2020 Fiscal Year Annual Research Report
アスベスト結合タンパク質と化学発光を用いたアスベスト検査の高度化研究
Project/Area Number |
19H04291
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒田 章夫 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 教授 (50205241)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アスベスト / AlphaLISA / バイオアッセイ / アスベスト結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
建物の解体や補修前に必要な建材アスベスト調査は年間約188万件と推定されており、アスベスト検査の高速化(多検体化)が急務とされている。AlphaLISA法とは、ドナーとアクセプターの2つのビーズを使用する測定法で、それぞれのビーズには対象となる測定物に結合するアフィニティーリガンド(通常抗体などを使用)が固定されている。レーザーによって励起されたドナービーズは、周辺の酸素を励起状態の一重項酸素に変換する。一重項酸素はドナービーズ周辺に拡散し、近接しているアクセプタービーズに到達すると、化学発光を引き起こす。しかし、一重項酸素の寿命は短いため、ドナーとアクセプターが200nm以内に近接しなければ発光しない。AlphaLISA法では、洗浄操作が不要になるという利点が得られる。クリソタイル(白石綿)はアスベストの中で最も多用されたものである。DksAは、クリソタイルに結合するタンパク質である。ビオチン化したDksAを作成し、ストレプトアビジンがコーティングされたAlphaLISAアクセプターおよびドナービーズと混合することでビーズ表面にDksAを固定した。前年度、結合条件を検討した結果、DksAをアフィニティーリガンドとしたAlphaLISA法によって、0.1 mg/mlのクリソタイルを検出することができた。タルク(和名:滑石)は層状鉱物であり、化粧品・医薬品やベビーパウダーなどの原料として利用されているが、アスベストが含まれる場合があり問題となっている。そこで、タルク中に含有する0.1 %のクリソタイルを検出するための条件検討を行った。サンプル量を増せば、一定程度発光量が増加し、感度の向上が期待された。しかし一方で、タルクによる光の遮蔽が起こり発光量が低下した。サンプル量を最適化した結果、タルク中においても0.1 %のクリソタイルを検出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アスベスト結合タンパク質を利用したAlphaLISA法により、タルク中に含有する0.1 %のクリソタイルを検出することに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
蛇紋岩は日本各地に分布し、その中には石綿であるクリソタイルの細脈もしばしばみられる。我が国では、石綿を得るための蛇紋岩の採掘は現在行われていないが、砂利石や骨材等として使用するための採石が行われている。これらの蛇紋岩を粉砕したものの中には、左官用のモルタル混和材やセメント建材の製造における石綿代替物として販売されているものがあり、これら多くは無石綿の製品として販売されている。しかしながら、現在最も広く行われているX線を用いた分析法では、蛇紋石を構成するクリソタイル(石綿)とアンチゴライト及びリザルダイト(いずれも非石綿)がほぼ同じ位置にピークを持つため、クリソタイルが入っているにも関わらず、アンチゴライト等と同定されて「非石綿」として流通している場合が報告されている。DksAをアフィニティーリガンドとしたAlphaLISA法によって、クリソタイルとアンチゴライト及びリザルダイトを見分ける方法を開発する。
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Research Products
(4 results)