2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Problem-solving by Organizing Humans and Machines
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19H04170
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松原 繁夫 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (80396118)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マルチエージェントシステム / 集合知 / インセンティブ設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
予測多様性維持法に関しては、逐次クラウドソーシングにおける効率的なタスク分割法を提案した。経済指標予測などの複雑な予測タスクは、複数サブタスクに分割することで、予測者の募集が容易となる。データ収集、予測モデル構築、予測モデル検証といった形態の分割を垂直分割と呼び、品質面で先行サブタスクと後続サブタスクに依存関係が存在する。この垂直分割の効率性に関する議論は、これまでは実験的なものが主で、理論的分析が不十分であった。この問題を解決するため、本研究では、タスク依存度を定義し、戦略的行動に関する数学的分析とシミュレーションを組み合わせることで効率性に関する分析を行った。その結果、垂直分割を行う場合、サブタスクを凹型配置する(難易度に関して最初のタスクを高く、中間タスクを低く、最終タスクを中程度とする)ことで、最終成果物の品質を高くできることを明らかにした。本成果は、英文論文誌Chinese Journal of Electronicsに採録が決定している。 予測多様性拡大法に関しては、誘因両立性を考慮した情報推薦システムに対して、環境変動が与える影響を分析した。予測には基礎情報の収集が重要である。コミュニティ志向情報推薦システムは情報推薦と情報収集を同時に行うもので、有望な情報収集手段である。これまで、誘因両立な情報推薦の研究は存在するが、環境変動の影響は十分に検討されていなかった。本研究では、数学的解析により情報収集の遅延がどのように生じるかを明らかにした。本成果を国内学会で発表した。 平均個人誤差削減法に関しては、アイデア生成タスクを対象に、作業指示の与え方が、タスク品質に与える影響を分析した。本成果を国内学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1.予測多様性維持法の考案、2.予測多様性拡大法の考案、3.平均個人誤差削減法の考案という3つの研究項目から構成され、順に初年度、二年目、三年目に取り組む計画である。予測多様性維持法に関しては、当初は予測者集団の選択に着目していたが、十分な大きさの予測者プールを前提にすることは困難な場合が多い。そこで、限られた予測者集団を効率的に活用するという方針に変更し、タスク分割問題に取り組むことにした。そこでは、予測における独立性の喪失は、品質改善への貢献が小さいサブタスクへの人の割当てと解釈できる。この考えのもと、効率的なタスク分割法を提案し、その成果は英文論文誌への採録が決定している。以上の点から、項目1については、当初の目標を達成したと考える。 予測多様性拡大法については、情報収集過程に着目し、コミュニティ志向情報推薦システムを対象として、誘因両立性と動的環境の関係について分析を行った。環境変動の確率が微小でも存在すると、一部の選択肢しか検査されなくなる可能性が生じること、一方、環境変動の確率が十分大きくなると、情報収集に要する時間はわずかに増えるが、すべての選択肢の検査が行われることを明らかにした。現時点で得られた結果は、環境変動の程度に応じた最適インセンティブ設計の基礎となるものであり、項目2に関しても順調に進捗していると言える。 平均個人誤差削減法に関しては、3年目に着手する計画であったが、前倒しで検討を開始した。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
予測多様性維持法に関しては、Mechanical Turkを用いた実験も実施して提案法を評価しており、方式提案という点では当初の目標を十分に達成している。 予測多様性拡大法については、動的環境による影響の分析までは完了しているが、その分析を基礎としたインセンティブ設計法の考案が課題として残っている。システム設計者の行動が情報収集対象の推薦に限定される場合、情報収集の迅速化には限界がある。そこで、システム設計者がインセンティブを参加者に与えるという、より能動的な行動を含めて考える。システム設計者が有限の予算を有すると仮定し、どの時点でどの予測者にインセンティブを配分するかという予算配分問題として定式化し、その解法を比較検討する。 平均個人誤差削減法に関しては、アイデア生成過程を対象とし分析を行った。アイデア市場は予測市場の重要な応用対象の一つである。これまでは、複数のアイデアがあるときに、有望なアイデアを選択する選択過程に着目した研究が多かった。本研究の特徴は、アイデア生成過程を含めて考察する点にある。現在得られた結果は、タスク指示の影響を分析した段階であり、今後、人の振る舞いのモデル化、および、個人誤差の削減法の考案へと発展させる。
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Research Products
(4 results)