2019 Fiscal Year Annual Research Report
アンモニアによる腸管恒常性の破綻機序の解明ー異常エピジェネティクス制御に着目して
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19H04052
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 卓弥 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (30526695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 亮 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (70443926)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アンモニア / 腸管バリア / タイトジャンクション / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト腸管上皮Caco-2細胞にアンモニアを作用させたところ、タイトジャンクション(TJ)バリア機能の指標となる経上皮電気抵抗値(TER)が濃度依存的に低下し、TJバリアの損傷が確認された。Caco-2細胞から細胞膜画分を調製し、ウエスタンブロット法にてTJタンパク質発現を解析したところ、アンモニアによりZO-1、ZO-2、Occludin、Claudin-1、Claudin-3の発現量が低下した。また蛍光免疫染色においても、アンモニアがTJ構造からのZO-1、Occludin、Claudin-1、Claudin-3を減少させること観察された。アポトーシス阻害剤などを組み合わせた試験により、これらのTJバリア損傷には細胞死が関わらないことも示された。続いて、過去の研究において、アンモニアが神経細胞のミトコンドリア障害を引き起こすことが報告されていたため、TJバリア損傷へのミトコンドリア機能の関与を調べた。その結果、アンモニアを作用させたCaco-2では、細胞内ATP濃度とミトコンドリア活性が約30%低下していた。最後に、抗酸化剤であるN-acetyl-L-cysteineを組み合わせて試験したところ、N-acetyl-L-cysteineはアンモニアが引き起こすTERの低下を抑制した。さらにアンモニアを作用させた細胞では、細胞内レドックス制御に重要なグルタチオンレダクターゼとグルタチオンペルオキシダーゼの発現が増加することがDNAマイクロアレイ法により示された。一連の試験により、アンモニアは腸管上皮TJ構造を損傷して腸管バリア機能を低下させること、その作用にはミトコンドリア機能障害と細胞内レドックス制御異常が関わることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンモニアによる腸管バリア損傷のメカニズムの一部を解明でき、研究の進捗は順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究により、アンモニアによる腸管バリア損傷は、細胞内のレドックス状態を変化させたり、ミトコンドリア活性を低下させることが部分的に関わることも明らかになった。今後の研究では、アンモニアによる腸管上皮細胞のメタボロームへの影響、アンモニアの蓄積に関わる腸内細菌叢の特定、アンモニアの作用を軽減する食品素材の探索を進める。
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