2019 Fiscal Year Annual Research Report
TRAIL経路活性化とRB活性化によるヒ素発がんに対する予防戦略
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19H03889
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
友杉 真野 (堀中真野) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80512037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20186993)
安田 周祐 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10643398)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん予防 / ヒ素 / TRAIL / RB |
Outline of Annual Research Achievements |
世界各国においてヒ素汚染水が生活水として利用され、がん発症要因の一つとなっていることは多くの疫学調査から明らかとされている。この現状に対し、申請者らは、これまでの基礎研究成果を応用することで、ヒ素発がんの予防戦略に繋げたいと考えている。ヒ素が細胞に及ぼす分子レベルの影響は徐々に明らかとされている。その中で、本研究では「免疫抑制」と「MAPK経路の活性化」に着目した。ヒ素による発がん促進の機序について検証を行い、最終的に独自の実践的予防法の提案に繋げたい。 2019年度は、無機ヒ素として三酸化二ヒ素、および亜ヒ酸ナトリウムを用い、申請時に草案した3つの課題のうち、課題①と課題②の検証から開始した。 課題①ヒ素による免疫抑制作用はTRAILやPD-1の発現に影響を及ぼすか? 課題②ヒ素によるMAPK経路の活性化はDR5の発現やアポトーシス耐性にも影響を及ぼすか? 課題①について、まず正常マウスの脾細胞からT細胞を分離し、ヒ素曝露によって、CD3/CD28ビーズ刺激によるT細胞の活性化が抑制されるか否かをフローサイトメトリーにて検証した。その結果、再現性をもってマウスT細胞の活性化は顕著に抑制されることが明らかとなった。また、ヒトリンパ球から産生されるTRAILの発現も、同様に上記のヒ素の曝露によって顕著に抑制された。 課題②について、ヒト表皮角化細胞に対し、既報で示されていたヒ素の細胞増殖促進効果および抑制効果について検討した。処理濃度・時間を幅広く検討した結果、一定濃度以上の曝露で細胞死誘導や細胞増殖抑制が確認されたが、増殖が促進されるという条件は見いだせなかった。さらに、複数のKRAS変異ヒト肺がん細胞株も加え、細胞表面DR5の発現に対するヒ素曝露の影響を検証した。その結果、肺がん細胞においてのみ、増殖抑制効果が観察された濃度のヒ素曝露によって顕著にDR5発現が誘導された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、3つの検討課題のうち、2つの課題について検証実験を開始し、それぞれについて一定の結果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も引き続き、マウスT細胞、ヒトリンパ球を対象にした実験も継続する。課題①のTRAILの発現へのヒ素の影響について、さらに条件検討を加え、検証を続ける。細胞表面の膜型TRAILについてはフローサイトメトリーで検証し、同時にPD-1などの共抑制分子の発現についても検証する。培地中の分泌型TRAILについてはELISAで評価し、mRNA発現量への影響もreal time RT-PCRによって検証する。ヒトリンパ球に対し、ヒ素添加によるMAPK経路、およびRB活性への影響についてWestern blottingにて検証する。可能であれば、複数人由来のリンパ球へのヒ素の影響についても検討したい。また、ヒトリンパ球とヒト肺がん細胞もしくは正常ヒト肺由来の線維芽細胞の共培養実験によって、同様にヒ素曝露の影響の検証を進める。 細胞表面の膜型DR5の発現に対するヒ素曝露の影響についても検証を進める。さらにヒ素添加によるMAPK経路、およびRB活性への影響についてWestern blottingにて検証する。タンパク質レベルでの発現量の変化が確認された分子に対して、mRNAレベルの検証に進む。KRAS野生型のヒト肺がん細胞および正常ヒト肺由来の線維芽細胞を対象にした実験も実施する。 なお2019年度は、無機ヒ素として三酸化二ヒ素と亜ヒ酸ナトリウムを用い、検証を開始した。しかしながら、三酸化二ヒ素の溶媒がマウスT細胞およびヒトリンパ球の細胞表面TRAILの発現を顕著に抑制するという結果が得られており、以降の実験は亜ヒ酸ナトリウムのみを対象とした検証を続ける予定である。
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Research Products
(6 results)