2022 Fiscal Year Annual Research Report
Role of internal feedback neural pathway in functional recovery from spinal cord injuries
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19H03975
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
武井 智彦 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (50527950)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 運動制御 / 遠心性コピー / 運動障害 / 感覚予測 / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄損傷による運動機能障害から回復する場合、失われた神経連絡や神経機能の「復元」を目指す一方で、患者自身が「思い通りに動かない身体」を受容し、それに対して適切に行動を適応させていくことが重要である。本研究では、運動指令のコピーである「遠心性コピー」とそれにもとづく運動予測に関わる神経活動を記録及び操作する技術を確立し、健常状態および運動障害時の運動学習への役割を明らかにすることを目的とする。 一昨年度より1)トルク外乱を用いた詳細な運動応答評価課題の導入、2)皮質電位(Electrocorticography、ECoG)による広範な神経活動記録、および3)微小電気刺激による神経活動修飾法の導入を開始した。現在まで2頭の動物(マカクザル)に対して、トルク外乱に対する予測的運動制御課題を訓練し、さらに上肢筋活動および皮質電位を記録するための電極埋め込み手術に成功した。特にそのうち一頭からトルク外乱に対する適応課題中の神経活動記録を行った結果、外乱によって誘発されるECoG応答が適応に応じて変化することが明らかとなった。特に背側運動前野および一次運動野では外乱への適応によって運動開始タイミングでのECoG応答の増加が認められた。一方、一次体性感覚野や頭頂葉5野では外乱のタイミングに同期した予測的なECoG応答を示すようになった。さらに各領野を電気刺激によって活動を阻害したところ、頭頂葉5野において適応成績の低下が生じる傾向が認められた。これは運動関連領野から発せられた運動指令が遠心性コピーとして運動中の感覚予測を頭頂連合野に生じさせた結果、運動適応が引き起こされている可能性を示唆する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標として、研究課題の基盤となる遠心性コピーの伝達回路の記録及び操作技術の確立に焦点を挙げた。その研究成果として1)サル2頭に対してトルク外乱を用いた運動適応課題を導入、2)筋電図および皮質電位(ECoG)記録のための手術の成功、および3)そのうち1頭に対する微小電気刺激による神経活動修飾法の導入を開始しすることができた。この結果、感覚予測と感覚予測誤差にもとづく神経活動成分の同定が進みつつある。このように本年度の目標を着実に達成しておりおおむね順調に成果をあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく導入した運動適応パラダイム及び神経活動記録法によりサル1頭から感覚予測や感覚予測誤差に関する神経応答の同定ができて来た。また電気刺激による活動阻害により測に関する機能の選択的な阻害ができつつある。そのため研究の方針としては概ね順調であると判断し、最終年度である来年度はサル2頭目の個体を対象とした実験をすすめ上記の結果の検証を行い、成果発表を行う方針である。
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