2021 Fiscal Year Annual Research Report
スポーツイベントのレガシー効果に関する観光地理学的研究
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19H04382
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
和田 崇 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (20511091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 瑛季 宇都宮共和大学, シティライフ学部, 講師 (30845558)
呉羽 正昭 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50263918)
小島 大輔 大阪成蹊大学, 経営学部, 准教授 (80551770)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スポーツ / イベント / レガシー / ボランティア / アジア政策 / 競技力 / 選手育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,令和2年度に引き続き,資料調査,自治体や競技団体への聞取り,市民アンケートなどを通じて,4都市における国際スポーツイベントのレガシーを抽出,考察した。 広島市では,1994年広島アジア競技大会後に制度化された広島市スポーツイベントボランティアがボランティア意識の高まり,国際スポーツイベントの継続的な開催・誘致,プロスポーツチームの創設などを契機に創設され,参加する市民は生きがい確保や健康維持・増進,仲間づくり・親睦などの効果を得ていることなどを確認した。 福岡市では,同市のアジア政策における1995 年ユニバーシアード大会の意義を検討し,同市が再帰的に自己定義を図りつつ,計画におけるアジアでの位置付けを調整していることを確認した。また、スポーツとまちづくりの研究課題について,スポーツ資源の発掘・共有・アクセス向上が図られ,課題解決の資源として活用された際の地理的なまとまりが「地域」であり,これらの不断の活動によってまちづくりにおけるスポーツの資源化が促進されることが明らかになった。 帯広市では,聞取り調査をもとに,国・日本スケート連盟と帯広市・帯広スケート連盟が,2009年に開設された屋内スケート場の安定的な運営のため,国際大会の誘致,国家レベルでの練習拠点化,地元の子どもへの競技普及策を実行したことを明らかにした。これらによって,グローバル・ナショナルレベルでの競技力向上は実現した一方,屋内スケート場の利用をめぐる空間的・時間的制約が生まれ,底辺人口拡大による優秀選手の選抜・世界への輩出という十勝での伝統的な選手育成方式に支障をきたした。 長野市等については,長野冬季五輪が有するレガシー効果について,長野市,野沢温泉村と白馬村という競技開催地で施設利用の動向や選手育成のポイントから分析する可能性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は着手時に,スポーツイベントにかかわるさまざまなステイクホルダーへの聞取り調査等を通じて,4都市等における事例研究を継続・深化させることを計画したが,これについては新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で一部を実施することができなかったものの,文献・資料調査の充実やアンケート調査による代替等を通じて,おおむね達成することができたと考える。また,研究成果については,2件の学会発表と2件の雑誌論文を通じて,地理学およびスポーツ関連の学会・研究会および一般社会に発信することができた。 研究代表者および研究分担者による研究打ち合わせは,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により対面実施はできなかったが,電子メールとビデオ会議システムを活用して数回にわたり実施し,研究成果情報を交換・共有するとともに,科研最終年度に向けた研究成果(アウトプット)のイメージについても概ね合意している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は,令和3年度までの研究成果をもとに,レガシーの時間的変容とレガシーが生じる空間のスケールに着目しながら,4地域における事例研究を完結させる。 広島市では,広島アジア競技大会のレガシーとして「市民スポーツの活発化」を取り上げ,同大会を契機に始まった「広島市スポーツレクリエーションフェスティバル」の展開過程と実態を詳細に把握する。その上で,令和3年度までの研究成果を合わせて,非日常/日常およびグローバル/ローカルの観点から,広島アジア競技大会のレガシーについて総合的な考察を行う。 福岡市では,長期間かつ非スポーツ分野に及ぼした例として,1995年ユニバーシアード大会を契機として始まった市民活動が継続している例を取り上げ,1995年ユニバーシアード大会が果たした役割について総合的に考察する。 帯広市では,関係機関への聞取り調査を通じて令和3年度までに得た知見を再確認するとともに,スケート場利用をめぐる空間的・時間的せめぎあいの詳細を把握する。また,帯広市で開催される国際スケート大会のレガシーについて,空間スケールと時間的経過,各主体の意向に着目して,総合的な考察を行う。 長野市等では,長野市内に立地する長野冬季五輪で使用した諸施設のその後の動向と,同大会で競技開催地となった野沢温泉村と白馬村におけるスキー選手育成の実態を詳細に把握する。その上で,長野冬季五輪が有するレガシー効果について,多角的に検討する。 以上の都市別の分析・考察結果について,地理学関係者のみならずスポーツ振興団体や行政機関,一般市民も参加するシンポジウムを企画・開催し,研究報告および意見交換を行うことにより,学界内外への研究成果の発信に努める。
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