Development of a method for measuring a spectral BRDF at high spatio-temporal resolution

2019 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 19H04143
• Research Institution: Osaka Electro-Communication University
• Principal Investigator: 来海 暁 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (30312987)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 土居 元紀 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (00304155) ; 西 省吾 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (70411478)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 時間相関カメラ / BRDF / 分光画像 / 球面調和関数 / フーリエ係数

Outline of Annual Research Achievements

本研究課題は，物体表面上の1点における光の反射特性を記述するBRDF（bidirectional reflectance distribution function，双方向反射率分布関数）を分光的にかつ高い時間分解能で計測することを目的とする．計測系は時間相関カメラ，波長可変光源，プロジェクタ光学系，および楕円鏡により構築し，楕円鏡の焦点位置に置かれた計測対象物体に正弦波で時間変調した照明光を全方向から同時に入射する．その反射光の空間分布を楕円鏡を介して時間相関カメラで撮像することにより，入射方向は球面調和関数，波長軸はフーリエ基底でそれぞれ展開した分光BRDFの係数を1フレーム画像として取得する．それに基づく今年度の研究実績は以下の通りである．ただし，時間相関カメラとプロジェクタ用モジュールは本研究費で購入したが，楕円鏡は年度内には使用できる状態には至らなかったため，今年度の学会発表による研究実績はない．
１）分光BRDF計測の理論を構築し，プロジェクタによる入射光強度分布の時間変調および波長可変光源の時間変調の組み合わせと，時間相関カメラで検出可能な分光BRDF展開係数との関係を導いた．また，楕円鏡の形状と照明光学系を設計するための指針を明らかにした．
２）実際に楕円鏡を設計し，申請者の所属機関が所有する金属光造形複合加工機を用いて，ステンレス粉末から楕円鏡の形状の物体を成型した．
３）本研究費で購入したプロジェクタ用モジュールにおいて，照明光を楕円鏡に入射したときに強度分布が正弦波で時間変調された球面調和関数になるような制御方式を実現した．プロジェクタ用モジュールの動作周波数と照明光の階調数との間にはトレードオフが存在する一方，時間相関カメラは高い時間相関検出精度を有していることから，動作周波数を高く維持したときに許容できる階調数を検討した．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

研究の遅れとは楕円鏡が年度内に完成できなかったことを指す．当初は年度内に楕円鏡を用いて計測実験を行う計画であったが，辛うじて楕円鏡が成型できた状態に留まっており，表面を研磨する作業が持ち越しとなった．楕円鏡は，当初は申請者の所属機関が所有する5軸マシニングセンタを用いてアルミニウムブロックを切削することにより作製を進めていた．しかし，切削の完了したアルミニウム製楕円鏡の表面の研磨に取り掛かったところ，材質が柔らかいためにうまく行かないことが判明し，代わりに金属光造形複合加工機を使用してステンレス製の楕円鏡を作製する方向を検討するに至った．また，授業期間中は5軸マシニングセンタや金属光造形複合加工機は授業での使用が優先されるために楕円鏡を作製するための予約が難航し，実際に作製作業が開始できるまでに日数を要した．さらに，楕円鏡の作製中に発注したプロジェクタ用モジュールが納品されたが，波長可変光源の照明光をモジュールに入射する角度を確認したところ照明光学系の当初の設計とは合わないことが判明した．そこで，楕円鏡を再設計して作製し直す必要が生じ，これも進捗が遅れる要因となった．

Strategy for Future Research Activity

今年度の研究は以下のように推進する．
１）昨年度作製した楕円鏡の表面を研磨し，点光源照明の焦点への集光特性により性能を評価する．楕円面は球面と異なり曲率が一定でないため，研磨は困難が予想されるが，手作業により慎重に行う．研磨後の表面形状が不十分である場合は再度楕円鏡を作製する．
２）研磨した楕円鏡，およびプロジェクタ用モジュールと時間相関カメラを用いて計測光学系を構築し，球面調和関数によるBRDFの展開係数を計測する実験を行う．時間相関カメラの各画素では，直流成分および正弦波強度変調の振幅・位相成分が1フレームで取得でき，さらに2x2画素を1単位として4通りの異なる正弦波変調成分が同時に検出できる．よって展開係数のうち2個を対として正弦波で強度変調することにより，1台の時間相関カメラで最大8個までの展開係数が1フレームで計測できる．各次数の球面調和関数成分はそれぞれ異なる周波数の正弦波で強度変調しつつ多重化し，その全変調波形を用いてプロジェクタ用モジュールを駆動することにより，計測対象物体への照明光パターンを生成する．この照明光パターンに対し，完全拡散反射あるいは完全鏡面反射に近い物体を用いてBRDFの展開係数が正しく計測できるかを評価する．
３）構築した計測光学系に波長可変光源を導入し，球面調和関数によるBRDFの展開係数を分光的に計測する．照明光自身を正弦波で強度変調することにより，BRDF展開係数の波長ごとの分布波形に対するフーリエ係数が計測できる．計測対象物体への入射光は光源とプロジェクタ用モジュールそれぞれの正弦波強度変調の積として変調され，時間相関カメラに適当な周波数の参照信号を入力するとそれに対応する次数の分光BRDF展開係数が抽出される．この原理が正しく実現されているかを実験により検証する．