2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of observation and monitoring system for land degradation in arid regions
Project/Area Number |
19H04239
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
木村 玲二 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (80315457)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 雅雄 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (00240911)
松島 大 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (50250668)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 土地劣化計測システム / 乾燥地 / 砂漠化 / 衛星 / ハザードマップ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)「衛星による観測の補完および面的モニタリング手法の開発」 ①近年のモンゴルにおける干ばつや土地劣化を対象に、本手法の実証試験を行った。2000年から2009年にかけて、モンゴルでは干ばつが頻発しているが、本研究ではこの期間の干ばつの発生をモンゴルの北中部(草原)と南部(乾燥地域)の2つのゾーンに分け、衛星指標によってその要因を特定することを試みた。その結果、この期間の降水量が減少トレンドであることにより、植生や地表面の湿潤度が減少していたことが示唆されたが、2009年から2020年にかけては降水量の増加トレンドにより、植生や地表面の湿潤度が増加している傾向が明らかになった。本指標は土地の劣化のみならず、経年的な干ばつの状況を監視できることが示唆された。②「風食的砂漠化の面的なモニタリング」に関し、東アジアを対象にした風食の数値シミュレーションを行い、風食が発生し始める臨界風速の影響について探った。その結果、発生源の違いや大気中のダスト濃度に与える臨界風速の影響は大きく、本計測システムの根幹に関わる物理量であることが示唆された。
(2)「砂漠化監視に特化した計測システムの試作と開発」 「特許出願」を行った飛砂計を用い、小型境界層風洞で実証試験を行った。本研究では、レキ砂漠や草原の環境を風洞に再現し、①レキ面上の風に対する抵抗は、被覆率が15%で最高値に達し、20%以上になると逆に減少、安定化する、②4cmの高さを境に、空気の流れはそれぞれ慣性境界層と粗度境界層に分割される、③飛砂粒子が周囲の気流からエネルギーを吸収できる領域が慣性境界層と粗度境界層との間に存在し、飛砂による侵食を高める作用がある、④柔軟性のある植生の上部が家畜に食べられても、飛砂を捕捉する効果に対し影響が少ない等、レキや植生が地表面近くの空気の流れに対して与える影響を物理的に解明することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)「砂漠化監視に特化した計測システムの試作と開発」 昨年度同様、コロナ感染症による渡航制限でモンゴル現地での観測や実証試験は叶わなかった。しかしながら、風洞実験によって現場の状況を想定したモデル実験を行うことで、いくつかの物理的成果を挙げることができた(Liu et al., 2021; Kinugasa et al., 2021)。特に、東アジアの乾燥地に存在するレキや放牧圧の対象となる草地が飛砂に与える影響を本研究における計測システムで解明できたことは、研究の進捗に大きな影響を与えたと考えられる。情勢が変わり次第、早急にシステムをモンゴルに設置し、現地での実用性を確認する必要がある。
(2)「衛星による観測の補完および面的モニタリング手法の開発」 衛星を用いた気候学的モニタリング指標の開発と検証に関しては、土地劣化の特定のみならず、経年的な干ばつの進行も同時に監視できるようになった(Kimura and Moriyama, 2021)。手法は、昼夜地表面温度の振幅による熱慣性を再現したものなので、数日単位の地表面湿潤度を忠実に再現できるものではないが、月や季節を単位としたモニタリングに関しては十分な利用価値があると判断した。地表面湿潤度を数日単位で再現するためには、本研究課題でもある熱収支モデルと解像度の高い衛星データが必要である。 また、東アジアを対象に、面的に風食発生の数値シミュレーションを行えたことは大きな進展であった(Kawai et al., 2021)。本研究では、飛砂発生の臨界風速を決定する推定関数を導出し、受食性の要因となる植生量と土壌水分の閾値を決定する方法の開発を提示しているが、シミュレーションによって、臨界風速の違いが大気中のダスト濃度や発生源の違いに与える影響を示すことが可能になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)「砂漠化監視に特化した計測システムの試作と開発」 ①風向・風速計、放射温度計、飛砂計、デジタルカメラで構成される土地劣化の監視に特化した簡易計測システムを引き続き検証する。特許申請済の飛砂計(風向と鉛直フラックスを同時観測)を野外(鳥取砂丘)で稼働し、計測システムを含めた海外現場での適用性を引き続き検証する。(劉が担当)②デジタルカメラおよびNDVIセンサーによる赤と近赤外の画素を用い、黄色・赤色葉が混在した場合の植被率が推定できるアルゴリズムを引き続き発展させる。(森山が担当)③飛砂と関わりの深い表層の土壌水分を、放射温度計により測定された放射温度による熱慣性との関係から推定する方法を確立する。(松島が担当)④特許申請済の飛砂計を用いた風洞実験により、植生の柔軟性と遮蔽率を考慮、コントロールしたモデル実験を行い、植被率も併せた3次元構造が及ぼす飛砂への影響(主として臨界風速)を数値モデル化する。(劉・木村が担当)
(2)「衛星による観測の補完および面的モニタリング手法の開発」 ①表層の湿潤度に関して、数日単位の地表面湿潤度を忠実に再現できる、より詳細な熱収支2層モデルによる土壌水分指標を開発する。手法の妥当性は土壌水分推定モデルの結果と併せて評価し、解像度の高い衛星データによる地表面湿潤度の指標として耐えうるものを選抜する。(木村・松島・森山が担当)②①で得られた手法をモンゴルに適用し、干ばつや土地劣化の早期警戒や監視に資するモニタリング手法を確立する。(木村が担当)③鳥取砂丘での観測および実験室データ(風洞実験)によって、飛砂発生の臨界風速を決定する推定関数を導出し、受食性の要因となる植生量と土壌水分の閾値を決定する方法を開発する。(松島・木村・劉が担当)③上記面的モニタリング手法を用い、東アジアにおける風食の発生(黄砂)と地表面被覆との関係について明らかにする。
|
Research Products
(15 results)