2021 Fiscal Year Annual Research Report
Technology development and application for cell surface visual proteomics
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19H04209
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
諏訪 牧子 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30242241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 主税 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (00357146)
池田 修己 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (20415772)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ビジュアルプロテオミクス / 膜タンパク質立体構造 / 電子顕微鏡画像 / 深層学習 / 骨格筋小胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
電顕画像上の膜表面のタンパク質の種類を推定し、全体の働きを推定するために、3つの課題、【課題1】全膜タンパク質構造・機能統合DBの構築、【課題2】二次元画像からの膜タンパク質の機能推定アルゴリズム開発、【課題3】細胞表面膜タンパク質電顕画像の機能アノテーションに取り組んできたが、本年度は【課題3】を行った。ここでは課題1、2で開発した技術を改良しつつ、実際の骨格筋由来の小胞体に応用し、タンパク質集団の構造変化を解明することを目指した。骨格筋由来の小胞体は、筋肉収縮に関わる装置である。膜管構造から単離した筋小胞体の電顕写真には膜タンパク質のCaポンプが規則的に配置するStick形態、規則的/不規則的な配置が混在したTadpole形態、主に不規則な配置のOthers形態が観測される。そのため、単離した筋小胞体形態の出現頻度と存在環境のCa濃度の関係調査がCaポンプの相互作用変化、ひいては筋収縮機構の解明につながる可能性がある。本研究では、様々な物体が写る多数枚の電顕画像から3形態の小胞のみを深層学習法(CNN法)により自動検出させた。 産総研にてホタテの骨格筋を単離した小胞を多数撮影し、さらに回転加工でデータ数を拡張させた。得られた7050枚の画像で、深層学習ツール(YOLO)に学習させた結果、昨年度1830枚で行った際の平均適合率(mAP=59.16%)と比較し大幅に向上(72.83%)した。この深層学習モデルを基に各形態の出現頻度を算出すると、Ca濃度増加に従いStick/ Tadpole形態が減少し、Others形態が増加していた。この結果は、生物学的に見て非常に興味深い。また、電顕写真の学習セットを増やすことで判別精度を大幅に向上できたことは大きな意義があり、今後さらに学習セットを増やせば、生物学的現象の発見をさらに高精度化した深層学習に任せられることを意味する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画は、【課題3】に取り組むことであった。課題3は、これまでに開発した画像照合プログラムを基にして全膜タンパク質統合データベースとシームレスに連携して動作するWEBシステムを構築して、細胞表面の膜タンパク質に機能情報を与える可能性を検証するという内容である。この内容を今年度、来年度の2年間かけて遂行する計画になっている。 細胞表面の膜タンパク質の具体例として、当初の計画通り骨格筋由来の小胞体を選んだ。ホタテの骨格筋から単離した小胞体に対して電子顕微鏡画像を撮影し、さらに回転加工でデータ数を拡張させることで、深層学習の判別性能を格段に向上させることに成功したため、この深層学習モデルを用いることで、骨格筋由来小胞体の各形態(Stick形態, Tadpole形態, Others形態など)の出現頻度とCa濃度との相関性を算出することが出来た。この相関性は、既に私たちが多くの電子顕微鏡画像から予め目視により形態判別して見い出した非常に興味深い現象(令和3年度の研究成果として論文化済み)とよく一致していた。開発したツールはまだシームレスなシステムとしてまとめる前段階ではあるが、以上のように個別要素技術を高精度化することができたうえ、これら技術が細胞表面の膜タンパク質に機能情報を与える可能性を検証することができた。従って当初の計画通りに、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、課題3を行う。2021年度では、新たな電子顕微鏡写真を撮影したことに加え、回転加工画像など疑似画像を作成して学習セットを増量したことで、深層学習の予測精度が大幅に向上できた。このことを受け、2021年度に学習済みの深層学習モデルを用いる。また、課題1,2で開発した全膜タンパク質統合DBおよび、画像照合プログラムなどの個別技術を連携してシームレスに動作するWEBシステムを構築し、公開することを目指す。これを利用し、細胞表面の膜タンパク質の二次元電顕画像に対して、全膜タンパク質統合DBから立体構造投影画像を照合して、機能情報を提示できるようにする。対象として前年度に引き続きホタテの骨格筋を由来の小胞膜に注目する。骨格小胞膜周囲の環境(ATP濃度やCa濃度等)変化等に伴う小胞自体の形態変化の詳細を解析し、各形態(Stick形態、Tadpole形態、Others形態)の膜タンパク質(Caポンプ)の画像に、立体構造(PDBデータ)を埋め込み各形態ごとに複合体の構造を解明する。期間途中で生物学的に興味ある現象が見られれば随時論文化する。
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Research Products
(4 results)