2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Problem-solving by Organizing Humans and Machines
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19H04170
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松原 繁夫 大阪大学, 数理・データ科学教育研究センター, 特任教授(常勤) (80396118)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マルチエージェントシステム / 集合知 / インセンティブ設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
予測多様性維持法に関しては、既に逐次クラウドソーシングにおける効率的なタスク分割法を提案しているところであるが、これをさらに発展させ、中間成果物の品質認識の不確実性を考慮した適応的予算配分法を提案した。品質評価行動を導入し、部分観測マルコフ決定過程として問題を定式化することでワークフローを制御する。計算機シミュレーションを用いた評価により、ワーカのスキル分布が一様で、タスク難易度が最初は高く、最後は低くなる場合に品質改善効果が最大となることを発見した。本成果は、クラウドソーシングに関する国際ワークショップで採録され発表した。 予測多様性拡大法に関しては、参加者間の契約に基づく分散制御法を提案した。本研究では人と機械の組織形成の考え方を物理空間上の制約を含む対象へ展開することを念頭に、カーシェアリングを題材として選択した。乗車希望者は、自己の周囲に利用できる車がない場合、運転中利用者に対価を支払うことで降車地点の変更を依頼する。このような契約を導入することで選択の多様性を拡大する。利用する車の決定と当該運転中利用者への支払い額の決定にはVCGオークションを用いる。さらには、物理空間上の車両の偏りを軽減するために再配置価値を定義し、その計算法を提示した。計算機シミュレーションを用いた評価により、提案法が6ケース中5ケースにおいて、ベースライン手法より高いサービス提供水準を達成することを、また、すべてのケースにおいて、ベースライン手法より高い社会的効用を達成することを確認した。本成果は人工知能に関する最難関会議の一つであるAAAI2021に採録され発表した。また、さらに拡張した内容をエージェントに関する国際会議ICA2021で発表し、Best paper awardを受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1.予測多様性維持法の考案、2.予測多様性拡大法の考案、3.平均個人誤差削減法の考案という3つの研究項目から構成され、順に初年度、二年目、三年目に取り組む計画である。 予測多様性維持法に関しては、初年度に効率的なタスク分割法を提案し、その成果が英文論文誌に採録決定されるなど、当初の目標を達成していた。二年目である本年はさらに各サブタスクへの予算配分に考察対象を拡大し、逐次クラウドソーシングにおける効率的な予算配分法を提案し、発表したた。以上より、項目1に関しては、当初の目標を上回る成果が得られていると考える。 予測多様性拡大法については、カーシェアリングを題材に組織形成法を検討する方針を立て研究を遂行した。これまで人と機械の組織構成として扱ってきた題材は物理空間上の制約がないものであった。しかし、サイバー空間と物理空間の融合という点で、組織形成に関しても物理空間上の制約の取り扱い方を明らかにすることが望ましい。そこで、参加者の空間上の移動を含めた物理制約を含むカーシェアリングを組織形成の問題として定式化し、契約に基づく分散制御法を提案した。これは、マルチエージェントシステム研究における契約ネットプロトコルを発展させた内容となっている。その成果は人工知能に関する最難関会議の一つAAAI2021に採録され、また、さらに拡張した方法がエージェントに関する国際会議ICA2021でBest paper awardを受賞するなど高い評価を受けている。以上の点から、項目2についても、当初の目標を上回る成果を得たと考える。 平均個人誤差削減法に関しては、前倒しで検討を開始しており、基本的な着想を得るに至っている。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
予測多様性維持法に関しては、Mechanical Turkを用いた実験も実施して提案法を評価しており、方式提案という点では当初の目標を十分に達成している。 予測多様性拡大法については、一人の乗車希望者が複数の運転中利用者と交渉し契約を結ぶという1対多の関係を扱っている。これを多対多の関係に拡張することで、さらなる全体品質の改善に取り組む。具体的にはオークションに代わり、マッチング手法を用いる。乗車希望者と運転中利用者双方の選好を考慮して、安定なマッチングを発見する。マッチングアルゴリズムの実行タイミングに関して、理論的分析とシミュレーションによる評価を行い、最適な実行タイミングを明らかにする。本課題は、人と機械の組織形成に、空間的制約および時間的制約を取り込む方法を明らかにすることに結びつく。 平均個人誤差削減法に関しては、クラウドソーシング場面において人に適切な質問をすることでタスク割当てを決定する方法を検討する。多くの質問をすれば誤差をより削減するような割当てが可能となるが、人にとってそのような回答をすることは負荷となる。よって、回答負荷の削減と効率的な割当ての両立が必要となる。この方針のもとで個人誤差の削減法の考案へと発展させる。
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Research Products
(4 results)