2019 Fiscal Year Annual Research Report
森林開発がもたらす新たな貧困リスク:インドネシアにおける持続可能な森林政策
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19H04340
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山本 裕基 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (00757974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 健一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (00534570)
重富 陽介 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (30780358)
服部 充 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (80710095)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パーム農園 / インドネシア / 農業生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、パーム農園と農家厚生の関係についての定量的評価を実施した。具体的には、Rand corporationが実施している、Indonesian Family Life Survey (IFLS)と衛星観察によるパーム農園の地理的分布情報を組み合わせて、パーム農園と農業所得や社会厚生との関係について、定量的に分析をおこなった。結果として、パーム農園のある地域では、土地保有農業者の所得向上が確認されたが、農地を持たない農業従事者の賃金所得には変化がなかった。また、パーム農園がある地域では、女児の高等教育参加率が減少し、若年層での婚姻率が上昇していることがわかった。これは、農業所得の向上にともない、女性の結婚市場が影響を受けたことが原因であると考えられる。 また、森林生態系サービスが持つトリなどの害虫コントロールの機能が地域農業へ与える影響について、フィールド調査を実施して分析した。地域に森林が豊富に存在しているほど、コメへの害虫被害率が低いことが確認された。 これらの結果は、パーム農園の拡がりは、農園開発などによって経済的恩恵を受けられなかった住民にとっては、貧困リスクを高めている可能性があるだけでなく、教育参加率の減少などを通じて、長期的あるいはマクロな視点からも様々な予期しない影響を及ぼしている可能性が示唆している。また、インドネシアのパーム油農園の拡大が先進国の消費に関してどのように促進されているのかについて、今後研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、家計世帯データおよび衛星データの整備をおこない、定量的な分析を実施することができた。これらの結果は、現在国際誌への投稿に向けて論文にまとめており、2020年度の早い段階で完成を目指している。また、先進国需要とインドネシアにおける農園開発との結びつきに関しての分析もおこなっており、こちらも早めに論文化・投稿が可能となる見込みである。フィールド調査によって得られたデータを用いた分析では、既に論文が完成しており、加筆訂正をおこなった後に報告できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は新型コロナウィルス蔓延の影響により、インドネシアでのフィールド調査を実施することが困難となる可能性が高い。そのため、既に得られたデータの解析を進めることに重点を置いて研究を実施する予定である。 状況が好転すれば、年度内にイネの害虫被害に関するフィールド調査を追加でおこなう予定である。
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