2021 Fiscal Year Annual Research Report
がん分子標的薬治療が抱える臨床的問題の食品成分による克服
Project/Area Number |
19H04034
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
近藤 茂忠 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (40304513)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 大腸がん / 分子標的薬 / 悪性化 / フラボノイド / 薬剤抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々が独自に樹立したがん分子標的薬に対して種々の抵抗性を獲得した悪性化大腸がん細胞モデルを用いて、分子標的薬耐性化の分子メカニズムを明らかにする。解明した耐性化機序に基づき、食品機能成分(エピガロカテキンガラート及びアピゲニン)が分子標的薬マルチ耐性化を解除できること、およびマルチ耐性化解除の分子基盤を解明する。 2021年度は、エピガロカテキンガラートによる分子標的薬マルチ耐性化抑制の分子メカニズムを明らかにするために、エピガロカテキンガラートが結合するがん悪性化関連標的分子の探索を行った。その結果、エピガロカテキンガラートはEGF-R, HGF-R, Raf1, MEK1/2, ERK1/2と結合し、これらキナーゼの活性化を抑制することを見いだした。 次に、分子標的薬(EGF-R阻害薬、HGF-R阻害薬、IGF-1R阻害薬)に対する耐性化の連鎖をアピゲニンとエピガロカテキンガラートが抑止できるかどうか検討した結果、分子標的薬マルチ耐性化を抑制できることを明らかにした。さらにその機序として、大腸がん細胞が各分子標的薬を回避するのに用いているバイパス経路分子群をアピゲニンおよびエピガロカテキンガラートが直接阻害していることを見出した。 次に、アピゲニンおよびエピガロカテキンガラートによる標的分子群の活性化抑制効果が長期間持続するかどうかを検討した。アピゲニンによる標的分子群の活性化抑制効果は1か月、エピガロカテキンガラートによる抑制効果は2か月、これら2つのフラボノイド併用による抑制効果は2か月程度となり、従来の分子標的薬併用による抑制期間よりも長期間持続することを明らかにした。しかしながら、アピゲニンとエピガロカテキンガラート(単剤および併用処理)による抑制効果は2か月以上経過すると減弱し、消失してしまうことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に予定していた全ての解析が順調に終了したため。具体的には、エピガロカテキンガラートが結合するがん悪性化関連標的分子群を明らかにできた。 加えて、分子標的薬に対する耐性化の連鎖をアピゲニンとエピガロカテキンガラートが抑止できる機序を明らかにした。さらに、アピゲニンとエピガロカテキンガラートによる標的分子群の活性化抑制効果が長期間持続することを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度ではアピゲニンとエピガロカテキンガラートによる標的分子群の活性化抑制効果が長期間持続し、分子標的薬併用よりも優れていることを明らかにした。しかしながら、その抑制期間にも限界があり、大腸がん細胞がアピゲニンおよびエピガロカテキンガラートに対して抵抗性を獲得することも同時に判明した。そこで今後は、アピゲニンおよびエピガロカテキンガラートに対してどのように抵抗性が獲得されてしまうのかについて、これら2つのフラボノイドの標的分子群との相互作用特性の変化を中心に解析を行い、抵抗性獲得の分子メカニズムを明らかにする。さらに、解明したメカニズムに基づき、これらフラボノイドに対する抵抗性を解除できる方法を探索する。加えて、大腸がん細胞に抵抗性を獲得させない新たなフラボノイド化合物の同定を目指す。
|
Research Products
(4 results)