2020 Fiscal Year Annual Research Report
オーバーツーリズムでの持続可能な地域メカニズムに関する研究
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19H04380
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
朝日 幸代 三重大学, 人文学部, 教授 (70298660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 一彦 中京大学, 国際学部, 教授 (00351081)
鈴木 孝弘 東洋大学, 経済学部, 教授 (30192131)
土生 英里 静岡大学, サステナビリティセンター, 教授 (70448273)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オーバーツーリズム / 観光統計 / 環境負荷 / 外部不経済 / 法整備 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、オーバーツーリズム(観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せる過密状態の意味)における観光客の増加による環境負荷の影響を明らかにし、観光地の環境負荷と経済影響のメカニズムと観光地の最適規模の観光客数を実証的検討することにある。そのために、本研究課題であるオーバーツーリズムの把握に必要な対象現象の最新事情に関する適切なデータ収集を行った。2019年データが追加されたため、それを含めて以下の論文、朝日幸代(2020)のデータのリバイスを行い、分析をすべてやり直した。 朝日幸代(2020)「第6章 訪日観光による混雑の影響に関する研究」『グローバル化と地域経済の計量モデリング』山田光男・増田淳矢編著、P.175‐206、中京大学経済研究所研究業書第27輯、中京大学経済研究所 次に、オーバーツーリズムの現象について、日本国内として九州エリア湯布院の関係機関へのヒアリングや情報収集を2019年と同様に継続して行った。この結果は、ヒアリング調査および収集したデータをまとめ、分析を行い、以下の論文にまとめている。 鈴 木 孝 弘、朝日幸代(2021)「別府・湯布院における持続可能な環境と観光に関する考察」『経済論集』46巻1号P39-53、東洋大学経済研究会、2021年8月1日 鈴 木 孝 弘、朝日幸代(2020)「湯布院のオーバーツーリズムに対する持続可能なまちづくりに関する考察」『経済論集』46巻1号、東洋大学経済研究会、2020年8月1日(2019年報告では刊行予定であった) すでに行った京都市調査をもとに、今後の研究方法をさらに検討している。今後の取り組みの準備が出来た。さらに、環境負荷の問題と民泊および交通問題についての法整備の状況の文献調査を行った。これについても、今後の研究の方向性を検討する上で必要な多くの情報を収集すること出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題であるオーバーツーリズムの把握に必要な対象現象の最新事情に関する適切なデータ収集と正確な現状把握のために観光統計の国、地域のデータを確認する必要がある。しかし、2020年2月以降、COVID-19 パンデミックの影響により、全世界で人流を停止させ、観光活動に影響を与えた。地域別ではアジア太平洋地域の国際観光客到着数が最も低く、日本を含め、観光活動そのものが停止する状況となった。このため、2020年以降の観光統計データはオーバーツーリズム状況とは逆の状態となり、2020年の統計データは異常値として取り扱うことになる。 本研究課題の当初計画と2020年度の取組みの関係を以下のようにまとめた。 A)UNWTOおよび海外文献調査をもとに、観光統計データと環境データの追加的収集を行う。それにより、すでに分析した論文のリバイスを行うことが出来た。B)民泊や混雑現象、騒音やごみ問題、規制の在り方について、ヒアリング調査が出来ないことから、文献調査を中心に行った。C) 観光客が訪れることにより観光地の公共財の無償使用の問題が発生することについても文献調査を中心に行った。D)混雑現象、水資源、エネルギー資源、廃棄物などを含めた地方行政について湯布院地域の調査をもとに継続した。 上記の取組みの中で、2本の論文にまとめた。鈴 木 孝 弘、朝日幸代(2020)は2019年の作業である。 鈴 木 孝 弘、朝日幸代(2021)「別府・湯布院における持続可能な環境と観光に関する考察」『経済論集』46巻1号P39-53、東洋大学経済研究会、2021年8月1日 以上のように2年目としての統計調査、文献調査、ヒアリング調査(湯布院)、論文執筆に取組むとともに、基礎的な状況把握をすることが出来たが、必要な調査がコロナの影響で出来なかったため「(3)やや遅れている。」とした主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も問題の把握に必要な最新のデータ収集と現状把握をするための文献調査や地域データの入手を昨年に継続して行う。さらに本研究の実証分析の方法について最終的に決定し、調査と関係機関の調査を行う。 具体的には情報収集を日本国内、海外調査を含めて行う。ただし、COVID-19 パンデミックの影響で、今まで行ってきた調査そのものを中止した期間もあるため、1部のデータ入手や情報を得られない可能性がある。それについては、補完的に他の統計データを組み合わせるなど調整して取り組む予定である。海外調査、アンケート調査も行う予定であるが、オーバーツーリズムの状態まで今後観光客が多くなるかは不明であるため、それについては再度、検討を要する可能性がある。それにあわせ、研究の基礎と研究のフレームワークを再検討し、確定させる。また、観光客などの流入人口以外での地域の最適規模に関する文献調査も行い、基礎的な情報を得る。それを踏まえて、観光客の流入人口との関係、人口密度の関係も検討する。研究メンバー相互の情報交換、研究会を行いながら、経済、法律、環境の分野でそれぞれの研究項目に取り入れられる内容を深めるように取り組む。 最終的に調査研究で把握された実態をもとに、検証すべき仮説や有効な検証方法を検討し、分析する。
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