2020 Fiscal Year Annual Research Report
大腸がんを指標とした組織幹細胞でのゲノム変異解析系の確立
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19H04268
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 智子 (石川智子) 大阪大学, 放射線科学基盤機構附属ラジオアイソトープ総合センター, 特任研究員(常勤) (70402922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻村 亨 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20227408)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 発がん / 遺伝的不安定性 / 損傷乗り越えDNA合成 / ミスマッチ修復 / CNA / SNP / 次世代シーケンス / モザイク解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
「発がん」は環境変異原や環境放射能による生物影響のエンドポイントであり、その最重要要因は遺伝子変異であることは疑問の余地のないことであるが、遺伝子変異と発がん過程の進行との相関には未だ議論が多く残されている。我々は年齢依存的にすべての個体で大腸がんを発症するメダカ変異体を樹立した。この変異体は損傷乗り越えDNAポリメラーゼ(rev3)の欠損変異体であり、染色体レベルの遺伝子変異を誘発し、腸幹細胞へ変異が蓄積したため発がんに至ったと考えられる。大腸がん発症因子としてよく知られるミスマッチ修復欠損では点突然変異誘発を特徴としており、本変異体とは対照的である。本高発がん系を用い、「幹細胞へのゲノム変異導入」と「発がん」について、ゲノム変異同定により解析する研究を提案している。本年度は以下の研究成果を得た。rev3欠損変異体のがん発症月齢に影響を与える遺伝子を探索すべく、1) 突然変異生成や2) 損傷応答にかかわる遺伝子との二重変異体を作製し、できたものから順次、寿命測定を行った。今年度1) についてはpolh、poli、 polkとrev3の二重変異体で寿命測定を行い、その結果、polh,、 polkとの二重変異体はほぼ同じ生存曲線を示し、rev3単一の変異体と比較すると途中経過は少し異なるが寿命自体には変化が見られなかった。一方、poliとの二重変異体では寿命の延長がみられた。2) については寿命測定に必要な数のp53/rev3二重変異体を得ることができていない。また、点突然変異と染色体レベルの変異の発がんへの寄与に違いがあるかどうかを見るためにmsh2, atm変異体についても寿命測定を行い、二重変異体の作製を開始した。各々の単一変異体の寿命はmsh2変異体で寿命の短縮が見られたが、変異体では野生型と変化は見られなかった。二重変異体についてはいずれも寿命測定中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、年齢依存的にすべての個体で大腸がんを発症するrev3欠損変異体を中心にその表現型が塩基レベルの変異の増強(msh2変異)、染色体レベルの変異の増強(atm変異)、他のTLS欠損により発がん時期の変化(短縮もしくは延長)のように変化するのかどうか、もしそういった変化が見られた場合にどのようなゲノム変異が見られるのかを発がん個体の腹腔内に播種したがん細胞で解析することを目指している。そのために必要な二重変異体の準備は順調に進んでおり、興味深い表現型を示しているものもありゲノム解析の準備を進めている。モザイク解析に使用するためのrev3遺伝子全体を含むBACクローンを導入したTG個体を作製し表現型が相補されているか寿命測定で確認中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、(1) 作製中の各二重変異体に関して、寿命測定を引き続き行うと同時にある程度の月齢に達した段階で死亡したものに関しては全身切片を作製し、死因を特定する。これらのなかから興味深い結果の得られた二重変異体から腹腔に播種したがん細胞のゲノム解析を順次行う。 (2) モザイク解析用のrev3BACを導入したTG個体にHSE-Creと共に(1)の二重変異体掛け合わせで導入する。
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