーシス遺伝子(Fas、TNF-R1、DPF2、Bcl-2、Caspase3・7・8・9、NF-κB/P100など)の発現の変化を調べる。(2)舌下免疫療法後の制御性B細胞と病原特異的Th2細胞の動態をFACSで確認する。(3)末梢血単核球から制御性B細胞と病原特異的Th2細胞分離して共培養し、制御性B細胞が病原特異的Th2細胞のアポトーシスを誘導すること証明する。 さらに、舌下免疫療法による制御性T細胞の動態についても引き続き検討を進め、(4)末梢血単核球における制御性T細胞サブセット(Tr1, Th3, Foxp3+Treg, Th2-like Treg)の変化とその機能解析。 (5)制御性T細胞から産生される血清中の抑制系サイトカイン(IL-10, IL-27, IL-35)の変化と、末梢血単核球を利用したその機能解析を行う。
|
Research Products
(5 results)