2019 Fiscal Year Annual Research Report
Perception toward the Rise of China in Comparative Perspectives: Focusing on the Post-Cold War Generation in Asia-Pacific Region
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19H04347
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
園田 茂人 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (10206683)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国台頭 / 社会心理 / 比較 / 変容 / ポスト冷戦世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題を申請時点で獲得できていなかった日本での学生サンプルを収集し終え、これで韓国、中国(香港を含む)、台湾、ヴェトナム、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ウズベキスタン、カザフスタンを対象にしたアジア学生調査第三波調査を完全に終了することができた。そして、第一波調査、第二波調査のデータと合わせた統合データセットを完成させ、各種分析が可能になる条件が整うことになった。また日豪、具体的にはシドニー大学と東京大学で学ぶ中国系移民第二世代それぞれ30名を対象にしたインタビュー調査が完了し、そのインタビュー記録をまとめることができた。 このように二種類のデータベースが完成したことにより、各種分析活動を開始することができるようになった。アジア学生調査については、西南民族大学(中国)、フィリピン大学、インドネシア大学、マラヤ大学、台湾アジア交流基金、台湾社会学会年次大会などで成果の一部を発表し、研究発表会に集まった現地の学生・研究者からフィードバックを得ることができた。また、2020年2月10日には、コロナ禍が広がりつつあったものの、この時期日本入国が可能だったこともあって、東京大学東洋文化研究所で14名の研究者を糾合して国際ワークショップを実施。主な知見を確認するとともに、今後の分析方針について意見交換をすることができた。 何より研究が進んだのは、中国台頭をめぐる認識力学について分析のめどが立ったことによる。2018年12月には『社会学評論』に「中国台頭の国際心理―アジア域内の温度差をめぐって―」と題する論文を発表し、またその後に執筆した英語論文(現在投稿中)によって今後の分析の指針を明示することができた。移民第二世代調査の結果も踏まえた、より詳細な分析のためのめどが立ったのは何よりの成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに分析の方針が決まり、「中国台頭の国際心理―アジア域内の温度差をめぐって―」と題する論文を日本社会学会の学会誌『社会学評論』で発表することができたから。また、国際ワークショップや海外での研究報告会も多く実施することができ、英語論文もすでに投稿して、こちらが予想しえない範囲で多くのフィードバックを得ることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
すでにアジア学生調査の三時点での統合データが完成したので、まずはこれを利用した「大きな見取り図」を作成する。具体的には、中央公論新社から依頼されている新書執筆にこのデータを利用し、『アジアの国民感情』という本を上梓することを目指す。次に、この本の一生をなす対中認識について、より深堀をした英語論文を作成し、国際ジャーナルに投稿、世界中の研究者からの反応を待つようにする。 台湾の研究者の紹介で、プリンストン大学の謝宇教授が本研究プロジェクトに似た作業をしていることを知ったので、同教授と進められる共同作業を特定し、できれば本なり雑誌での特集を組むための基礎作業を進めたい。また、第三波調査に協力してくれた韓国や台湾、フィリピンの研究者により大きな権限を与え、彼らのネットワークを動員した形で各国別の分析を進める作業を進めたい。こちらが「大きな見取り図」を示した上で、各国の事情を踏まえた分析ができる体制づくりが大きな課題となる。 最後に日豪における中国系移民第二世代を対象にしたインタビュー記録をもとにしたワークショップを実施し、インタビュー対象となった者からのフィードバックを得つつ、論文執筆のための基礎作業を進めたい。実際には多くの海外の研究者との協働作業となることから、同時に作業を進めつつも、スムーズに進むところから徐々に活動を広げ、最終的に多くの成果が得らえるようなマネジメントを行っていきたい。
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