2019 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析法によるアナベナ属の迅速種判定技術の構築と水道水源水質評価への適用
Project/Area Number |
19H04293
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高梨 啓和 鹿児島大学, 大学院理工学研究科工学専攻, 准教授 (40274740)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井坂 和一 東洋大学, 理工学部, 准教授 (40543939)
清水 和哉 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10581613)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 水道水 / かび臭 / アナベナ / MALDI / データベース検索 |
Outline of Annual Research Achievements |
被害人口が多く、北部日本へと被害が広がりつつある水道水かび臭被害は、原因生物の多くがアナベナ属と報告されている。現在、水源からのアナベナ属の検出は、顕微鏡観察やポリメラーゼ連鎖反応により行われているが、技能や長時間を要することが問題となっている。そこで本研究では、質量分析と多変量解析を用いて、アナベナ属の種および増殖過程を、単離を伴わずに短時間で判別する技術を開発することを目的とした。 初年度は、2種類のアナベナ属の培養方法を確立し、得られた培養液を用いて、培養液中のアナベナをマトリックス支援レーザー脱離イオン化法で安定してイオン化するためのサンプルの調製方法・条件を検討した。そのうえで、2種類のアナベナを質量分析により得たマススペクトルから判別できるか検討した。マススペクトルの取得条件、得られたマススペクトルの前処理方法を検討した結果、多変量解析の一種である主成分分析により迅速かつ容易に判別できることを明らかにした。さらに、判別に重要な役割を果たしているイオンをローディングプロットにより抽出するとともに、それらのイオンが種特異的なイオン(マーカーイオン)であることを確認した。また、誘導期、対数増殖期、定常期および死滅期の各増殖過程におけるサンプルを得て、増殖過程特異的なマーカーイオンを探索した。 以上により、本技術開発研究に必要な基本的原理の確認や培養条件の検討などの予備的な検討を完了し、次年度以降の準備を整えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GC/MSの導入の遅れから、培養したアナベナのかび臭物質産生能を定量的に評価できなかった。官能試験により代替したため支障はなかったが、すでにGC/MSが導入されたため、来年度は定量的に評価したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度培養に成功した2種類のアナベナ属以外の2種についても、培養条件を検討して培養してマーカーイオンを探索し、種の判別が可能なことを確認する。さらに、アナベナ属以外の夾雑生物が共存する場合でも、マーカーイオンによるジェオミン産生種の検出が可能なことを確認する。並行して、次世代シークエンサーを用いて、種を同定するためのマーカー遺伝子を探索する。探索は、16S rRNA遺伝子の一部領域や分子系統マーカー遺伝子を対象として網羅的に実施する。その後、培養時間の経過とともに増殖過程の異なる培養液を調製し、増殖過程を判別するマーカーイオンを探索する。また、昨年度培養したアナベナ属を含めて4種類すべての種に対して、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)を用いてかび臭物質(ジェオスミン)産生能を確認する。
|