2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of gaseous mercury removal in flue gas using powder of wasted DeNOx catalyst
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19H04300
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
義家 亮 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (60293544)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水銀 / 煙道ガス / 脱硝触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,水銀放出抑制技術の中でも,脱硝触媒を用いた水銀捕捉プロセスを確立することを目的としている.先行研究により,上記の脱硝触媒は水銀捕捉用活性炭と同等以上の水銀捕捉性能を有していることが明らかにしているが,その水銀捕捉機構がは不明の点が多い.よって,脱硝触媒水銀捕捉性能に対する温度,酸素濃度,ガス雰囲気に含まれる微量な塩素および硫黄含有成分の影響評価を行い,提案プロセス実現のための具体的指針を得る. 2019年度には脱硝触媒の水銀捕捉機構に対する様々な気相不純物の影響を調べた.特に雰囲気中にHClが存在する場合には水銀はほぼ酸化ことを確認した.一方,シンクロトロン光を用いた硬X線XAFS(AichiSR, BL5S1)によるXANESスペクトルを解析することで,脱硝触媒表面の水銀化合物形態分析を試みた.しかし,XANESスペクトル上で脱硝触媒の主要な構成元素であるタングステンが水銀のシグナルに干渉するため,脱硝触媒中に捕捉された水銀の化合物種の特定は困難であった.辛うじて判別された水銀シグナルのプロファイルよれば,N2雰囲気において脱硝触媒は水銀を物理吸着し,Flue gas雰囲気では酸化水銀(HgO)として触媒上に捕捉していることが示唆された. そこで2020年度には同じくシンクロトロン光を用いたX線光電子分光(XPS:AichiSR, BL7U)によるHg化合物形態分析を試みた.得られたXPSスペクトルにおいて,標準試料(HgO,HgS,Hg2SO4)の場合には水銀の特徴的なピークが確認された.しかし,水銀捕捉後試料については,水銀の微量な吸着が示唆されるだけであった.原子吸光法による既存分析装置を用いた測定結果によれば,脱硝触媒試料に吸着している水銀の濃度は数百ppm未満であり,BL7UのXPSによる検出には低すぎて,その検出に至らないことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では脱硝触媒を酸化・捕捉剤としてガス中の金属水銀を捕捉すること,あるいは捕捉しやすい状態に酸化させることを目指し,脱硝触媒の水銀酸化・捕捉性能に影響を与える因子の検討および反応機構の解明を行っている.これまでの進捗を以下にまとめる. 充填層型の水銀酸化・捕捉実験を行うことで脱硝触媒は雰囲気中にHClを含まない時には水銀用活性炭と同等以上の高い水銀捕捉性能を示し,また雰囲気中にHClを含む場合には高い水銀酸化触媒性能を示すことが明らかとなった. 水銀捕捉後の脱硝触媒について,HClを含まない雰囲気で水銀昇温脱離実験を行った結果,捕捉水銀は673 Kでは脱離せず773 Kで大部分が脱離した.また,昇温による脱離ではその大部分が元素水銀(Hg0)として脱離することが明らかとなった. 水銀酸化脱離試験の結果,脱硝触媒による水銀酸化は,他の文献の中に事例のある触媒上HCl付着とそれに続いて起こるHg0が酸化反応の他にも,先にHg0が触媒上に捕捉され,その後にHClと反応し酸化・脱離するメカニズムが存在することが推測された. 脱硝触媒上に捕捉された水銀の化合物形態推定のために硬X線XAFS測定を行った結果,N2雰囲気において脱硝触媒は水銀を物理吸着し,Flue gas雰囲気では酸化水銀(HgO)を形成して,触媒上に捕捉していることが示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに,本研究で得られる水銀捕捉試料における水銀化合物種形態別分析に,XANESおよびXPSの利用が困難であることがわかったので,今後は既存の元素分析装置を用いた各元素の濃度分析に基づく水銀捕捉メカニズムの検討に注力する.具体的には,脱硝触媒粉末による気相水銀捕捉性能について,捕捉容量,捕捉破過特性,温度の影響,排ガス雰囲気内の酸素濃度の影響,排ガス雰囲気内の微量塩化水素(HCl)および二酸化硫黄(SO2)の影響について,水銀固体分析装置および気相水銀の連続分析装置を用いた詳細なデータ取得を行う.各条件での水銀捕捉実験を行い,捕捉前後の脱硝触媒試料における水銀含有量を測定することによって,水銀捕捉率および捕捉条件の影響の評価を行う.また,反応管出口ガス中の気相水銀濃度の連続測定結果から,捕捉剤の単位質量あたりの水銀捕捉容量および捕捉破過特性の評価を行う.さらに捕捉前後の脱硝触媒試料におけるSおよびCl含有量を測定することによって,捕捉された水銀の化合物種(塩化物,硫化物,硫酸化物)の推定を行う.これらの結果より脱硝触媒粉末による気相水銀捕捉に関する反応速度論的なモデルを構築する. くわえて捕捉剤の元素組成分析データに基づき,捕捉水銀の化合物形態に関して熱力学平衡論的および反応速度論的考察に基づく予測を行う.本研究で想定する水銀捕捉部の温度は150℃~350℃とそれほど高くないが,水銀化合物の融点は低く,気相から液相・固相へ相変化して粒子中に捕捉固定化される水銀化合物を網羅する必要がある.
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