2019 Fiscal Year Annual Research Report
無線LANを用いた車載APの広域被覆配置による広域高速大容量通信
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19H04093
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村瀬 勉 名古屋大学, 情報基盤センター, 教授 (10530941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩田 茂雄 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (70334167)
甲藤 二郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70318765)
金井 謙治 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (40732160)
小畑 博靖 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (30364110)
計 宇生 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 教授 (80225333)
策力 木格 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90596230)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無線LAN / ミリ波通信 / スループット / 車両AP / 移動AP / 802.11ad |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の3つの研究テーマを実施した。 ■研究テーマ1: 車の移動制御・最適ルート誘導制御においては、(a)目的地に向かう車両の最短経路ではなく、需要のある場所への迂回ルートをとったときの、得失を評価する。■成果:車両が移動する経路を2.5倍居ないに納めるという条件のもと、最適なルート制御を行うことで、最短経路の場合よりも、スループットを280%(=約4倍)向上させることができる、という結果を得た。これにより、車両のルート制御をうまく行うことで、所望のスループットを得るという当初の目的が概ね達成できる見込みとなった。 ■研究テーマ2: 干渉緩和技術・最適AP選択技術においては、(d) APへの接続可否制御、APへの負荷分散制御を提案する。■成果: 移動するAPに連続して接続するための基礎検討を行った。IEEE802.11adのミリ波通信においては、移動する車との通信は、非常に短時間に高速で情報を転送する必要があることがわかった。そのため、現在普及しているIEEE802.11acなどの帯域では、混信(干渉)が大きすぎ実用が困難であることがわかった。一方、11adを用いる本研究の方法では、干渉や混信の影響よりもハンドオーバの制御方法で性能が決まることが判明し、ハンドオーバの最適化方法として、ビーコン送出間隔の調整と、ハンドオーバタイミングを決定する技術を開発した。 ■研究テーマ3: 高速短時間通信技術においては、(g)IEEE802.11adのミリ波通信方法の移動通信における性能を評価する。■成果:車内のアクセスポイントと車外の歩行者のスマホとで通信するモデルにおいて、ミリ波通信は、車両のボディが障害物とある影響で性能が大きく変わってくることが明らかになった。特に金属ボディでの減衰は極めて大きく、逆に、ガラスを通した場合には、それほどでも無いことなどを定量的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の(a)において、需要のある場所への迂回ルートに関する最適化手法において、計算コストと精度の両方で優れているgreedyアルゴリズムを提案し、その効果を評価した。これらの成果は、IEEEの国際学会などにて発表し、聴講の研究者らとさらなる検討を深めた。国際会議2件、その他5件の発表・掲載を行った。 前述の(d)においては、APのハンドオーバにおける最適AP選択のための、ビーコン送信間隔制御、コンテンション制御、伝送レート最適制御などの制御を開発し、IEEEの国際会議などにて発表し、聴講の研究者らとさらなる検討を深めた。ジャーナル論文6件、国際会議10件、その他14件の発表・掲載を行った。 前述の(g)においては、IEEE802.11adのミリ波通信方法の性能を、車内のアクセスポイントと車外の歩行者のスマホとで通信するモデルにて、実験を行った。移動する車との通信実験は、計算機シミュレーションにて行い、車の車体や窓ガラスなどが、ミリ波通信に及ぼす影響については、実車を用いて計測した。それらの結果を、IEEE国際会議などにて、発表した。また、セルラー系である5Gを用いた移動APと比較するための性能評価を行った。ジャーナル論文2件、国際会議3件、その他3件の発表・掲載を行った。 上記の成果により、基礎検討レベルではあるが、移動・ルート制御と最適AP選択技術とミリ波通信の特性を活かした制御を組み合わせることで、IEEE802.11技術の無線LANを用いた車載APの広域被覆配置による広域高速大容量通信を実現するという当初の目的が概ね達成できる見込みとなった。 (a)(d)(g)は、研究テーマ当初の予定通り進んだと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた 研究テーマ(a)(d)(g)は、所望の結果を得られたため、2020年度は、計画通り、以下の3つのテーマに取り組む。 1. 車の移動制御・最適ルート誘導制御においては、(b)需要に応じたAPの必要台数(車の流量)を明らかにする。車の速度が均一であるといった、簡単化したモデルを用いる。2. 干渉緩和技術・最適AP選択技術においては、 (e) 複数のAPによる干渉が品質に及ぼす影響および、提案方法でどの程度の干渉を緩和でき、通信品質を改善できるかを評価する。3. 高速短時間通信技術においては、引き続き(g)近距離高速バースト通信の可能性を評価するために、通信時間と通信可能データ量の関係を明らかにする。
なお、当初の予定で想定外であった新型コロナ禍のため、実機実験の比率を低下させ、その代わりに解析手法での検討を強化する。解析手法の強化のため、ネットワークモデルの解析に強い芝浦工業大学 宮田純子准教授を新たに分担者に加える。
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