2020 Fiscal Year Annual Research Report
Text communities constituted through the oral: a study of the religious practices related with Buddhist manuscripts in Mainland Southeast Asia
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19H04351
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 忠良 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (50334016)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 敬裕 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10586382)
池田 一人 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (40708202)
和田 理寛 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (70814325)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 写本文化 / 仏教 / 東南アジア大陸部 / 声と文字 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、写本朗誦によって形成される「テキスト共同体」の概念を使い、東南アジア大陸部の上座仏教徒諸民族の仏教写本をめぐる諸実践の実態の解明し、その特徴を明らかにすることを目的としている。特にローカルな言語で書かれた仏教写本の朗誦実践に着目することで、パーリ経典を共有する上座仏教という「聖なる共同体」が、仏教写本の朗誦によって創り出されるローカルな「テキスト共同体」によって、複数化されていく過程に注目する。 今年度は、ミャンマーとタイの2国に居住する上座仏教徒諸民族の写本の朗誦実践について、これまで収集した資料の分析を行った。対象となったのは、ビルマ、タイ(シャム)、モン、カレン、シャン(カムティ・シャンを含む)の上座仏教徒による、「布施太子本生経」(ヴェッサンタラ・ジャータカ)、「プラ・マーライ経/マーレー経」、それ以外の仏教説話や仏教教理書の朗誦の実践である。これらのテキストを朗誦するための特定の儀礼とそこで使われるテキストの分析から、朗誦される機会(儀礼)、テキスト、朗誦の担い手(出家あるいは在家)、朗誦の消滅や復活などの歴史的変遷についての情報・資料を分析した。 特にシャンにおける仏教説話・仏教教理書の「リーク・ロン」の朗誦様式についてのデータの分析、またシャンの女性在家者による「初転法輪経」の集団朗誦についてのデータの分析により、シャンの写本朗誦実践の全体像を把握することができた。また、中部において瞑想実践の一環として「プラ・マーライ経」の朗誦を行うという写本朗誦の現代的展開についての知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、これまでに収集してきた資料の分析を中心に研究を進め、シャンと中部タイの仏教写本の朗誦実践の実態を把握することができた。しかし、新型コロナ感染症の世界的な流行のため、当初予定していた東南アジア大陸部における写本文化、写本朗誦儀礼についての現地調査を行うことができなかった。そのため、新たな資料を追加し、分析対象の範囲を広げることができなかった。また、年度末に計画していた海外の研究者を招聘してのワークショップも行うことができなかった。この2点の理由より、研究の進捗状況が「やや遅れている」。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新型コロナ感染症の流行の状況次第ではあるが、可能であれば、本年度実施できなかった現地での資料収集を行い、より多くの東南アジア大陸部の上座仏教徒の写本文化・写本朗誦儀礼についての資料を得て、東南アジアの上座部仏教圏に共通する写本の朗誦実践の全体像を把握する。海外調査が困難な場合、国内で得られる資料とこれまでに収集してきた資料の分析によって、できうる範囲での全体像の解明に努める予定である。 また、2021年度が研究計画の最終年度となるので、年度末に本研究課題に関係する研究を行っている海外の研究者を招いて、研究成果を総括するワークショップを開催する予定である。これについても、新型コロナの状況によっては、オンラインによる開催も検討する。
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