2020 Fiscal Year Annual Research Report
海洋酸性化に対する海藻藻場生態系のエネルギーフローの応答
Project/Area Number |
19H04234
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
和田 茂樹 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60512720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 繭美 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (10512717)
AGOSTINI SYLVAIN 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20700107)
今 孝悦 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40626868)
佐藤 雄飛 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 研究員 (50708120)
BENJAMIN HARVEY 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70785542)
大森 裕子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80613497)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海洋酸性化 / エネルギーフロー / CO2シープ / 藻場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは、式根島CO2シープを利用して、海藻藻場のエネルギーフローに対する海洋酸性化の影響を評価する。光合成に関しては、係留プレートを利用した光合成測定やセンサーを係留した連続観測を行い、係留プレート法に関しては藻類の初期続成過程における群集変化とその光合成能の評価に適していることを見出した。一方で、センサーの係留では、鉛直方向の水塊の混合によって群集の光合成の測定が過小評価される可能性があり、定量性が十分では無いことが明らかとなった。そこで、生態系レベルで精度高く評価する手法として閉鎖式チャンバー法を重点的に実施し、予想された海洋酸性化の施肥効果は十分に生じないことを明らかにした。これは、高CO2環境下でエネルギーフローが増大する可能性を否定するものであり、海洋酸性化に対する藻場生態系の緩衝作用が機能しない可能性を示唆している。生食連鎖については、エアーリフトサンプラーで採取した動物の種組成の解析を進めており、通常海域と高CO2海域で明確な種組成の変化が生じていることが明らかになりつつある。これは、海洋酸性化の進行に伴いサンゴや海藻など大型のベントスの種構成が変化し、それに付着・埋在する小型の動物の種構成に影響を及ぼしたことが考えられる。腐食連鎖に関しては、海底に漂っている海藻を採取し、その葉上に生息する動物群集の解析を進めている。生態系の変化を数理モデルによって表現する試みも進めており、海藻とサンゴ、微細藻の競合関係に対する海洋酸性化の影響のモデル化を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エネルギーフローの構成要素である、光合成、生食連鎖、腐食連鎖のそれぞれに対して、海洋酸性化の影響が解明されつつある。また、生物間の相互作用を表現する数理モデル構築にも取り組んでおり、海洋酸性化が藻場生態系に及ぼす影響が包括的に明らかとなることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
光合成に関しては、閉鎖式チャンバー試験を主体的に実施し、二酸化炭素の施肥効果の有無をより詳細に明らかにすると共に、論文化を進める。生食連鎖・腐食連鎖については、動物相の解析をより進展させ、エネルギー転送の担い手への海洋酸性化の影響を明らかにする。また、これらの成果を数理モデルに反映させ、包括的な評価につなげる。
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