2020 Fiscal Year Annual Research Report
VR身体を用いた全身運動における時空間的身体性変容メカニズムの解明と工学的応用
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19H04230
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
櫻井 翔 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特任助教 (70739523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広田 光一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80273332)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 身体性認知科学 / Virtual Embodiment / 対人認知 / 運動コミュニケーション / 全身インタラクション / アバタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,(B)VR身体の視覚的情報が時空間的身体性に与える影響の評価と,(C)VR身体の視覚的変形による運動コミュニケーション拡張手法の構築とモデル化の一部に取り組んだ. (B)については,オンライン条件(ユーザとVR身体の動作に時空間的連動がある場合)を中心に,VR身体の形状や位置・姿勢の動的な変化が身体性に及ぼす影響の評価を行なった.これまでに,腕や脚等,VR身体の一部のサイズを相対的に変えて見せた時,その部位によってVR身体に対する身体所有感・運動主体感の強度やサイズ知覚の正確性が異なることを示した.また,ユーザの運動に随伴して見た目の筋肉量が徐々に増えるVR身体を用いて全身運動を行う時,最初から筋肉質なVR身体を用いる時と比べて身体所有感・運動主体感の強度に差は生じない一方で,運動の満足感が向上することが示された. (C)については,まず遠隔にいる2人のユーザがVR身体を用いて同一のVR空間でツイスターを対戦できるシステム環境(VRツイスター)を構築した.そして,男性被験者を対象に,本システムを用いたツイスター対戦時に自身と対戦相手が用いるVR身体の外見(性差,写実性)がユーザの身体性や対人認知(他者に関して知覚可能な情報をもとに属性やパーソナリティ,思考等の内面的特性を推測する行為ないし機能のプロセス)に与える影響を検証した.本検証を通じ,物理的関係性(位置・距離等)および心理的関係性(力関係,好意・敵意,有利・不利等)を左右する対戦相手の印象,接近・接触時の情動,対戦相手への身体的配慮,ユーザ自身に対する対戦相手の対人認知の推測が対戦相手のVR身体の外見に基づいて変化することが明らかになった.加えて,ユーザ自身が用いるVR身体の外見も対人認知に作用する可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,まず(B)VR身体の視覚的情報が時空間的身体性に与える影響の評価について,VR身体の視覚的変形パターンとして,昨年度までに扱ってきた生物種,性差,体格等に加えて形状や位置,動作の動的な変化を検討し,その変形パターンから時空間的身体性に生じる影響について一定の知見を得ることができた.また,モーショントラッキング精度が低い場合に生じやすい酔いや不快感が運動コミュニケーションに悪影響を及ぼす恐れがあったことから,VR身体の視覚的変形手法とモーショントラッキング環境の精度を向上するよう改良した. (C)VR身体の視覚的変形による運動コミュニケーション拡張手法の構築とモデル化については,運動コミュニケーションシステム環境(VRツイスター)を構築・利用した検証を通じ,ユーザ自身と対戦相手が用いるVR身体の外見(性差と写実性)は相互に対人認知に作用する可能性と,対人認知の変化を通じてユーザ間の物理的・心理的関係性が大きく変わる可能性が示された.本計画立案時は,プロテウス効果(ユーザが操作するVR身体の外見がユーザ自身の心理や振る舞いに影響する現象)に基づく自己身体認識,動作スケール,対戦相手への心理的態度や運動評価の変化から運動コミュニケーションの拡張を図る計画であった.しかし,上記検証を通じ,提案手法の実現には運動コミュニケーションにおける対人認知の影響を考慮する必要があること,またユーザ自身が用いるVR身体の視覚的情報に基づいて対人認知に生じる影響を明らかにする必要があることが分かった.一方で,COVID-19の影響により想定していた被験者数を得られなかったことから,以上の検証を引き続き実施する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,引き続き(B)VR身体の視覚的情報が時空間的身体性に与える影響の評価と,(C)VR身体の視覚的変形による運動コミュニケーション拡張手法の構築とモデル化を推進する予定である.(B)については,VR身体の動的な視覚的変形に基づく身体性への影響について,より詳細な検証を行う.(C)については,(B)で得られた知見をもとに,各ユーザが用いるVR身体の視覚的操作を通じてユーザの身体性に生じる影響と,身体性の変化から運動コミュニケーション拡張の実現可能性を検証する計画であった.しかし,本年度に得られた知見を踏まえ,自身と対戦相手のVR身体の視覚的情報が対人認知とユーザ間の関係性に及ぼす相互影響の検証を優先的に実施する. その上で,自他のVR身体の視覚的情報に基づくユーザ自身の身体性,対人認知,ユーザ間の物理的・心理的関係性,VRツイスターの結果(運動成功率および勝敗)に生じる影響の検証と分析を行ない,本提案手法の実現とモデル化を図る.
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