2019 Fiscal Year Annual Research Report
Glycolytic oscillations and their synchronization in cancer cells and astrocytes
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19H04205
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
雨宮 隆 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60344149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 聡 広島大学, 理学研究科, 教授 (50217741)
山口 智彦 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特任教授 (70358232)
渡邉 昌俊 三重大学, 医学系研究科, 教授 (90273383)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん細胞 / アストロサイト / 解糖系 / 糖代謝 / 解糖系振動 / 同期現象 / 生物学的振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)各種がん細胞の解糖系振動と同期現象の解明 これまでにヒト子宮頸がんHeLa細胞をモデル細胞として解糖系振動と同期現象の実験ならびに解析を行ってきた。そこで本研究では,ほかのがん細胞においても解糖系振動が観察されるのか,また,同期現象の特徴はHeLa細胞とは異なるのかを明らかにすることを目的とした。先ずは,がんの中でも比較的悪性度が低いと言われている前立腺がんをコントロールとして,DU145細胞株を用いて研究を進めた。DU14細胞は解糖系振動を起こす細胞の割合が0.25(N=650)とHeLa細胞のそれ(0.36)に比べて低かった。また,細胞間の振動同期はHeLa細胞と同様に見られなかった。前立腺がんはがん細胞の特徴である解糖系の亢進(Warburg効果)があまり見られない細胞であるので,その特徴が振動割合にあらわれたと考えられる。また,細胞間の同期率が低かったのは,一般にがん細胞の特徴である細胞間の不均一性と自律性のあらわれと思われる。 (2)アストロサイトの解糖系振動と同期の解明 生物学的には全く異なるにも関わらず,がん細胞と同様に解糖系を亢進することが知られているアストロサイトを対象として解糖系振動の実験を開始した。細胞株としてラットのアストロサイト単培養系を用いた。これまでに,安定してこのアストロサイトを培養することができており,5日程度で2.8x10^5 cells/mlから1.4x10^6 cells/mlまで増殖することを確認した。また,1細胞レベルの解糖系振動の予備的な実験を始めた。今のところ,解糖系振動は観察されていない。今後,以下に述べるように,細胞が解糖系振動を起こすのに必要な飢餓条件,細胞外液のpH条件,さらに,アストロサイトとニューロンの共培養系について実験を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)各種がん細胞の解糖系振動と同期現象の解明 既に結果が得られているヒト子宮頸がんHeLa細胞以外の各種がん細胞を用いて,解糖系振動の実験を行う予定であったが,今のところ,前立腺がんDU145細胞のみの結果しか得られていない。解糖系振動はグルコースの取り込み速度が高いほど起こり易いことを文献調査と数理モデル解析から得ていたので,グルコースの取り込みに関わるグルコーストランスポーター1(GLUT1)が発達しているがん細胞を調べ,研究対象候補の一つとして乳がん由来のMCF7株を見い出し,この細胞について解糖系振動の実験を行ったが,今のところ振動結果を得ることができていない。この細胞を使った実験に時間を要しているため,各種がん細胞の解糖系振動に関する研究が思うほど進んでいない。 (2)アストロサイトの解糖系振動と同期の解明 当研究室でアストロサイトを扱うのは初めてであったので,まずは,培養条件の設定と安定して増殖する条件を確立するまでに時間を要した。その後,がん細胞の結果を元に,解糖系振動を起こすために必要なグルコース飢餓条件などについて検討を行ってきたが,今のところ振動を得ることはできず,時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)各種がん細胞の解糖系振動と同期現象の解明 これまでのHeLa細胞とDU145細胞の研究で,コントロール細胞の実験は完了したので,来年度は,検討を続けている乳がんのMCF7細胞株の実験を継続するとともに,肺がんや膵臓がんのようなより悪性度の高いがんの細胞株を用いた実験を予定している。研究の推進方策としては,グルコースの取り込み速度が高いほど,また,グルコース飢餓による解糖系酵素活性を落とすことで解糖系振動が起こり易いことをHeLa細胞とDU145細胞の研究から明らかにしているので,グルコーストランスポーターの活性と飢餓条件の検討を行っていく。さらに,元来解糖系を亢進し易いがん細胞は解糖系振動をより起こしやすいことを今までの研究から予測しているので,解糖系を亢進し易いがん細胞株に着目しつつ研究を進める。最終的に,各種がん細胞の解糖系振動の特徴を明らかにし,解糖系振動と同期現象を指標とした,がんの悪性度の評価につがる研究を行う。 (2)アストロサイトの解糖系振動と同期の解明 ラット由来のアストロサイト単培養系においては,今のところ解糖系振動が得られていない。がん細胞との代謝類似性に基づきHeLa細胞で得られている各種飢餓条件について検討を加えるとともに,アストロサイトに特有の代謝特性についても着目していく。すなわち,脳内でアストロサイトはニューロンからの刺激を受け活性化し解糖系を亢進するので,それを模した条件の検討を行う。例えば,ニューロンからグルタミン酸やカリウムイオンを介した刺激を受けるので,アストロサイトの解糖系が亢進することを期待して人為的にそのような刺激条件を設定し,解糖系振動が起こるかどうかを調べる。さらに,ニューロンとアストロサイト共培養系についても実験を開始する。
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Research Products
(11 results)