2019 Fiscal Year Annual Research Report
Rethinking the Migrant Sex Trade: Reducing the Harm from Globalisation
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19H04386
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
青山 薫 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (70536581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 夏野 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (00381898)
LEBAIL Helene 明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (30817622)
村尾 元 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (70273761)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネットワーク分析 / 当事者参加 / パイロット調査 / 性的少数者 / 国際共同研究 / ケア・ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
全体としては、9月に神戸大学でワークショップを行い、方法論および現在までの研究を共有した。同時に日本の性風俗産業について、セックスワーカー当事者・支援者団体およびチェーン店舗経営者からのレクチャーを受けた。これらの結果、数年前まで、そこで働く人の出身国籍によって区分けされ横のつながりがない、と一般に言われていた日本の性風俗産業内部の分断を、現在では経営者も働く人も越えて往来するようになっている傾向が、新たに観察された。なお、このワークショップは本研究の代表者がやはり代表者として進めている国際共同研究と合同で行い、それぞれの分担者・協力者の情報交換の機会とした。 各国・各テーマについては、次のとおりの研究を行い、実績を上げた。1)ネットワーク分析のテキストへの適用について、携帯翻訳機から取得した会話データを用いて検討した。今後、性取引等の当時者に対するインタビューデータへの応用を検討する。2)日本について、セックスワークとグローバル化に関する先行研究を中心に文献調査を行った。また、名古屋市繁華街における性的少数者であるセックスワーカーの実態について聞き取り調査、大阪における中国出身セックスワーカーのパイロット調査を開始し、今後の聞き取りとネットワーク分析データにつながる人間関係および知見を得た。定住化後の当事者ネットワークについては、次世代などにかかわるケア・ネットワークの表かも視野に入れる必要が明らかになった。3)フランス・パリと東京において、現地NPOと協力のうえアウトリーチを行う交渉を始めた。パリにおいては当事者団体の協力を得て次年度のワークショップを計画。準備を開始した。4)タイについては、先行研究レビューが完了し、英語での共有も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各関係国・地域、理論方法論、テーマについて先行研究レビューを行い、全体で共有する予定だったが、蓄積が多い分野であることから、共有するまでには至らなかった。また、ネットワーク分析について責任者である分担研究者を中心に進めているが、(予想されたこととはいえ)質的データを一定程度数量的に利用することが難しいため、これも共有にまではいたっていない。また、年度末に予定していた各自の国内外への出張がコロナ渦の影響で中止になり、その分の打ち合わせや現地調査が遅れることとなった。 ただし、上記のとおり、分担研究者・代表研究者それぞれはできる限りの研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
全体としては、先行研究レビュー・理論方法論の共有を終え、聞き取り対象を特定するためのアウトリーチに進み、聞き取りおよびネットワーク分析の具体的な手法を特定する。その際、アシスタントの関与を増やすことと、当事者・支援者団体の研究への参加を追求する。 各国・テーマについては、1)ネットワーク分析のテキストへの適用についての本年度の実績を、性取引等の当時者に対するインタビューデータへ応用する。2)次年度内にフランスにおける中国出身当事者団体とのワークショップおよび現地調査を敢行したい。3)日本においても、今年度の実績による当事者および経営者の協力を得て、中国出身者その他のいわゆる「外国人風俗嬢」の調査に進む。3)分担研究者を加え、性取引にかかわって移住した人びとの次世代教育とケア・ネットワークの調査に着手する。4)タイにおいても、次世代とケア・ネットワークをふくむ当事者調査に着手したい。 ただし、新型コロナの影響は引き続き大きいことが予想される。海外との行き来がいつ再開されるのか、再開されても関係者の安全を確保しつつ調査ができるのか、どのようにできるのかによって、本研究の今後の方向は大きく変わる。さらに、こういった具体的な問題と対処法以前に、研究の主題自体――性取引にかかわる国境を越えた人の移動とそれに伴う苦痛――が、新型コロナ自体と対策としての人の移動の制限によって大きく変化しているだろうことを考えなければならない。つまり、本研究はかなりの方向転換に備えることも視野に入れなければならず、客観状況に左右されながらこの方向性を見出すことが次年度の課題の一つになるだろう。
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Research Products
(19 results)