2020 Fiscal Year Annual Research Report
DNAメチル化制御による骨形成促進機構の解明と骨再生法への応用
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19H03836
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / 骨形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、薬剤を用いてDNAメチル化酵素を阻害することで、骨芽細胞に重要な遺伝子の転写を促進し骨形成を促進する方法の探索を行った。そのためにアプローチとして、7種類のDNAメチル化酵素阻害剤(RG108, 5-Aza2', 5-Aza, Hydralazine hydrochloride, Procinamide, Procaine, Zebularine)を入手し骨芽細胞分化に対する効果を検討した。まず、がん細胞を用いて行っている先行研究を参考に細胞毒性を誘導しない使用濃度を決定した。MC3T3E1細胞を、上記のDNAメチル化酵素阻害剤で2日間処理した後、BMP2を添加し4日間培養した後RNAを採取し、骨芽細胞分化マーカー遺伝子(Alpl, Runx2, Sp7およびOcn)の発現をRT-qPCRにより検討した。その結果、5μM RG108および0.5mMProcaineの2種類のDNAメチル化酵素阻害剤がBMP2誘導性の骨芽細胞分化を増強させることを見出した。これらDNAメチル化酵素阻害剤による骨芽細胞分化の促進作用に細胞増殖が関与するか否かを検討するために、WST1アッセイにより骨芽細胞の細胞増殖に対する効果を検討した。その結果、RG108は骨芽細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないことが明らかとなった。以上の結果は、RG108はエピジェネティックにサイレンシングされた骨芽細胞遺伝子を脱メチル化により再活性化することにより骨芽細胞分化を促進している可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は骨芽細胞分化を促進するDNAメチル化阻害剤の絞り込みに成功した。今後は骨形成におけるDNAメチル化阻害剤の効果を検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は①動物実験モデルを用いて、DNAメチル化阻害剤RG108の骨組織再生への効果の検討、ならびに②DNAメチル化阻害剤RG108が骨芽細胞分化を促進する分子メカニズムの解明、を行っていく。 ①RG108の作用はスキャホールドフリーの三次元化人工組織(TEC : Tissue-Engineered Construct)を応用する(Ando W et al Biomaterials 2007) 。具体的には、マウス骨髄間葉系細胞または初代培養骨芽細胞を4x105個/cm2の高密度で培養し、骨芽細胞分化誘導培地を用いてDNAメチル化阻害剤の存在下で培養する。その際、骨基質産生を促進するために0.2mMアスコルビン酸および250ng/ml BMP2を添加する。1~2週間培養した後、ピペッティングによるせん断応力を用いて細胞シートと培養皿を分離し、ヌードマウスに移植する。骨形成の評価は、RT-qPCRによる骨芽細胞分化マーカー遺伝子(Alpl, Ocn, Sp7,Runx2)の発現解析、VonKossa染色による石灰化領域の測定により行う。②についてはMedIP-seqを用いて、RG108処理によりDNAメチル化度が変化する領域の網羅的探索を行い、骨芽細胞分化特異的なDNAメチル化領域の探索とその機能的役割の解明を行う予定である。さらに、必要に応じて骨芽細胞特異的なDNAメチル化変動遺伝子のノックアウト(KO)マウスを作製し、骨形成を評価する。
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