2019 Fiscal Year Annual Research Report
味細胞特殊イオンチャネルシナプスによる味覚神経伝達機構の全容解明
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19H03819
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
樽野 陽幸 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20706824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩槻 健 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (50332375)
城戸 瑞穂 佐賀大学, 医学部, 教授 (60253457)
山本 正道 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (70423150)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チャネルシナプス / 塩味 / 神経伝達 / ATP / 味覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩味を生み出す呈味物質は食塩に含まれるナトリウムイオン(Na+)であり、口に含むと“おいしい”味として知覚される。現代、食塩摂取過多に起因する高血圧症患者数の増加と合併する心血管疾患の増加が社会的問題となっている。本年度、我々はチャネルシナプスが舌における塩味の神経伝達を担っていることを明らかにした。マウスを用いた実験で、数ある味蕾細胞のうち、epithelial sodium channel (ENaC)とcalcium homeostasis modulator 1/3 (CALHM1/3)とよばれる分子を同時に発現する細胞集団が塩味の受容を担当する細胞、すなわち塩味細胞であることを突き止めた。さらに、塩味細胞がNa+に応答して活性化して求心性神経へと塩味情報を伝達する仕組みを次の通り明らかにした。まずENaCを介して細胞内にNa+が流入して脱分極する。続いて電位依存性Na+チャネルが活性化して活動電位が生じる。この活動電位によりCALHM1/3チャネルが活性化して求心性味神経に向けて神経伝達物質ATPを放出することで塩味を生じさせる。超解像顕微鏡でも塩味細胞に特徴的なCALHMチャネルシナプス構造を観察することに成功した。 これまでにチャネルシナプスが甘味・うま味・苦味の神経伝達を担うことが知られていた。今回の研究で、小胞性シナプスによる酸味以外の全ての味質受容(甘味・うま味・苦味・塩味)をチャネルシナプスが担うことが明らかとなり、味覚にとってチャネルシナプスの果たす役割が従来考えられていた以上に大きいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、4つある研究目標の一つである「新たなCALHMチャネルシナプスの生理機能の解明」を達成し論文発表している。さらにその他の研究目標についても予備実験が順調に進んでおり、研究の進捗は計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
チャネルシナプスの生理機能の面ではこれまでに塩味受容における役割を明らかにした。今後、さらなるチャネルシナプスの生理的役割も独自の遺伝子改変マウスを駆使して明らかにしていく。 一方でチャネルシナプスの構造・機能の解析の面においては今後、チャネルシナプス機能の根源であるCALHMチャネル機能の分子基盤に関する研究計画を優先的に推進しつつ、チャネルシナプスの形成原理およびチャネルシナプスにおけるATPストア動態の解析へと実験を進めていく予定である。
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Research Products
(11 results)