2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of observation and monitoring system for land degradation in arid regions
Project/Area Number |
19H04239
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
木村 玲二 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (80315457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 雅雄 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (00240911)
松島 大 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (50250668)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土地劣化計測システム / 乾燥地 / 砂漠化 / 衛星 / ハザードマップ |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 2001~2013年を対象に、近年の全球の気候学的乾燥度分布を衛星データと気象データから算定される乾燥度指数を用いて作成し、UNEPによる90年代の分布と比較した。その結果、乾燥地の中でも湿潤な地域がより乾燥し、半乾燥地や乾燥半湿潤地の面積が減少、しかしながら乾燥地全体の面積は90年代と変化がないことを明らかにした。 2. 2000~2017年を対象に、近年の全球の実際の乾燥度分布を衛星データのみから算定されるオリジナル指標「Satellite based Aridity Index」を用いて作成した。実際の乾燥地全体の面積は1)による気候学的乾燥度指数を用いた面積と同じであるが、乾燥地の中でも極乾燥地の割合が多く、半乾燥地や乾燥半湿潤地の面積が減少していることが示唆された。2000~2017年を対象に、乾燥地における土地劣化(砂漠化)面積の経年変化を衛星データから算定した。その結果、砂漠化面積は年々減少傾向にあり、この10年間で13.5×10^6(km^2)減少していることが明らかになった。 3. SYNOP気象データと衛星による放射温度、熱収支2層数値モデルを用いて、黄砂(ダスト)発生の臨界風速をシミュレーションする方法を構築した。これによって、受食性の要因となる土壌水分の閾値をSYNOP気象データによって決定することが可能になる。 4. 飛砂を抑制する植生の植被率をモニタリングするため、緑色葉だけでなく黄色葉や赤色葉が混在した場合の植被率が推定できるよう、赤と近赤外の波長を検知するデジタルカメラを用いた植被率推定法を開発した。 5. 直径1cmの圧電素子を用いた小型軽量飛砂計を用い、「砂漠化監視に特化した計測システム」用に鉛直フラックスを観測できるよう試作・改良した。その結果、飛砂が発生する高さ30cm以内で、理想的な飛砂量の鉛直分布の観測値を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「砂漠化監視に特化した計測システム」は、風速計、放射温度計、飛砂計、4波長スペクトルカメラで構成される土地劣化の監視に特化した計測システムである。飛砂計に関しては、直径1cmの圧電素子を用いた小型軽量のセンサーを本システム用に鉛直フラックスを観測できるよう製作・改良し、風洞においてその実用性を確認した。しかし、令和元年10月までに完成予定であったワイヤレスデータロガーは、飛砂センサーのch数に対応した小型データロガーに対応させるため、個別に取り付けを想定していた8つのAD変換機を集積化(基板や電子回路)し、システム全体の軽量化と重量バランスを図る必要性が生じた。また、海外からのデータ転送を行うには、当初のデータロガーでは受信範囲が限られていることが実験により判明した。海外に設置する以前に、FTPサーバ機能を追加してデータ転送試験および調整を行う必要性が生じた。これらの課題が解決できれば、モンゴル現地での設置が可能になる。4波長スペクトルカメラに関しては、緑色葉だけでなく黄色葉や赤色葉が混在した場合の植被率が推定できるよう、赤と近赤外の波長を検知するデジタルカメラ(スペクトルカメラより安価である)を用いた植被率推定法を開発した。 「衛星による観測の補完および面的モニタリング手法の開発」に関しては、SYNOP気象データと衛星による放射温度、熱収支2層数値モデルを用いて、黄砂(ダスト)発生の臨界風速をシミュレーションする方法を構築した。これによって、受食性の要因となる土壌水分の閾値をSYNOP気象データによって決定することが可能になる。さらに、気候学的乾燥度指数と衛星による実際の乾燥度を比較することで、水収支的に砂漠化の場所を特定できる手法を開発した。これらの成果は、本課題で提示した最終的な目標である「砂漠化ハザード監視パッケージの開発」を進展させる大きな要因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
「砂漠化監視に特化した計測システム」に関しては、すでに飛砂センサーの観測精度や耐用性が確認されているので、ワイヤレスデータロガーとFTPサーバ機能を追加した飛砂観測システムを特許申請に至るレベルにまで発展させる。令和2年6月までには完成させ、9月~10月にかけてモンゴル現地での設置を目指す。併行して、鳥取砂丘での地の利を活かした飛砂観測や乾燥地研究センターが保有する実験施設や観測機器を併用し、研究遅滞リスクを回避するとともに、詳細な基礎的データを得ることで再現性を高める。 「衛星による観測の補完および面的モニタリング手法の開発」に関しては、特に飛砂の発生を抑制する枯れ草の植被率を推定するための手法を小型UAVによる観測で得られた実地データや次世代衛星(しきさい:GCOM-C)で得られたデータを用いて、広域分布の推定にまで発展させる。この場合も、鳥取砂丘での地の利を活かした観測が大いに役立つ。
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Research Products
(12 results)