2019 Fiscal Year Annual Research Report
A study of biological plasticity behind brain-machine interface learning
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19H03983
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
牛場 潤一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00383985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 崇弘 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70759886)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コモン・マーモセット / 運動皮質 / 線条体 / カルシウムイメージング / レバー引き課題 / 脳情報デコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳卒中片麻痺における手指運動機能の回復を誘導する「ブレイン・マシン・インターフェース・リハビリテーション(BMI リハ)」について、脳内で生じる生物学的可塑性の仕組みを、モデル動物を対象とした生理学研究によって明らかにすることを目的とした。 マーモセット脳は、ヒト脳と同じく一次運動野が体性感覚野と機能分離しているにも関わらず、脳回や脳溝が無いため、シート状の硬膜上電極を適用することが容易で、これによって感覚運動機能に関連した皮質神経活動を網羅的に取得することが可能である。そこで2019年度には、マーモセット一次運動野および体性感覚野の皮質脳波を硬膜上電極によって慢性的に記録できる無線計測系を確立し、運動関連脳波によってコンピュータカーソルの操作を可能とするBMIを確立することとした。今年度は予定通り、(1)皮質脳波の長期安定記録手技(~6週)、(2)皮質脳波からの運動情報デコーディング法(精度80%超)、(3)BMIオペラント学習システムの構築を終え、2個体作出してその再現性を確保し、当初予定どおりの実績を取得した。 また、皮質電極とは別に、一次運動野第5層および外側線条体の神経活動をカルシウムイメージング法により記録する系を確立および改良し、高い信号ノイズ比での数十個単位での神経細胞活動を可視化することを実現した。以上の系は、BMIリハの背後で駆動する神経活動の変容をとらえる上で必要な基盤技術として利用できると考えており、2020年度以降に予定しているBMI研究の進展に貢献するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、一次運動野直上に留置した皮質電極から電気的神経活動を計測する個体と、一次運動野第5層および外側線条体の神経活動をカルシウムイメージング法により記録する個体に分けて、それぞれ実験系の構築を進め、レバー引き課題中のマーモセット各1頭ずつにおいて、記録対象となる神経活動を十分な精度で取得することに成功した。皮質電極からの記録ならびにカルシウムイメージング法のための各種実験手技は十分に安定し、標的脳領域に存在する細胞活動を可視化することが安定的にできることが確認された。実験課題の実施に際して、マーモセットが扱うレバーにはロボティックアームTouch(3D Systems)を採用し、レバーの制御および座標データを取得した。また取得したデータの8割を用いて、神経細胞活動からレバーの前後座標を推定するデコーダをランダムフォレストにより作成し、残りの2割の神経細胞活動からレバーの座標を推定する精度を算出した。解析に用いた細胞数は運動野、線条体それぞれ42個、123個であり、推定精度は決定係数R2 = 0.901±0.043(標準偏差、5サンプル)、0.630±0.159(標準偏差、10サンプル)であった。以上のことから、マーモセットの運動情報を神経カルシウムシグナルから一定の精度でデコーディングできることが示された。さらに、皮質脊髄路に投射する神経細胞を特異的にイメージングするため、ラットの第5頚髄および第7頚髄にGCaMP7を発現する逆行性ウイルスを注入した2週間後に、一次運動野に内視鏡レンズプローブを挿入し、デンタルセメントを固定した。また小型顕微鏡nVistaをマウントするためのヘッドプレートを固定した。ペレットリーチング課題中にイメージングを実施し、リーチング中に活動の上昇を示す10個の細胞を検出することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、当初計画ではカルシウムイメージング装置開発者のMark Schnitzer博士(Stanford大学生命応用物理学科准教授、Investigator of Howard Hughes Medical Institute)のところへ短期訪問して共同研究を実施する予定であったが、COVID-19拡大にともなう各種活動自粛の影響で、現在その見通しが立たない状況になっている。そこで今後の研究推進方策を一部変更し、すでに確立している脳活動記録のインフォマティクス解析を年度前半は重点的に進める予定である。また今年度は、BMI用硬膜上電極に作られた微小窓から光ファイバーを脳内挿入して、運動関連脳波発生中の皮質ニューロン由来のカルシウム動態信号を同時計測する系を確立する。具体的な取り組みとして次の3点を実施する。(1)中央部に微小窓がレイアウトされたBMI用硬膜上電極の設計と製造。(2)硬膜上電極に干渉しない光ファイバー用マウンタの設計とマーモセット頭部への組み込み。(3)硬膜上電極から記録される運動関連皮質脳波と光ファイバーから記録される皮質ニューロン由来カルシウム動態信号の同期的記録法の確立。パイロットスタディとして1個体での運用を実現し、表層的な集合電位である皮質脳波の信号構造に関連した皮質ニューロン活動の特徴を同定する。
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Research Products
(1 results)