2020 Fiscal Year Annual Research Report
Emission and removal of solid organic aerosol particles from biomass burning and their climate effects
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19H04259
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
足立 光司 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (90630814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 信宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20507818)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ターボール / 森林火災 / エアロゾル / 電子顕微鏡 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動に影響を与えるエアロゾルの一つに、森林火災から大量に発生する固体有機物粒子(ターボール)があげられる。このターボールは、生成・除去プロセスや光学特性など、気候モデルに組み込むための必要なデータがなく、世界的にターボールの気候影響はほとんど分かっていない。2019年度の夏季に北米において航空機観測(FIREX-AQ)に参加し、バイオマス燃焼由来の試料を採取して透過型電子顕微鏡を用いて分析した。また、森林火災由来のエアロゾルに対する大気中における変質・除去過程を理解するため、船舶による観測(Yoshizue et al., 2020)、北極における航空機観測試料の解析(Adachi et al., 2021)、南半球におけるアフリカ大陸から南アメリカ大陸への輸送過程(Adachi et al., 2020)などを明らかにした。いずれの試料においても、森林火災由来のプルームをとらえることに成功し、異なる変質過程のターボールを解析し、大気中において約一週間程度でターボールの表面が変質し、大気中からの除去を受けやすい状態(高い吸湿性)になっていく過程が解明された。 ターボールの測定は、組成分析と形状分析の両方を行う必要がある。従来、形状分析は人の目による定性的な評価しかできていなかったが、今回、深層学習による画像解析手法を電子顕微鏡画像に適応し、ターボールの自動検出技術の開発に成功した。この手法を用いて、従来の人による判別に比べ10倍以上のスピードでの解析が行えるようになった。 ターボール粒子に加え、新たな森林火災由来のエアロゾル粒子種として、従来は数十マイクロ以上の大きさで森林火災の周辺にのみ沈着すると考えられていた灰粒子が、森林火災から発生する煙によって100キロメートル上も輸送される重要なエアロゾル種であることを見出した(Adachi et al. 投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画は順調に進んでいる。研究目的としていたターボール粒子の分布理解は、世界各地で得た試料中でターボールを観測し、特に北極上空での世界で初めての検出に成功した。また、ターボールの解析方法も、深層学習を用いた解析で大幅な改善ができた。加えて、当初の計画になかったサブミクロンサイズの灰粒子の発見によって、森林火災由来のエアロゾル粒子の新たな気候影響が明らかとなる可能性があり、引き続き解析を進めている。一方で、世界規模でのパンデミックの影響により、海外出張や出張を伴う学会発表、北極での追加観測等がすべてキャンセルとなった。北極での研究は、自動サンプラーを送付し、現地の技術者の協力を得ることで観測の継続はできているが、採取された試料の回収ができていない。出張が可能になり次第、早急に現地でのメンテナンスを行う予定である。ただし、これらの観測上の問題は、研究期間後半でリカバーできる範囲であり、現在、室内実験を前倒しで行っていることもあり、研究計画全体の進行には大きな影響を及ぼしていない。2020年度は、主著論文として国際誌Atmospheric Chemistry and Physicsに二本の論文が掲載され、一本が現在投稿中である。また、共著者として4本の関係論文を出版し、順調に成果公表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として、ターボールの化学分析と画像解析を合わせた解析を、FIREX-AQ試料に対して行う予定である。特に、比較的新鮮な森林火災中の煙においてのターボール粒子の発生メカニズム仮説を、試料数を大幅に増やして検証する予定である。また、北極における森林火災の影響を、電子顕微鏡を用いた観測で調べ、ターボールや森林火災由来のエアロゾル粒子(カリウム含有粒子など)の検出を行う。海外における観測は、パンデミック状態が解消されれば北極(ノルウェー、スバールバル諸島)で行いたい。困難な場合は、現在のリモート観測を継続する。
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Research Products
(14 results)