2020 Fiscal Year Annual Research Report
ブロックチェーンを基盤とする高信頼性を持った自律分散型監視技術
Project/Area Number |
19H04107
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
面 和成 筑波大学, システム情報系, 准教授 (50417507)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江村 恵太 国立研究開発法人情報通信研究機構, サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室, 主任研究員 (30597018)
吉岡 克成 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (60415841)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ブロックチェーン / スマートコントラクト / トークン / サイバー攻撃対策技術 / 暗号技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,暗号資産ネットワークを含む,より一般的なブロックチェーンを基盤とした自律分散型ネットワークにおいて,善良なユーザを保護するとともに,悪意あるユーザを監視できるセキュリティ技術について研究開発を行う.より具体的には,トークンを用いた自律分散型の監視手法を提案するとともに,サイバー攻撃対策と暗号理論の両面で支えられるトークンの高信頼性を確保する.2020年度は,(1)トークン利用型監視技術,(2)サイバー攻撃対策技術,及び(3)高機能暗号技術についての研究成果がそれぞれ得られた. (1)については,ブロックチェーンの監視技術の基礎的研究として,ブロックチェーンにおいてユーザアドレスに信頼性を付与する方式を提案し,BitcoinやEthereumといった主要な暗号資産で実証評価を行った.この主要な研究成果は査読付き国際会議BCCA2020(2020年11月に発表)に採録された.その他関連研究としては,査読付き国際会議論文4本,国内研究会発表8本,及びCSS2020学生論文賞受賞の実績があった. (2)については,Ethereumクライアントに対するサイバー攻撃を観測するハニーポットを提案,実装し,実暗号資産がやり取りされるメインネットにおいてサイバー攻撃の観測を行った.その結果,暗号通貨を盗取するための攻撃通信やクライアントのリソースを盗用して仮想通貨の発掘処理を実行するといった多数の不正な通信を観測した. (3)については,安全性を強化した匿名トークン付与手法の様々な暗号資産への適用可否を検討し, 国内研究会ISECで発表を行うとともに英語版を作成,プレプリントを公開するとともに国際会議への投稿を進めた.また中核技術であるアカウンタブルリング署名の他のブロックチェーンシステムの応用として, プライバシー保護集金システムを開発し,国内会議SCISにて発表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)トークン利用型監視技術,(2)サイバー攻撃対策技術,及び(3)高機能暗号技術について,それぞれの進捗状況は下記である. (1)については,トークン利用型監視技術の基礎的研究として,暗号資産自体をトークンと見立てて信頼できるアドレスや不審なアドレスにトークンを付与する方式を提案し,査読付国際会議論文として採録されている.また,トークン利用型監視技術に関連して,(2)及び(3)との連携を強化している.(2)との連携に向けてはサイバー攻撃対策用のハニーポット構築に関する研究成果が出ており,(3)との連携においては高度暗号技術とスマートコントラクトを用いた安全な電子商取引の方式を検討しており,どちらも査読付国際会議論文及び国内研究会で発表済みである. (2)については,実際のEthereumクライアントをハニーポットとして用いるにあたり,不正に利用されることを防いだり,ハニーポットが有する暗号資産の残高の数値を操作するためのゲートウェイを有する新たなハニーポットの手法を提案した.ハニーポットクライアントの応答を操作することで攻撃者の興味を惹きつけ,多様な攻撃が観測できることを示した.この成果は,2021年6月の国内研究会で発表予定である. (3)については,安全性を強化した匿名トークン付与手法の様々な暗号資産への適用可否として,Bitcoin,Ethereum,NEMについての実現可否を検証した.さらに暗号的コミットメント方式を利用したトークンの失効についても検討を行い,国内会議で発表するとともに国際会議投稿準備を進めた.また中核技術であるアカウンタブルリング署名とスマートコントラクトを用いたプライバシー保護集金システムを開発, 国内会議SCISにて発表した. 以上により,現在までの進捗状況の区分において「おおむね順調に進展している」という自己評価を行った.
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)トークン利用型監視技術(筑波大),(2)サイバー攻撃対策技術(横国大),及び(3)高機能暗号技術(NICT)について,それぞれの今後の研究推進方策を記載する. (1)については,「現在までの進捗状況」でも述べたとおり,トークンを用いた監視手法の構築・検証に向けて,2020年度は善良なユーザを保護するためのトークン付与に関する手法を確立した.2021年度は,この手法を拡張してスマートコントラクトと連携させることで,トークンを用いた自動監視手法の提案・評価を実施する.また,トークンを用いた監視手法の対象をIoT機器へも展開する.さらに,ブロックチェーンにおけるトークン及び監視手法の安全性・可能性を探るために,暗号資産ブロックチェーンの安全性解析も引き続き実施する. (2)については,昨年度までに開発したEthereumクライアントハニーポットの運用を続ける.これまで実施した簡易分析では,従来報告されていない不正な活動が観測されている兆候があるため,観測結果の詳細分析とインパクトの調査を行う. (3)については,匿名トークン付与手法,プライバシー保護集金システム共に国際会議や国際ジャーナルへの採録を目標とする.
|