2020 Fiscal Year Annual Research Report
チャネルキナーゼTRPM7による骨格形成制御機構の解明
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19H03822
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
岡部 幸司 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (80224046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
進 正史 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (70549261)
鍛治屋 浩 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (80177378)
岡本 富士雄 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (60153938)
溝口 利英 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (90329475)
松下 正之 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30273965)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TRPM7 / 骨格形成 / ミネラル輸送 / キナーゼ活性 / 髄間葉系細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
TRPM7はキナーゼ活性を有するユニークなミネラル透過型陽イオンチャネルで、歯に高発現しその硬組織形成に必須の分子である。本研究は骨形成や骨リモデリング機構におけるTRPM7のイオンチャネルとしてのミネラル輸送機能とキナーゼとしてのリン酸化機能の役割やこれに続くシグナル伝達機構を、我々が開発した骨髄間葉系細胞や骨芽細胞に特異的なTRPM7コンデョショナル欠損マウスやTRPM7キナーゼ変異マウスを用いたin vivo実験系、及びin vitro実験系で解明することにある。これらは骨格形成異常の病態解明や骨再生研究へ新しい戦略を提供すると考えられる。これまでの解析で、TRPM7が軟骨や海綿骨に発現し、骨髄間葉系細胞に特異的なPrx1/TRPM7コンディショナル欠損(Prx1/cKO)マウスでは、長官骨長の短縮、海綿骨の減少、破骨細胞数の増加、成長板軟骨の菲薄化等を認め、骨吸収系マーカーや軟骨形成に影響が認められた。一方、TRPM7αキナーゼ変異(KR)マウスの表現型からTRPM7のキナーゼ活性の関与は少ないと予想された。2020年度は、Prx1/cKOマウスの軟骨組織を解析し、TRPM7欠損が胎生期や生後において軟骨組織中の特に肥大化軟骨の形成に障害が認められた。また、この軟骨分化の異常と海綿骨の吸収更新の表現型に焦点を当て、軟骨分化や骨吸収、及び石灰化の各種マーカー発現について解析を行った。その結果Prx1/cKOマウスにおいては、一部の軟骨マーカーの発現低下と共に破骨細胞形成因子であるRANKLの遺伝子発現上昇が認められた。さらに免疫染色においては成長板軟骨と海綿骨の間の領域においてRANKLの発現局在が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、当初の計画に沿って下記の実験を実施し実績を得た。 1) Prx1/cKOマウスにおける軟骨組織の解析:Prx1/cKOマウスの軟骨組織を解析した結果、胎生期マウスの軟骨原器の状態では主に肥大化軟骨層が短縮し、且つ細胞サイズが小さくなっていた。また、生後マウスにおいても成長板軟骨自体の短縮や特に肥大化軟骨層の短縮が認められた。従って、TRPM7の欠損は軟骨組織中の特に肥大化軟骨の形成に障害を生じることが明らかとなった。 2) 軟骨分化や骨吸収、及び石灰化の各種マーカー発現についての検討: 2020年度はPrx1/cKOマウスの軟骨分化の異常と海綿骨の吸収更新の表現型に焦点を当て、軟骨分化や骨吸収、及び石灰化の各種マーカー発現について解析を行った。その結果Prx1/cKOマウスにおいては、一部の軟骨マーカーの発現低下と共に破骨細胞形成因子で骨吸収マーカーであるRANKLの遺伝子発現上昇が認められた。さらに免疫染色においては成長板軟骨と海綿骨の間の領域においてRANKLの発現局在が認められた。 以上の研究1)に関しては、軟骨組織の解析情報について、研究計画上、充分な研究結果が得られている。また、研究2)に関しては、骨吸収表現型の誘因として骨吸収マーカーであるRANKLの上昇が特定できたことが重要な所見である。従って、2020年度の研究計画の達成度は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に得られた結果を基にして、以下の計画を進める。 1) 骨組織におけるTRPM7発現動態の検討: TRPM7-Cre/Tomatoマウスやin situ hybridization法の結果を踏まえて、主にTRPM7抗体を用いて、胎生期と生後週齢において軟骨組織や骨組織のどの時期と部位にTRPM7が発現し局在するか確認を行う。 2) 骨髄間葉系細胞に特異的なTRPM7コンディショナル欠損(Prx1/cKO)マウスのin vivo解析: 2021年度はPrx1/cKOマウスにおける海綿骨の吸収更新の表現型に焦点を当て、成長軟骨における骨吸収因子である特にRANKLやOPG発現、他の関連マーカーについて免疫染色等の解析を行いTRPM7の役割をin vivoレベルで明らかにする。 3) Prx1/cKO、LR/cKO、KRマウスの骨髄間葉系細胞、及び培養軟骨細胞を用いた、分化増殖及び石灰化機能のin vitro解析: 2021年度はPrx1/cKOマウスの骨髄間葉系細胞や培養軟骨細胞を用いて、軟骨細胞への分化増殖能や破骨細胞形成機能(RANKL / OPG発現等)、及びTRPM7阻害薬等の作用の検討を行い、結果を合わせてTRPM7が軟骨細胞や破骨細胞の分化、及び石灰化機構に影響を与える因子やシグナル伝達系を検索する。 4) TRPM7チャネルを介するミネラル透過性陽イオン電流と細胞内ミネラル濃度変化の解析: 2021年度は主に培養軟骨細胞を用いて、パッチクランプ法や細胞内Ca2+/Mg2+イメージング法によりTRPM7様のMg2+依存性陽イオン電流や細胞内Ca2+/Mg2+濃度変化を解析する。また、TRPM7阻害剤やsiRNAによるノックダウン法により、骨形成系におけるTRPM7を介するミネラル輸送機構の性質や機能を同定する。
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Research Products
(4 results)