2020 Fiscal Year Annual Research Report
磁気薬学の創発に向けた高精度な局所脳刺激法の開発:スパースモデリング法の応用展開
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19H04178
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
舘野 高 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (00314401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神保 泰彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20372401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 磁気刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,低侵襲的に中枢神経系を外部から磁気刺激して,体内臓器や末梢系効果器に神経信号を正確に送信し,脳疾患の治療や体内合成物質を効果的に放出させる新技術の開発を目指している.本報告の期間内には,脳刺激に用いるコイルの電磁気的な特性を理解するために,まず,並列計算機を用いて物理的な構造に基づいたコイルの数値シミュレーションを詳細に行った.そのコイルと小動物の頭蓋骨と脳の混成モデルを構築し,同様にシミュレーションを実施した.そして,そのシミュレーション結果に基づき,サブミリサイズ,および,ミリサイズのコイルを独自に製作した.さらに,磁気センサを用いて,そのコイルの磁気特性を計測し,シミュレーションとの大凡の一致を確認した. 次に,効率的に磁気刺激を行うために,物理的な刺激パラメータの探索を広範囲に行った.その刺激条件に基づき,齧歯類の動物を用いて電気生理学的実験を実施することで,実際の磁気刺激を使って脳活動の誘発が可能かについて検証した.その結果,試作したコイルによって,齧歯類の大脳皮質神経細胞の活動を誘発できることが判明した. さらに,予備実験として,神経の可塑性を誘発する実験条件を探索し,時間的な繰り返し構造をもつパルス列を用いて脳活動の誘発実験を行い,可塑性誘発に適切な条件をもつ刺激パターンの候補を複数に絞り込むことができた. これらの結果から,本研究の実施期間において,小型のコイルを用いて中枢神経系の神経活動を効率的に誘発する基盤技術を開発することができたと考えている.実施期間に得た結果は,国内学会で発表すると共に,学会論文誌に報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,令和2年9月までに,事前準備,生物資料の準備,計測用装置の設置等を行い,令和3年3月までに,神経活動計測のための予備実験の実施,神経活動計測のための本実験の実施,および,成果の取りまとめを行う予定であった.しかし,神経活動測定の実験に用いる予定であった計測装置の一部が不測の故障により,その計測装置を設置して実験を開始することが困難になった.代替計測装置の利用を検討したが,その代替装置では,本研究計画の目的を達成することができないことが判明したため,故障した計測装置を修理した後に実験を再開することにした.これにより,計測装置の修理完了見込みの令和2年11月から初期設定および設置を行い,神経活動計測に関する予備実験および本実験を延長して実施する必要が生じた.また,神経活動の測定実験に使用している計測装置の修理に約3ヶ月間以上の期間を要した.結果的に本報告の実施期間は,令和2年12月~令和3年7月末の8ヶ月となり,この延長によって研究実施計画案の各項目を概ね達成することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は,次年度が研究計画の最終年度である.今期間に試作したマイクロサイズの挿入型コイルやミリサイズの多配列型コイルを用いて,モデル動物の生体脳に対し,神経活動の誘発や可塑性の誘導の詳細条件の検討と刺激方法の最終的な評価を行う.また,磁気刺激によって可塑性が誘発された場合には,薬理的な阻害剤や促進剤を利用して,脳内の応答変化を急性および慢性的に観察し,その可塑性誘発の神経機序を調べる.本課題で得られた一連の研究結果について内容を整理してまとめ,国内外の会議で発表すると共に,論文誌に投稿する予定である.
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Research Products
(5 results)