2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of observation and monitoring system for land degradation in arid regions
Project/Area Number |
19H04239
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
木村 玲二 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (80315457)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 雅雄 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (00240911)
松島 大 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (50250668)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 土地劣化計測システム / 乾燥地 / 砂漠化 / 衛星 / ハザードマップ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)「衛星による観測の補完および面的モニタリング手法の開発」 東アジアの乾燥地は、土地劣化と関わりの深い黄砂の発生源として認識されている。しかし、黄砂の発生は現地の地表面状態に左右され、特に発生源における地表面状態が日本の黄砂観測日数とどのように関連しているのか、正確な情報が不足していた。本研究では、2000年以降の黄砂が発生する春季(3月~5月)を対象に、地表面状態(北緯35度~50度、東経100度~120度の範囲)の年々変化を衛星データによって調べた。風の流跡線解析の結果、福岡で観測された黄砂現象のほとんどが、この領域を通過する3つのルートをたどっていることが示され、また、日本の黄砂観測日数は2000年以降減少傾向にあり、対象領域内における裸地面(または植生面)の面積と強い相関を示した。本研究では、対象エリア内における裸地面積を使った日本の黄砂観測日数を再現する統計モデルも示してあり、裸地面積から春季の黄砂観測日数を前もって見積もることも可能になった。風食の発生源を特定したという本検証結果は、衛星を用いた面的モニタリング手法の妥当性を証明した。
(2)「砂漠化監視に特化した計測システムの試作と開発」 ①計測システムの主体である風向追尾型小型飛砂カウント計を開発し、特許出願を行った(特願2022-184512)。以前開発した「無指向飛砂量計測装置(特願2020-192786)」と異なり、小型軽量かつ長期間のモニタリングに対応改良されたもので、より多点計測に適合したものとなっている。②コロナ感染症による渡航制限で実現できなかった計測システムの設置をモンゴルのホルド(草原ステップと砂漠ステップの境目)で行い、2023年3月より観測を開始した。システムは、風向・風速計、放射温度計、NDVIセンサー、飛砂計、webカメラ、土壌水分計で構成される土地劣化の監視に特化したものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)「衛星による観測の補完および面的モニタリング手法の開発」 ①衛星を用いた土地劣化モニタリング手法に関しては、土地劣化のみならず、それと関連する風食の発生源も的確に特定できるという、手法の妥当性に関する検証結果を得ることができた(Kimura, 2022)。②本モニタリング手法を用いて、トルコにおける干ばつの頻度や場所を特定することにも成功し、これまでの中国やモンゴルだけでなく、グローバルな適応性も確認された。なお、本手法は他の研究者によってイラン等の乾燥地に応用され始めている。 (2)「砂漠化監視に特化した計測システムの試作と開発」 ①現地における設置が実現できなかった期間は、鳥取砂丘に本システムを設置し、その実用性を確認した。UAVによる写真測量、実地測量を組み合わせることで、堆砂・静砂垣の飛砂防止効果を定量的に評価した。②コロナ感染症による渡航制限で叶わなかった計測システムの設置をようやく行うことができた。相手側研究者の協力(モンゴル地理学地生態学研究所)もあり、長期間にわたるデータの取得と蓄積が可能になると思われる。③以前開発した「無指向飛砂量計測装置(特願2020-192786)」を更に小型改良化した風向追尾型飛砂計(特願2022-184512)は、長期間のモニタリング耐性や多点計測により適合した規格に基づいている。この改良化は、当初予定していた簡易計測システムの完成に向けて、大きな影響を与えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)「砂漠化監視に特化した計測システムの試作と開発」 ①風向・風速計、放射温度計、NDVIセンサー、飛砂計、webカメラ、土壌水分計で構成される土地劣化の監視に特化した簡易計測システムを引き続き検証するとともに、モンゴルでの観測を継続する(木村・劉が担当)。②デジタルカメラおよびNDVIセンサーによる赤と近赤外の画素を用い、黄色・赤色葉が混在した場合の植被率が推定できるアルゴリズムを引き続き発展させる(森山が担当)。③飛砂と関わりの深い表層の土壌水分を、放射温度計により測定された放射温度による熱慣性との関係から推定する方法を確立する(松島が担当)。④特許申請済の飛砂計を用いた風洞実験により、植生の柔軟性と遮蔽率を考慮、コントロールしたモデル実験を行い、植被率も併せた3次元構造が及ぼす飛砂への影響(主として臨界風速)を数値モデル化する(劉・木村が担当)。
(2)「衛星による観測の補完および面的モニタリング手法の開発」 ①表層の湿潤度に関して、数日単位の地表面湿潤度を忠実に再現できる、より詳細な熱収支2層モデルによる土壌水分指標を開発する。手法の妥当性は土壌水分推定モデルの結果と併せて評価し、解像度の高い衛星データによる地表面湿潤度の指標として耐えうるものを選抜する(木村・松島・森山が担当)。②①で得られた手法をモンゴルに適用し、干ばつや土地劣化の早期警戒や監視に資するモニタリング手法を確立する(木村が担当)。③鳥取砂丘での観測および実験室データ(風洞実験)によって、飛砂発生の臨界風速を決定する推定関数を導出し、受食性の要因となる植生量と土壌水分の閾値を決定する方法を開発する(松島・木村・劉が担当)。④これまで用いてきた衛星Terraが老朽化し、使用できなくなるため、森山がアルゴリズム開発を担っているGCOM-Cによるデータを用いることで、モニタリングの持続性を保持する。
|
Research Products
(14 results)