2020 Fiscal Year Annual Research Report
アジア大陸起源のブラックおよびブラウンカーボン粒子が下流域の放射収支に及ぼす影響
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19H04240
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中山 智喜 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (40377784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹谷 文一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 主任研究員 (50377785)
定永 靖宗 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70391109)
池盛 文数 金沢大学, 地球社会基盤学系, 研究協力員 (00773756)
松見 豊 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 研究員 (30209605)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境変動 / 気候変動 / 環境分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気中に存在するエアロゾル粒子は、太陽光を吸収もしくは散乱することにより、地球大気を加熱もしくは冷却し、気候変動に寄与するとともに、大気の光化学過程を変化させ、大気環境に影響を及ぼしている。特に東アジアなど大規模な排出源の近傍では、代表的な光吸収性粒子であるブラックカーボン(BC)粒子が大きな大気加熱効果を有すると考えられる。また、短波長可視から紫外領域に光吸収性を有する有機炭素であるブラウンカーボン(BrC)が存在し、放射収支や光化学反応に重要な寄与を及ぼしている可能性がある。本研究では、東アジアの大規模排出源の下流域における観測研究により、季節によるBCおよびBrCの排出源や生成源、輸送中の変質過程の変化が、エアロゾルの混合状態や化学成分の変化を通して、光学特性をどのように変化させるかを明らかにすることを目指している。 2020年度には、小型計測器によるPM2.5重量濃度の多地点観測実施し、越境大気汚染空気塊に含まれるPM2.5の輸送状況を明らかにすることができた。また、長崎大学において各種大気微量気体成分やエアロゾルの特性(粒径分布や光吸収係数および散乱係数の波長依存性)の連続観測を実施した。さらに、季節毎にPM2.5のフィルター捕集を実施し、捕集した粒子の一部について、光吸収性有機成分や有機トレーサの分析を行った。その結果、光吸収性有機化合物の濃度の季節依存性を明らかにすることができた。今後、連続観測により得られたBCやBrCのデータの解析を進めるとともに、捕集した粒子の残りの化学成分分析を行い、データを比較することで、BCやBrCの発生源や輸送過程がエアロゾル光学特性に及ぼす影響が明らかになると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度には、長崎周辺で小型PM2.5計測器を用いたPM2.5重量濃度の多地点観測を実施するともに、得られたデータを解析し、越境大気汚染空気塊に含まれるPM2.5の輸送速度や輸送方向の分布状況を明らかにした。長崎大学において、多種の大気微量気体成分の通年連続観測を実施することができた。また、エアロゾルの特性(粒径分布や光吸収係数および散乱係数の波長依存性)の通年連続観測を実施するとともに、冬季には、他の化学成分(硫酸塩や硝酸塩、有機物など)により被覆されたブラックカーボン粒子の割合や被覆厚さの連続観測を実施した。さらに、季節毎に2週間程度ずつ、PM2.5のフィルター捕集を実施し、捕集した粒子の一部について、イオン成分や光吸収性有機成分、有機トレーサーの分析を行った。その結果、これまで報告例がほとんど存在しないイミダゾール化合物の濃度の季節依存性や季節毎の発生源(バイオマス燃焼や二次生成など)に関する情報を得ることができた。 以上のように、PM2.5の多地点観測や、各種気体成分およびエアロゾル粒子の特性の観測、捕集した粒子の化学成分分析を、ほぼ当初の予定通り進めることができており、本申請研究は、現時点で概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の前半には、長崎周辺での小型センサによるPM2.5の多地点観測や、長崎市内での各種気体成分およびエアロゾル粒子の各種特性の連続観測を実施するとともに、PM2.5のフィルター捕集を行う。また、前年度に引き続き、捕集したPM2.5中の元素状炭素、有機性炭素、イオン成分、および有機トレーサ成分、光吸収性有機成分の化学分析を行う。さらに、PM2.5を抽出した水溶液の紫外・可視吸収スペクトルの測定を行う。 気体成分の観測データのうち、全反応性窒素酸化物と、一酸化窒素および二酸化窒素の濃度を比較することで、越境大気汚染気塊の変質の度合いを求める。また、多地点観測により得た各地点のPM2.5濃度の時間変化や、一酸化炭素、ブラックカーボンの濃度の変化から、越境大気汚染気塊の寄与が大きなイベントを推定する。これらの解析結果とあわせて、オンライン装置で得られた観測データとオフライン分析の結果を比較・解析することで、エアロゾルの光学特性の決定要因を明らかにする予定である。
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[Journal Article] The effects of meteorological conditions and long-range transport on PM2.5 levels in Hanoi revealed from multi-site measurement using compact sensors and machine learning approach2021
Author(s)
B. -T. Ly, Y. Matsumi, T. V.Vu, K. Sekiguchi, N. T. T. Thuy, P. C. Thuy, T. -D. Nghiem, I. -H. Ngo, Y. Kurotsuchi, N. T. T. Hien, T. Nakayama
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Journal Title
Journal of Aerosol Science
Volume: 152
Pages: 105716
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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