2020 Fiscal Year Annual Research Report
地下圏炭素・エネルギー動態のミッシングリンク:結晶性酸化鉄が主導する微生物新機能
Project/Area Number |
19H04244
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
堀 知行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20509533)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境分析 / 深海環境 / 地球化学 / 環境 / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「地下微生物-鉄鉱物の相互作用に基づく高度集積培養系」を研究対象として、地下圏炭素・エネルギー動態のミッシングリンクを繋ぐ未知微生物群(結晶性酸化鉄を還元する嫌気的メタン酸化菌、嫌気的酢酸酸化菌)の純粋分離・菌学的特徴づけに挑み、加えて自らが近年開発・環境試料適用を達成した未培養微生物機能同定法「高感度Stable Isotope Probing(SIP)」と次世代シークエンサー解析を融合利用することで、地下物質ダイナミクスの根本的理解を目指す。高結晶性酸化鉄(Goethite、Lepidocrocite、Hematite、Magnetite等)を電子受容体に採用し、メタンと酢酸を電子供与体として200以上の培養条件で、大深度海底コア試料や陸域嫌気土壌試料の継代培養を数年にわたり継続している。嫌気的メタン酸化菌として、鉄還元能が報告されている嫌気的メタン酸化アーキアが確認されるとともに、系統学的に極めて新しい未知細菌群が高度に集積された。また、嫌気的酢酸酸化菌の培養ではFirmicutes門細菌が95%以上で存在する集積培養系を得た。本年度は、昨年に引き続き、エネルギー順位の高い電子受容体基質(硝酸、流硫酸等)や共存する非標的微生物の利用できない電子供与体基質を用いた二段目培養を継続し、その群集構造を次世代シークエンサーにより追跡した。さらに、昨年度に完全ゲノムを解読した、結晶性酸化鉄を還元する海底堆積物由来嫌気酢酸酸化菌について、その近縁種のゲノム情報や生理生態情報の収集を行い、比較ゲノム解析に関わる事前検討を行なった。さらに陸域嫌気土壌試料から分離された嫌気酢酸酸化・鉄還元細菌2種についてドラフトゲノムを決定し、論文発表に必要な解析を終了した。また、目的とする微生物が高度に集積された系に対して、安定同位体標識基質を用いた高感度SIP培養に関する準備を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に新たに構築した系統解析コンピュータを用いて、結晶性酸化鉄を還元する嫌気酢酸酸化菌の純粋分離株の完全ゲノムの解析をさらに進め近縁種のゲノムとの比較・検討を行なっていること、さらに陸域嫌気土壌からの純粋分離株2種のドラフトゲノムを決定し論文化に向けたデータを取り終えたことは大きな成果と言える。分離培養に向けた二段目培養にて、標的とする新規細菌の純粋分離まで到達できていないものの、次世代シークエンサー解析で集積化過程を詳細に追跡・評価している。また、高感度SIP培養の準備も恙無く進めている。よって、研究が概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
完全ゲノムを解読した嫌気酢酸酸化・鉄還元細菌の分離株1種については、その近縁種との比較ゲノム解析を行うことで、海底堆積物中で生存するための代謝戦略を明らかにする。陸上嫌気土壌からの分離株2種については、ドラフトゲノムの論文化を行うとともに、生理学的性質との関係性を詳しく調べる。標的とするいくつかの新規細菌について、純粋分離まで到達していない状況があるが、引き続き、次世代シークエンサー解析により集積具合を綿密に追跡し、効率的な純化作業を行う。成果結実の加速化を図るため、専門の実験補助員を雇用する。
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