2021 Fiscal Year Annual Research Report
2次元GC計測とLFER理論を利用した混合物の物性・毒性推定手法開発
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19H04297
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
頭士 泰之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80611780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 彬勒 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 上級主任研究員 (20358360)
遠藤 智司 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (30748934)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | LFER / 2次元GC / GCxGC / 物性推定 / 毒性推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、複数の物質を網羅的に計測できる2次元ガスクロマトグラフ(2次元GC)を用い、種々の物質について環境動態に係る様々な物性をLFER理論に基づき推定する手法を発展させる。これと同時に、水生生物に対する毒性の推定手法についても開発を行う。これらを通じて2次元GCによる迅速な多成分の物性・毒性推定手法を開発し、ひいては混合物のリスク評価を可能とすることを目指す。 物性推定のパートについて、既存手法で可能な非極性物質以外への適用範囲拡大を目指し、今年度は昨年度の蒸気圧に加え、logKow, logKaw, logKoaのリン酸エステル群について、実験値の情報収集を行った。その結果、これらの実測値データが少ない事が確認されたことから、推定精度が確認されている既存の各種推定手法を用いた推定値を得て利用することとした。すなわち、既存手法の推定値をGCxGCによる本手法で推定可能か検証を行った。結果として、蒸気圧およびlogKoaについては概ね良好に推定可能であったが、GCによる推定方法からの有益な向上は確認されなかった。その理由は、対象物質群であるリン酸エステル特有の気-固相間相互作用を1次元目のカラムで捉えられている一方、2次元目のカラムにおいて1次元目のカラムでとらえきれない種の相互作用について捉える力が充分でなく、その効果量を統計的に抽出できていないためと考えられる。毒性推定のパートについては、非極性物質に対する毒性推定手法を新たに構築する事を目指し、藻類では物質による毒性作用機序の違いが見られない事を確認した。ミジンコや魚類における作用機序の違いについては、今後確認を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年度目となる本年度は、物性推定のパートに関して、logKow, logKoa, logKaw のデータ収集を試みた。その結果、これらの実測値データが少ない事が確認された。このことから、推定精度が確認されている既存の各種推定手法を用いた推定値を得て利用することとした。これら物性について、2次元GCによる推定の性能評価を実施することが出来た。評価結果として、蒸気圧およびlogKoaについては概ね良好な精度で推定が可能であることが明らかとなった。その一方で、(1次元)GCによる推定方法からの有益な性能向上は確認されなかった。その理由は、対象物質群であるリン酸エステル特有の気-固相間相互作用を1次元目のカラムで捉えられている一方、2次元目のカラムにおいて1次元目のカラムでとらえきれない種の相互作用について捉える力が充分でなく、その効果量を統計的に抽出できていないためと考えられる。 毒性推定のパートについては、非極性物質に対する毒性推定手法を新たに構築する事を目指し、検討を行った。その結果、藻類では毒性作用機序の違いが見られない事、ミジンコや魚類ではさらに検討が必要であることなど確かめることが出来た。以上、今年度の取り組みについては概ね計画通り研究取り組みを進めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
GCxGCによる推定方法は、蒸気圧とlogKoaで概ね良好な結果を示したが、GCによる方法からの向上が見られなかったことから、非極性物質から極性物質への適用拡大は難しさが残ると考えられる。その困難さは主にデータ数が限られてしまう点に由来すると考えられる。そこでGCxGC-MS分析によって同時に取得される質量情報も用いた推定方法について検討内容を拡大し実施する事とする。これは蒸気圧、logKow, logKaw, logKoaといった物性値以外に、ミジンコや魚類などの水生生物に対する毒性値も対象として推定方法を構築していく。
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Research Products
(4 results)