2019 Fiscal Year Annual Research Report
外傷性脳損傷の増悪機序としての持続的脳内DNA損傷の解析
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19H03917
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
木林 和彦 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20244113)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 外傷性脳損傷 / 剖検 / 実験動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
外傷性脳損傷が受傷後に増悪する機序を解明するため、ヒト剖検例の解析とモデル動物の解析を行う。1)ヒトの剖検例の後向きの解析研究を行い、頭部外傷による脳損傷の重症度と糖尿病や高血圧などの既往歴との関係を明らかにし、外傷性脳損傷の増悪化機序を明らかにする。2)外傷性脳損傷が増悪する糖尿病モデルマウスに脳損傷を作成し、コントロールの非糖尿病マウスと比較することで、脳内DNAの損傷が受傷後に持続的に生じていることを証明し、外傷による脳内DNAの持続的損傷が神経機能障害と致死の機序であることを明らかにする。 ヒト剖検例の解析では、交通事故と交通事故以外による頭部損傷の患者を比較した結果、交通事故による頭部損傷患者では胸腹部や骨盤に併存する損傷に注意する必要があり、歩道等では服薬や転倒歴のある人の転倒防止が必要と考えられた。頭部外傷の法医解剖例から非典型的な経過を辿った事例として頭部外傷直後に心停止を来した事例を抽出して検討したところ、飲酒酩酊に加え、頭頂部打撲と頸部過伸展が受傷直後の心停止に関係することが考えられた。頭部打撲によって心停止を来た人にはその場に居合わせた人による心肺蘇生が重要と考えられた。頭部外傷直後に心停止を来した後に死亡した患者の法医解剖では高度な脳損傷が認められないことを死因診断で考慮すべきであり、受傷時に心停止を来す頸髄損傷と既存疾患の増悪を剖検で除外する必要がある。 糖尿病マウスの脳損傷の研究では、糖尿病マウスは非糖尿病マウスに比較して脳損傷が高度であり、神経機能の低下も大きく、脳内に炎症細胞が多く出現することが判り、既存疾患である糖尿病は炎症の持続により脳損傷を悪化させることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト剖検例の解析では平成20~27年までの事例の解析を終えており、現在平成28年以降の事例の解析を行っている。これまでの成果は原著論文として発表している。実験動物を用いた研究では糖尿病が脳損傷の増悪因子であることを明らかにし、研究成果を学術誌に投稿中である。従って、概ね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト剖検例の解析では平成28年以降の事例の解析を行い、受傷機転別の損傷の特徴を明らかにする。実験動物を用いた研究では糖尿病が脳損傷の増悪因子であることの機序を明らかにするため、受傷後に脳内DNAの持続的な損傷が生じていることを明らかにする。
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